動画配信規模とコストの関係はどう?
小規模または簡易動画配信について
クライアント企業が自社で制作済みのプロモーションビデオを動画配信する場合、または、中小企業などが投資家向け情報提供(IR)ビデオ(中間決算報告会など)をライブ配信する場合などは、小規模な動画配信になります。
自社プロモーションビデオは、権利処理もクライアント企業によって処理済みの場合が多いので、あとは動画配信するだけです。課金・認証管理システムなども不要です。企業によって「あまりアクセス数は多くないだろう」と判断した場合は、廉価ホスティングサーバーの活用が有効です。基本的に、企業プロモーションビデオは露出することが目的なので、画質の問題などがクリアできれば、YouTubeの活用も検討に入ります。
小規模または簡易動画配信の場合のコストは、廉価ホスティングサーバーの費用だけですので、月額数千円で動画配信可能です。また、販売用DVDのサンプル映像を動画配信する場合は、DRMが必要かもしれません。
一方、IRビデオをライブ配信する場合は、各ホスティング業者が低額のライブ配信パッケージを扱っていますので、これを利用すると良いでしょう。
注意点として、新商品の発表をホームページ上よりも先に、中間決算報告会などで説明する場合などは、新商品の情報欲しさに思わぬライブ配信のアクセス集中が発生する場合があります。こうなると、ストリーミングサーバーのビジー状態が続いてしまうので注意が必要です。
社内イントラネットでの動画配信は、Webサーバーを利用した簡易動画配信が多いです。この場合、企業がストリーミングサーバーOSを用意すると費用が大きくなりますので、Webサーバーで代用することも考慮に入れています。
中規模動画配信について
中規模動画配信ですが、ここでは動画配信サービスおよび連携するサービスについて考慮します。
まず、同時アクセス数が増えてくるのでネットワークの強化が必要になります。いろいろなホスティング業者がありますので、動画配信の状況に応じた業者を選択しましょう。
また、ホスティング業者によりDRMの料金体系が変わってくるので、DRMのコストも重要です。例えば、動画ファイルごとのDRMを個別に課金するタイプと、まとめて数百、数千個までいくらと課金するタイプといろいろありますので注意が必要です。
次に、決済システムやユーザー認証管理システムなどについてですが、この部分のコスト(連携するサービス)が動画配信サービスよりも割高になることもあります。第3回(http://www.thinkit.co.jp/article/153/3/)で紹介した、決済システムと連動したDRM管理を提供するASPサービス業者を利用するか、自社独自のシステムを開発するなどの選択肢がありますので検討してください。
これらの動画配信サービスおよび連携するサービスを開発/導入しても、同時アクセスを1000人と見込んでいたが10人程度だったなんていう状況にならないように、動画配信の費用対効果を検討する必要があります。費用対効果を検討しながら、規模の拡大に応じてアップグレードを検討します。
筆者の体験談ですが、海外番組の権利を持っているクライアントから、ある番組を使ってコンテンツビジネスを展開したいというご要望がありました。これは、VOD(Video On Demand)というものになります。
料金を算出すると、「動画配信関係の料金が回線費とストレージ費でおおよそ月額数十万円」「決済システムと連動したDRM管理を提供するASPサービス利用で費用がこれもおおよそ月額数十万円」「初期投資としてのWebコンテンツ制作で、動画配信のストレージとASPサービスを調整してサイト構築する費用が数百万円」となりました。
この投資をして番組を使ったコンテンツビジネスで利益が出るかどうかは、クライアントの判断となりますが、これでペイパービュー(pay-per-view)視聴者が次々と増えれば、規模の拡大に応じてアップグレードしなければなりません。
また、海外番組がキラーコンテンツでなかったら、視聴者が増えませんから初期投資分をどうやって回収するのかという問題になります。最終的に、ここで重要なのはコンテンツビジネスのビジネスモデルをどのような戦略を持って展開するかが重要になります。ここがコンテンツビジネスの難しいところです。
ちなみに、直接利益とあまり関係ない社内イントラネットの場合でも、各支社間などで動画配信を共有してeラーニングする場合などは、ネットワークの負荷を考慮してストリーミングサーバーOSの導入/ネットワーク強化/管理システムの導入が必要になります。