立体アニメーションのしくみ

2008年11月21日(金)
村田 朋泰

人形制作について

 筆者がいつも制作している人形のサイズはおおよそ25cm前後です。だいたいの人形には金属製の関節が入っています。簡易的な人形制作の場合はヒューズ線を関節として使用しています。

 顔の成形についてですが、顔の制作は軽粘土、もしくはラドール(石粉粘土)で成形します(路シリーズではフォームラバーというスポンジ状の素材でできたものですが、これは個人で生成するのはとても難しいです)。コア(芯)になる素材は硬質な木材がいいのですが、簡易的な人形であればバルサ材、もしくは球型の発砲材を使用することもあります。

 いきなり顔のパーツ成形を始めるよりも、まず、コアになる素材に粘土を薄く覆います。粘土が乾ききったら、その上に粘土成形(顔の具体的な形)を始めると作りやすいです。へら等さまざまな道具を使って自分の納得のいく顔にしていってください。まぶたは5段階くらいに分け、張り替えて撮影しています(図2-1)。

 体の成形についてですが、やせ形の人形だったら、コアも小さめに制作し、大きな人形だったら、大きめのコアを制作します。足の長い人形の場合は胸と腰の距離を短くし、足を長めにしたり、頭が大きい場合は足のサイズを大きくし、安定させる必要があります。ナイトメアのように足のサイズを極端に小さくしていたり、鉛筆みたいな細い足等は、床面に穴を開けて下から人形の足に直接ボルトで締める細工をしたり、人形の腰のあたりに支えるための補助器具をつけ、編集の時にパソコン上で補助器具を消していくこともあります。

 また、体をふっくらさせたり、ズボンに張りをもたせる場合は人形に服を着させてからその中に脱脂綿を詰めて、膨らみをもたせたりします。

手の成形について

 手のしぐさと目の動き中心として人形の動かしをしていましたので、比較的手は大きめに作っています。

 ラテックスを使用した手についてですが、筆者の作品の多くの人形の手は主にラテックス(生ゴム)を使って成形しています。鉛板で手の甲を作り、ヒューズ線の5~20Aを使って指を作ります。この時点でだいたいどのくらいの大きさにするのかを決めます。

 接着はハンダ付けです。骨組みができましたらラテックスに漬け、乾かします。乾かす時、酢酸水を使うとラテックス表面に膜ができ、乾かす時に非常に便利です。乾いたらまた漬けるということを繰り返すと厚みがでてきます(図2-2)。

 そのほかの手についてですが、ストーリー上、特に手のしぐさにこだわらないという人は、これも粘土で成形してしまって構いません。必要に応じて何パターンか手を制作し、その都度取り換えられるようにしておく方法もあります。その場合、手の取り換えは腕と手が取り換え可能なように工夫する必要があります。モデリングクレイ粘土での人形制作もあります。

 造形するための適度な柔らかさをもち、時間が経過しても固くならない油粘土です。筆者の場合は「睡蓮の人」の人形に使用しています(図2-2)。有名なのはVan Aken(http://www.vanaken.com/index.html)のモデリングクレイです。鮮やかな色合いで混色も可能です。溶解温度は65.5℃で、シリコンの鋳型に流し込んで成型することも可能です。

立体アニメーション「朱の路」で第9回広島国際アニメーションフェティバル優秀賞を受賞するほか、Mr.Childrenの「HERO」のPVなども手がける。近年では絵画、空間芸術にも表現を展開し、2008年4月の平塚市美術館での個展「夢がしゃがんでいる」では、巨大な空間をひとつの作品世界として作り上げた。http://www.tomoyasu.net/

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