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連載 [第3回] :
  Red Hat Summit 2018レポート

Red Hat Summit、気合の入ったデモでコンテナ、マルチクラウド、機械学習まで見せる

2018年6月12日(火)
松下 康之
Red Hat Summit 2018、3日目のキーノートは「エンタープライズのためのイノベーション」に沿った広範囲にまたがるものとなった。

Red Hat Summit 2018のキーノート、3日目は製品担当のトップであるPaul Cormier氏が登壇し、初日に引き続いてデモを中心とした展開となった。

Paul Cormier氏とデモのMCを務めたBurr Sutter氏

Paul Cormier氏とデモのMCを務めたBurr Sutter氏

デモは、スマートフォンからデモ用Webサイトを表示、そこからスマートフォンのカメラで撮影した画像をサーバに送り、それをTensorFlowを使った機械学習で認識、Amazon S3互換のAPIを持つオブジェクトストレージに保存、そして認識された画像に点数を付けて会場にいる参加者をランキング付けするというものだ。画像は人物、馬、本などを正面のスクリーンに表示し、それを参加者が自身のスマートフォンで撮影させS3のバケットに保存、ユーザーに対してランダムで付与されたニックネームごとに点数を付け合計の点数を競うというストーリーだ。トラフィックはロードバランサーで分散され、ステージ上のラック(オンプレミスのサーバーという位置づけ)、テキサスのAzureのデータセンター、オハイオのAWSのデータセンターの3箇所に振り分けられるという構造だ。アプリケーションそのものはOpenShiftで稼働しているために、オンプレミスでもパブリッククラウドでも同じコンテナイメージが動いているという。また3箇所のサーバーはレプリケーションが有効になっており、常に3つのデータストアが同期されるという仕組みだ。

デモの構成を説明するSutter氏

デモの構成を説明するSutter氏

デモの後半、故意にAWSのサーバーをシャットダウンすると、AWSに振り分けられていたトラフィックが自動的にオンプレミスのサーバーかAzureに代替され、継続されるようになっていた。これは非常に重要なポイントと言える。アップロードされたデータも壇上のサーバー、AWS、Azureにレプリケーションされるというところまでを見せるものとなった。

オンプレミスとパブリッククラウドの良いところをうまくまとめた形のデモシステムで、Red Hatの提唱する「Open Hybrid Cloud」を実演するものとして非常に良くできていた。パブリッククラウドをアクセスとデータ分散のために活用する辺りは、モダンなWebアプリケーションのテンプレートとしても使えるのではないだろうか。

デモの締めくくりを行うSutter氏

デモの締めくくりを行うSutter氏

続いて、今回初めての登場となるCTOのChris Wright氏が登壇。ここからは「エンタープライズのためのイノベーションとはなにか?」を訴求するフェーズとなった。

登壇したCTOのChris Wright氏

登壇したCTOのChris Wright氏

オープンソースソフトウェアがイノベーションの起点となっているというPaul Cormier氏のコメントを引き継ぐ形で、エンタープライズにおけるユーザーエクスペリエンスの重要性を説き、それを実現するためには「デベロッパーが快適な環境を作ること」「運用部門が信頼できるプラットフォームを使うこと」を解説した。

その後HPE、DellEMC、LenovoというRed Hatのハードウェア系のパートナーが登壇し、それぞれの事例を例に挙げながら各社の強みを訴求する流れとなった。ここまではエンタープライズ向けのメッセージ、「Open Hybrid Cloudをオープンソースソフトウェアを使って実装すること」をデモとパートナーを使って訴えた形になった。HPEは、2018年から日本国内でも展開を始めたPointnextというコンサルティンググループを全面に持ってきて、HPEのハードウェアであるSynergyをOpenShiftのインフラストラクチャーと位置付けた。ここでもOpenShift、Ansible、Helm-chartなどが言及され、Red Hatのポートフォリオをサポートする形になった。DellEMC、Lenovoもそれぞれ自社の製品を訴求しつつも、OpenShiftやAnsibleなどの製品、そしてRed Hatとの協業を訴えるものであった。

英国陸軍の大佐によるプレゼンテーション

英国陸軍の大佐によるプレゼンテーション

次に英国陸軍の2名の大佐が、DevOpsを導入したことを語るフェーズとなった。軍隊という伝統的な組織が、ウォーターフォール型の開発スタイルからアジャイルな開発とDevOpsに移行したことを解説したものだ。Time to Matketなどの言葉も飛び出すなど、普通のビジネスマンのトークのように聞こえるが、壇上にいるのは迷彩仕様のコンバットスーツを着ている男性なのだ。異様と言えば異様だが、保守的な組織がDevOpsに移行したという事例であれば理解はできる。

Kohl'sのRick Houdek氏(左)とGoogleのCassie Kozyrkov氏(中)

Kohl'sのRick Houdek氏(左)とGoogleのCassie Kozyrkov氏(中)

最後にGoogleのCassie Kozyrkov氏が登壇し、GoogleのTensorFlowそしてCloud AutoMLを紹介。その中では日本の事例としてよく取り上げられる、キュウリをTensorFlowで仕分ける農家の話が紹介され、2016年の事例ながら機械学習の事例としては未だにGoogleの中で高く評価されていることが分かる。

参考:キュウリ農家とディープラーニングをつなぐ TensorFlow

TensorFlowによるキュウリの仕分け事例の紹介

TensorFlowによるキュウリの仕分け事例の紹介

ここまででエンタープライズ向けのキーノートは終了した。その後は、Red Hat Innovation Awardというユーザーを表彰する段になり、CEOのJim Whitehurst氏が登場。ここで今年の受賞者となったUPSを表彰した。

壇上に並んだUPSの担当者たち

壇上に並んだUPSの担当者たち

この日のキーノートは、Open Hybrid Cloudというコンセプトを強力に訴えるものであった。前半のデモ、中段のHPE、DellEMC、Lenovoとのパートナーシップ、後半はHilton、Kohl’sというエンタープライズユーザー、そして英国陸軍という組織でのDevOps推進を紹介した。そして最後にGoogleを登壇させて、TensorFlowとCloud AutoMLによる機械学習への誘導までを駆け抜けた印象だ。オープンソースによるイノベーションを、エンタープライズユーザーに訴求したいRed Hatの強いメッセージを感じるものであった。

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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