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連載 [第1回] :
  Red Hat Summit 2017レポート

Red Hat Summit 2017が開催。OpenShiftをコンテナープラットフォームとして強力にプッシュ

2017年5月25日(木)
松下 康之
Red Hat Summit 2017が開催。初日のジェネラルセッションではインフラからアプリ層にポイントをおいた内容となった。

Red Hatの「全力」が見られるイベント

2017年5月2日からの3日間にわたって、ボストンにてRed Hatが主催するカンファレンス、「Red Hat Summit 2017」が開催された。これはRed Hatの年次のカンファレンスで、去年はサンフランシスコ、今年はボストンで行われた。ユーザー事例から技術的な解説、さらにAWSなどの連携ソリューションの紹介まで、300以上のセッションが設けられているカンファレンスで、Red Hatにとっては最も力を注いでいるイベントと言っていいだろう。今年は約5300名が参加したという。

カンファレンス会場の巨大なRed Hatロゴ

カンファレンス会場の巨大なRed Hatロゴ

今年のテーマは「Build anything. Deploy everywhere. Do everything.」と「Impact of the Individual」。前者はエンタープライズが必要とするITインフラストラクチャーが、オンプレミスから複数のパブリッククラウドを使いこなすレベルに達していることに対して、Red Hatからの回答であり、後者は「イノベーションのきっかけは個人にある」ということを意味している。これは2日目のジェネラルセッションで、CEOであるJim Whitehurst氏がより詳細に語った内容だ。この記事では、初日に行われたRed Hatの技術部門の最高責任者であるPaul Cormier氏によるジェネラルセッションを中心に紹介する。

Red HatのPaul Cormier氏

Red HatのPaul Cormier氏

開催初日の朝8時半から始まったジェネラルセッション、一番最初に登壇したのはもちろんCEOであるJim Whitehurst氏だが、早々に舞台をRed Hatの技術部門の総責任者であるPaul Cormier氏に引き渡した。ここでCormier氏は「Build anything. Deploy everywhere. Do everything.」を具体的に解説することからセッションを始めた。

初日のメインはOpenShift

「オンプレミスか? パブリッククラウドか?という区分けにはあまり意味がなく、クラウドはもはや必須の要件であるが、先行するAWSだけに頼るのではなくベンダーロックインを防ぐためにGoogle Cloud ComputingもMicrosoft Azureも使いこなすべきだ。その時のワークロードは、DockerコンテナとオーケストレーションツールのKubernetesによるマイクロサービスで構成されているはず。そして、その2つのコンポーネントを最適に実行できるのがOpenShiftである」というのが、このセッションのキーメッセージだろう。初日のジェネラルセッションを振り返ってみれば、「PaaSからDockerとKubernetesのプラットフォームとして、2年前に仕切り直したOpenShiftがここまで顧客に受け入れられるようになった」ということを顧客事例とともに宣言したと総括できるだろう。

パブリッククラウド御三家が組み込まれたCormier氏のスライド

パブリッククラウド御三家が組み込まれたCormier氏のスライド

初日のプレゼンテーションにおける製品的な焦点は、ひたすらOpenShiftだった。Red Hatの提供するPaaSであったOpenShiftが、「コンテナプラットフォーム」としてDockerとKubernetesを稼働させるためのプラットフォームとしてアーキテクチャーを一新したのが2015年。バージョンで言えば、2.0から3.0に変わるタイミングだった。

参考記事:OpenShift 3.0で既存コードを捨てコンテナーに賭けるRed Hat

そして今回のカンファレンスで、OpenShiftの拡張としてクラウド版のIDEであるOpenShift.ioが発表された。つまりPaaSとしてはあまり成功しなかったOpenShiftを諦めることなく、DockerコンテナとKubernetesを中心にアーキテクチャーを一新して、クラウドネイティブなアプリケーションのためのコンテナ実行環境として訴求してきたことが実を結んだと言っていい。OpenShift.ioは、すでに存在するオープンソースのクラウドIDEであるEclipse CheとAWS上のOpenShift Online、ソースコードのリポジトリであるGitHubを上手く統合し、ユーザーインターフェースでまとめたものだ。単なるクラウドベースのIDEとして名前を変えただけではなく、CIのパイプライン機能やカンバン方式でタスクの管理ができる部分など、モダンなアプリケーション開発に向いた機能強化がなされている。

それではPaul Cormier氏のプレゼンテーションから順を追って紹介しよう。

競争力向上を目指す「攻めのIT」が中心に

まず最初に、エンタープライズのIT部門が最も興味を持っているエリアについての調査結果が紹介された。それによると、過去は「コスト削減」であったが、今や「クラウドストラテジー」が一番のトピックになったという。つまりITの効果は単に「コストを下げる」「処理時間を短縮する」という後ろ向きのものではなく、クラウドを使って「いかに競争力を上げるか」に移っているというのだ。

調査結果を紹介するCormier氏。1年でここまで変わるのか

調査結果を紹介するCormier氏。1年でここまで変わるのか

それは同時にAWS、Azure、GCPという3大パブリッククラウドサービスが、IT部門にとって積極的に活用するべき対象になったというRed Hatとしての見方を表すものと言っていい。これまでのプレゼンテーションでよく見られた、オンプレミスのプライベートクラウドであるOpenStackとエンタープライズ向けサーバーOSのRHELという組み合わせから、パブリッククラウド(AWS、Azure、GCP)、オンプレミスのクラウド(OpenStack)、さらにコンテナベースのワークロードを支えるOpenShiftを組み合わせて、クラウドネイティブなアプリケーションを実装できるラインアップに移行したということだろう。さらにCormier氏の使ったスライドを注意深くみると、アプリケーションに近いところは、OpenShift、その下を支えるOSとしてのRHEL、その下にひとつのベストプラクティス、つまり特定の使い方としてのOpenStackが置かれていることが分かる。

アプリに近い層にOpenShift、その下にRHEL、その下にコンポーネントとしてOpenStackが位置付けられている

アプリに近い層にOpenShift、その下にRHEL、その下にコンポーネントとしてOpenStackが位置付けられている

そのスライドの右にはパブリッククラウドであるAWS、Azure、GCPが置かれており、左をプライベート&オンプレミス、右をパブリッククラウドと位置付けて、オンプレミスのクラウドもパブリッククラウドもエンタープライズにとっては重要であることが強調されている。

パブリッククラウドもエンタープライズにとって重要な要素である

パブリッククラウドもエンタープライズにとって重要な要素である

ただしこのレベルではDev、Test、Productionというステージごとに上手く行ったかどうかが分かる程度でしかなく、本格的なパイプラインによるCIというものではなさそうであった。またアジャイルな開発で使われる「かんばん」も機能として実装されているようだったが、詳しい説明は聞くことができなかった。

最後にまた事例としてヘルスケア系のサービスを提供するOptumが登壇。ここでもOpenShiftをプラットフォームとして利用しているという。

Optumのシニアディレクターが登壇

Optumのシニアディレクターが登壇

最後に登壇したRed HatのLead Product ManagerのKeith Babo氏は、2016年に買収したAPI管理ツールの3Scaleのソリューションをデモで紹介した。ここでもアプリケーションの高速化、最適化、モニタリングなどが話題の中心となり、RHELやOpenStackといったインフラストラクチャーのレイヤーから、よりアプリケーションに近いところに注力していることが分かるデモとなった。

全体を通して、OpenShiftとAnsibleが強力にプッシュされた内容となった初日のジェネラルセッションであった。OpenShiftに関してはブレークアウトセッションでも多数の事例が紹介されており、Red Hatが「これからのアプリケーション実装にはコンテナーが必須」と考え、そのために過去のPaaSの資産を捨ててOpenShiftを方向転換したことの成果が、2年を経て出てきたことが感じられた。このモメンタムを日本でも続けられるのか、、注目したい。

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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