de:code 2019開催。自動運転車からMicrosoft 365、Azure、HoloLens 2までの基調講演まとめ

2019年7月11日(木)
高橋 正和

2019年5月29~30日、日本マイクロソフトの技術者向けカンファレンス「de:code 2019」が開催された。

初日の基調講演は、日本マイクロソフトの平野拓也氏(代表取締役社長)、米Microsoftのジャレッド・スパタロウ氏(コーポレートバイスプレジデント Microsoft 365)、ジュリア・ホワイト氏(コーポーレートバイスプレジデント Azure)、アレックス・キップマン氏(テクニカルフェロー)の4パートに分けられ、5月6~8日に米国で開催された「Microsoft Build 2019」で発表された内容を交えながら、約2時間半ほど行なわれた。

平野氏はMicrosoft全体および日本マイクロソフトの取り組みについて、スパタロウ氏はMicrosoft 365やWindows 10について、ホワイト氏は開発ツールやAzureについて、キップマン氏はAR/MRについて、それぞれ語った。本稿では、各講演内容の詳細を紹介する。

ソニーにトヨタ、AIりんなもある日本マイクロソフト

パートナーを巻き込んでダイナミックなビジネス

平野氏はまず、興福寺(奈良)の阿修羅像の表情を、奈良大学とマイクロソフトとでCognitive Servicesを活用して分析した事例を紹介。また、火災にあったノートルダム大聖堂の修復に貢献するため、GitHubで公開できる3Dデータを作製するMicrosoftとIconemによる「Open Notre Dame」プロジェクトも紹介し、「AIが産業から家庭まで使われるようになり、ITエンジニアには大きな機会がある」と語りかけた。

日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏

また、平野氏は米Microsoft CEOのサティア・ナデラ氏の言葉を引いて、4つのクラウドプラットフォームでデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する戦略を語った。ベースとなる「Microsoft Azure」と、その上の「Microsoft Dynamic 365 & Power Platform」「Microsoft 365」、そして新たに注力する「Microsoft Gaming」だ。

4つのクラウドプラットフォームでDXを推進

「そのためにも、オープンなプラットフォームで、パートナーを巻き込んでダイナミックなビジネスを展開する」と平野氏。そうしたパートナーの例として、Red Hat社のイベントにナデラ氏が登場してOpenShift+Azureを共同で推進すると語ったことや、MicrosoftがAdobeやSAPなどと推進する「Open Data Initiative」、Dell社のイベントにナデラ氏が登場してAzure VMware Solutionsを発表したことなどを紹介した。

さらに、5月16日にゲーム分野でソニーとの戦略的提携を発表したことも改めて紹介。ゲームやコンテンツのストリーミングソリューション、MicrosoftのAI技術のソニーのコンシューマ製品への採用、新しいインテリジェントセンサーの開発が3つの柱だという。

ゲーム分野でソニーと戦略的提携

トヨタがHoloLens 2を全国の販売店に展開

平野氏は日本のDXとして、トヨタ自動車の事例を紹介した。2019年内にHoloLens 2を導入して、全国の販売店に展開し、自動車の修理、保守点検作業に役立てるという。そのほか、HoloLensのためのDynamics 365 Guidesの採用を検討。さらに、AzureのAIサービスの検証もしているという。

トヨタがHoloLens 2やDynamics 365 GUides、Azure AIを検討

また、日本独自の施策として、小売業向けの「Smart Storeリファレンスアーキテクチャー」を1月に発表したことも紹介された。在庫管理やPOSなどのサンプル実装をGitHubで公開するという。「付加価値の低い作業にエネルギーを使うことなく、差別化など付加価値の高いところに集中できる。各社に好評を得ている」と平野氏は語った。

Smart Storeリファレンスアーキテクチャー

ここで、完全自動運転車を開発するアセントロボティクス株式会社 社長の石﨑雅之氏が登場。2016年に創立し、従業員91名のうち80%が技術者だという。石崎氏は「アセントロボティクスは、脳に近いしくみで認知するAIを開発している」と語った。そのためのアプローチは3つ。1つめは、仮想空間でシミュレーション可能な状況を自在に作り、AIをトレーニングすること。2つめは機械学習。3つめは運転操作がどのようにされたかをトレースできる説明可能性だ。「それをサポートするためのインフラとして、Azureを検討している」と石崎氏。平野氏がAzueを選んだ理由を尋ねると、石崎氏は「AIサービスのラインナップが揃っている」ことを挙げた。なお、その後6月に正式に日本マイクロソフトとの協業を発表している。

アセントロボティクス株式会社 社長 石﨑雅之氏

日本マイクロソフトとアセントロボティクス

AIで平野社長がダンス

平野氏は、AIについても触れた。AIには、どこまで使って良いのかを含めて、信頼が必要になっているという。ここで、元女子高生AIりんながムービーで登場。「高校を卒業して歌手デビューした」ということで、歌っているミュージックビデオが上映された。

AIりんなのミュージックビデオ

さらに、曲に合わせて平野氏がダンスする様子までムービーで上映された。曲が終わったあとで平野氏が自らダンスの仕掛を解説。曲に合わせてプロのダンサーが踊った動きと、平野氏が15分それっぽく踊った映像を組み合わせて、AIが合成した動画なのたという。

平野社長がダンス

プロのダンサーの動きと平野社長の映像からAIが合成

Microsoft 365のコラボレーションで生産性のパラダイムシフト

Microsoft 365は第3の波

続いて登場した米Microsoftのジャレッド・スパタロウ氏は、生産性とMicrosoft 365について語った。

米Microsoft ジャレッド・スパタロウ氏(コーポレートバイスプレジデント Microsoft 365)

スパタロウ氏は、世の中もビジネスも指数関数的な変化が起きており、それに伴って働き方も進化して生産性を上げる必要があると語った。そして、Microsoftは複数のイノベーションを統合して生産性のために何ができるかを考える時期にきていると述べた。これまでのMicrosoftの歴史を振り返ると、まず70年代後半から80年代初頭は職人のようにアプリの使い方を学ぶ時代だった。その後、デバイスが中心になり、世界中の人がスマートフォンを毎日持ち歩いている時代になった。そのうえでスパタロウ氏が新しく考える時期が「第三の波」だ。中心に人があり、その周囲に人を助けるためのアプリやデバイスが存在する。「パラダイムシフトにより、人に焦点を当てる、世界一の生産性のためのツールがMicrosoft 365だ」と説明した。

Microsoft 365のパラダイムシフト

OutlookやEdge、Wordのコラボレーション機能

その実例を、米Microsoftのメアリー・シェパード氏がデモした。

米Microsoftのメアリー・シェパード氏

まずスマートフォンからOutlookを見ると、ミーティング日時を尋ねるメールが入っている。それに返信を書き始めてから、カレンダーを開いて予定をチェックし、即座に候補日を返答。

スマートフォンのOutlookから予定を返信

続いて、電子メールダイジェスト。1週間の仕事のパターンや約束の確認、レコメンデーションなどが表示される。

電子メールダイジェスト

さらに、スマートフォンのTeamsについては、ロックスクリーンからメッセージを確認できるところや、OneDriveでチームミーティングのファイルを共有できるところがデモされたほか、Visual StudioからプッシュなどGitHub関連の操作ができるところも見せた。

OneDriveでファイルを共有

スマートフォンの次はWindows 10だ。画面をPCに切り替えて、まず、Windows Updateを7日間一時停止する機能が示された。続いて、通知のポップアップから通知の設定を変更するところもデモされた。

Windows Updateを一時停止

Edgeの新機能については、Collectionsの機能をデモ。Webドキュメントから画像をドラッグ&ドロップして集めたり、集めたものをWordやExcelにエクスポートしたりできる。

EdgeのCollections

続いて、WordのIdeasの機能が紹介された。AIが文書を分析するもので、使われている略語などの情報を表示したり、「“chairman”を“chairperson”に」といった改善を提案したりしてくれる。さらに、文書中で同僚にコメントを求め、それがOutlookでの連絡になる機能なども示された。

WordのIdeas。右に文書の情報を表示

React Native for WindowsやWSL 2などBuildでの発表を紹介

そのほかにも、スパタロウ氏はMicrosoft Build 2019で発表されたWindowsのアップデートを紹介した。まずはReact Native for Windowsだ。React NativeはJavaScriptでiOSやAndroidのネイティブアプリを作れるフレームワーク。このReact NativeでWindowsアプリも作れることになる。スパタロウ氏は、Visual Studioでフォームにカレンダーコントロールを貼った簡単なアプリを紹介し、XAMLで指定されたコントロールと、そこに指定されたアクションのコードを見せた。

React Native for Windows

React Native for Windowsのコード

続いて、Microsoft Windows Terminalだ。開発者向けのターミナルで、PowerShell、CMD.EXE、Ubuntuの3つのシェル環境ををタブで切り替えて使える。Unicodeをフルサポートして合字や絵文字にも対応する。オープンソースで開発され、GitHubで公開される。

Microsoft Windows Terminal

Microsoft Windows Terminalの画面

次は、Microsoft Windows Subsystem for Linux (WSL) 2。2017年に正式版となった従来のWSL(WSL 1)はWindowsカーネルがLinuxカーネルをエミュレートしたものだったが、WSL 2では軽量ハイパーバイザーでフルのLinux 4.19カーネルが動く。壇上では、WSL 2のLinuxでVS Codeが動いているところなどが示された。また、JavaScriptのパッケージをインストールをインストールするnpm installコマンドをWSL 2とWSL 1で実行し、4.4秒と31秒という大差がつくというI/Oパフォーマンスを見せた。

Microsoft Windows Subsystem for Linux (WSL) 2

1つのWindowsの中でWindowsのEdgeとWSL 2のVS Codeが動作

WSL 1とWSL 2でnpm installコママンドを実行

次は、OfficeのFluid Framework。Officeをコンポーネントに分割することで、複数人がWeb上で共同作業をできるようにするという。その例として、東京とシアトルで共同作業するところや、9つのウィンドウを開き1つの文書を8つの言語にリアルタイム翻訳するところが見せられた。また、WordとTeamsのメッセージで表を共有し、それぞれで編集できるところなども示された。

Fluid Framework

Fluid Frameworkを使って共同作業

1つの文書を8つの言語にリアルタイム翻訳

Microsoft Edgeについては、Chromiumエンジンをベースにしたバージョンのほか、シェパード氏も紹介したCollectionsの機能や新規タブ画面のカスタマイズ、Unrestricted/Balance/Strictの3段階のプライバシー設定などを見せた。

Edgeの新規タブ画面のカスタマイズ

3段階のプライバシー設定

プライバシー設定によってブロックした数が表示される

Teamsについては、ファーストライン(現場)ワーカー向けの機能を紹介。カメラからアップロードするスマートカメラ機能や位置情報の共有、仕事のシフトの管理などがあるという。また、ビデオ通話についても、字幕機能や最大9人での会議、ホワイトボードのオーバレイ表示などが紹介された。

Teamの新機能

スマートカメラ

位置情報の共有

仕事のシフト管理

字幕機能

さらにTeamの事例として、三井物産の事例をビデオで紹介。世界中に散らばった人材がTeamでコミュニケートできるという内容だ。

三井物産の事例

AzureのGitHubからデータベース、IoTまでの新機能

Visual StudioやGitHubなど開発関連の新機能

スパタロウ氏と入れ替わって登場したのは、米Microsoftのジュリア・ホワイト氏だ。開発ツールやAzureのサービスについて、Microsoft Build 2019で発表された新機能を中心に語った。

米Microsoft ジュリア・ホワイト氏(コーポーレートバイスプレジデント Azure)

最初のカテゴリーは開発者向けツールだ。ホワイト氏はVisual StudioやVisual Studio for Mac、Visual Studio Codeを挙げ、「StackOverflowの調査では、よく使われている開発ツールの1位がVisual Studio Code、2位がVisual Studio」と語った。Visual Studioシリーズで新たに発表されたのが、ブラウザベースの開発ツール「Visual Studio Online」だ。ブラウザでVisual Studio Onlineのサーバーにアクセスするだけで、どこからでもVisual Studioのような機能を使えるという。

Visual Studio Online

続いて、ホワイト氏は2018年のGitHub買収について言及。3600万以上の開発者が利用しており、CI/CDなどのDevOpsと組み合わせて使われることも多い。ホワイト氏は、GitHubとAzure DevOps(旧名Visual Studio Team Services)の組み合わせとして、Azure PipelinesでCI/CDを実行する例を紹介した。そのAzure DevOpsの新機能として、ホワイト氏はYAML定義のCI/CDを使用した統合パイプラインや、Kubernetesとのパイプライン統合、マルチクラウド+ハイブリッドクラウドのサポートを紹介した。

Azure DevOpsの新機能

また、GItHubについて、Python開発コミュニティやShell社が利用していることを紹介。ShellはAzure DevOpsを使っている最大規模の会社でもあるという。そして、企業向けのGitHub+Azureの新機能として、GitHubとAzure Active Directoryの同期サポートやGitHubアカウントによるAzureへのサインイン、Visual Studio+GItHub Enterprise統合サブスクリプションを紹介した。

GitHubとAzure Active Directoryの同期サポート

GitHubアカウントによるAzureへのサインイン

Visual Studio+GItHub Enterprise統合サブスクリプション

Azure DevOpsをデモ

ここで、日本マイクロソフトの井上章氏が登場。入力された文章から感情分析するアプリを、Azure DevOpsを使ってVisual StudioからGitHubにコードをプッシュし、Azure Kubernetes Service(AKS)にデプロイする例をデモした。

日本マイクロソフト 井上章氏

分析するアプリ

CI/CDの流れ

井上氏はまず、Azure DevOpsのダッシュボードで自分にアサインされたタスクを確認。次にVisual Studioへ移り、IntelliSenseのようにしてAIがコードを推奨するIntelliCodeや、コーディングルールに基づく警告などをデモした。そして、プッシュなどGitHub関連の操作もVisual Studioからできるところを見せた。

Azure DevOpsで自分のタスクを確認

IntelliCode

コーディングルールに基づく警告

GItHub関連の操作

続いて、GitHubやAzure Pipeline、Azure Boardを見せ、プルリクエストをトリガーにしてAzure Pipelineを実行し、テストが成功すればmasterにマージしてAzure Boardに通知するところも見せた。

プルリクエストをトリガーにAzure Pipelineを実行してmasterにマージ

さらに、Azure Pipelineのマルチクラウド対応や、Pipeline構成の作成をサポートする機能、Azure DevOpsからKubernetesの状況を確認する機能などもデモした。

Azure Pipelineから複数のクラウドにデプロイ

Azure Pipeline構成を作る

Azureのクラウドネイティブアプリ向け新機能

2つめのカテゴリーは、クラウドネイティブアプリだ。ホワイト氏はまず、Azureのサーバレスコンピューティングのプラットフォームとして、App ServiceとAzure Functions、AKSの3つを挙げた。そのうえで、App Service on Linuxの新機能として、無料サービスプランが利用可能になったこと、仮想ネットワークをサポートしたことを紹介。また、Azure Functionsの新機能として、Azure API Managementとの統合機能や、Premiumプランでコールドスタートなしになったこと、PowerShellサポートを紹介した。

App Service on LinuxとFunctionsの新機能

AKSで新しく一般提供される機能としては、Virtual Kubeletをベースにした仮想ノードの機能が紹介された。Virtual Kubeletは、MicrosoftがCNCFに寄贈したものだ。

AKSの新機能

また、新しいオープンソースプロジェクトとしてKEDAが紹介された。イベント駆動でコンテナを自動スケールさせるもので、Red Hatと共同で開発したという。

KEDA

続いて、エッジデバイス。Azureのエンジデバイスには、Azure StackやAzure Data Box、Azure Sphere、Azure Kinect、HoloLensなどがあり、何百社ものパートナーがAzure Edge認定デバイスを提供中だ。その例として、スターバックスがコーヒーマシンにガーディアンモジュールを付けてAzureに接続していることが紹介された。

スターバックスの事例

IoT Centralでデバイスを簡単に処理するデモ

ここで、Seeedの松岡貴志氏と日本マイクロソフトの太田寛氏が、Azureとエッジデバイスについてデモした。松岡氏は、IoT Centralを使ったセンサーなどのデバイスの処理をデモ。まず温湿度センサーからのデータを処理するコードを用意し、デバイステンプレートに追加してグラフを表示してみせた。また、アラートを設定し、画面上のボタンを押すとデバイスのLEDが点灯するところを見せた。もう1つ、IoTプラグアンドプレイの例として、Seed ReButtonを接続してみせた。デバイスはJSONで定義されており、自動的にデバイスが登録される。

Seeed 松岡貴志氏

デバイステンプレートに追加

アラートからデバイスのLEDを点灯

IoTプラグアンドプレイでSeed Rebuttonを接続

太田氏はAzure Kinectの新機能を紹介。狭い画角で遠くまで認識する機能や広角で多人数を認識する機能をはじめ、人間のスケルトンを機械学習で認識するところ、解像度が4倍になったこと、複数デバイスを接続して360度認識するところ、進化した深度センサーで人間の心拍を検出するところ、音声をAzure Cognitive Serviceで文字起こしするところなどがデモされた。

日本マイクロソフト 太田寛氏

Azure Kinectで多人数を認識

Azure Kinectで心拍を検出

AIの新機能が多数

3つめのカテゴリーはAIだ。ホワイト氏は、学習済みやカスタムAIを利用できるAzure Cognitive ServicesやAzure Machine Learningを挙げ、MicrosoftのAIへの投資と成果をアピールした。そのAzure Cognitive Servicesnoの新機能として、パーソナライズのPersonalizer、手書き認識のInk Recoginzer、文書からフォームを認識するForm Recognizer、対話を認識するConversation Transcriptionを紹介。Form Recognizerでは、カメラなどからの帳票画像から構造を分析してフィールドを認識できるという。また、Azure Cognitive Searchが一般提供開始となったことも紹介された。

Azure Cognitive Servicesnoの新機能

Form Recognizer

Azure Cognitive Searchが一般提供開始

Azure Machinne Learningでは、自動機械学習(Automated ML)のUIや、ワークフローのUIツール、MLops、FPGAによるハードウェア高速化が紹介された。

Azure Machinne Learningの変更点

そのほか、AzureのクラウドとエッジのハイブリッドでのAIの必要性にも触れ、その例として手術室のビデオを分析して医師が最適なタイミングで入れるようにするオリンパスの事例がビデオで紹介された。

オリンパスによる手術室でのAI利用の事例

Azure SQL Databaseサーバーレスなどデータベースサービスの新発表

4つめのカテゴリーは、データとアナリティクスだ。ホワイト氏はAzureのデータベースサービスについて、さまざまな種類がある中から好きなものを選べる柔軟性や、ダイナミックにストレージもメモリもスケールできることなどを特徴として語った。その中でまず新しく発表されたのは、Azure SQL Database Hyperscaleの一般提供開始だ。SQL Server互換で、無制限のスケールアウトに対応する。

Azure SQL Database Hyperscale

続いて、Azure Daabase for PostgreSQL Hyperscaleの新発表。最新バージョンのPostgreSQLとの互換性を持ち、無制限のスケールアウトに対応する。

Azure Database for PostgreSQL Hyperscale

Azure SQL Databaseサーバーレスも新発表された。使ってないときには休止にでき、利用した分にのみ課金される。

Azure SQL Databaseサーバーレス

エッジについては、Azure SQL Database Edgeが新発表された。ARM CPUに最適化され、WIndowsとLinuxに対応するほか、時系列データにも対応する。「これによってハイブリッドが拡張される」とホワイト氏は語った。

Azure SQL Database Edge

グローバル分散データベースのAzure Cosmos DBの新機能としては、SparkのビルトインやJupyter Notebookのビルトインなどが発表された。また、コカコーラのCosmos DB利用事例をビデオで紹介。グローバルに分散した膨大なデータを瞬時に分析できるという。

Azure Cosmos DBの新機能

コカコーラのAzure Cosmos DB利用事例

そのほか、アナリティクスの分野では、クラウドネイティブなデータウェアハウスであるAzure SQL Data WarehouseについてTPC-Hベンチマークの結果を交えて性能と費用対効果を主張。また、セルフサービスBIのPowerBIについても、ユニリーバの事例を交えて紹介した。

Azure SQL Data WarehouseのTPC-Hベンチマーク結果

アレックス・キップマン、HoloLens 2を語る

基調講演の最後のパートは、アレックス・キップマン氏によるHoloLens 2の解説とデモだ。

米Microsoft アレックス・キップマン氏(テクニカルフェロー)

キップマン氏は、HoloLens 2について2倍の視野角の没入感、3倍の快適性、オープン開発による価値創造時間の3点を挙げ、「求められていたものだ」と語った。

HoloLens 2の没入感、快適性、価値創造時間

まず没入感。解像度は視野角1度あたり23ピクセルから47ピクセルと詳細になった。その一方で視野角は2倍になっている。そのために、ディスプレイやAIを新規開発したという。また第4世代の深度センサーによる空間マッピングが可能になり、仮想的なオブジェクトをつかむ動作もできるようになった。アイトラッキングの機能も組み込まれている。音声認識では、複数のマイクを使って、90dBまで周囲のノイズをキャンセルできるという。

解像度が詳細に

新規開発のディスプレイ

深度センサー

アイトラッキング

続いて快適性だ。さまざまな民族など、いくつもの頭のサイズや形状を計測し、どのような人でも快適に使用できる作りになっていることを示した。キップマン氏が実物のHoloLens 2を装着してみせ「帽子のようにかぶれる」と語った。またHoloLens 2はファンレスで、ベイパーチャンバーによるパッシブな冷却を採用しているという。

いくつもの頭のサイズや形状を計測

スクリーンには、キップマン氏と“仮想アレックス”が並ぶ姿が映し出された。キップマン氏が仮想アレックスをつまんでサイズを変えたり、仮想アレックスどうしで対決させたりできる。さらに、キップマン氏の音声を文字起こししたものを仮想アレックスが読み上げる形で、バーチャルな基調講演もデモしてみせた。

キップマン氏がHoloLens 2を装着

仮想アレックスどうしが対決

3点目の価値創造時間については、「新しいことを、何ヶ月もかけるのでなく、数時間で実現する」として、オープンな開発や、Dynamics 365 Remote Assist、Dynamics 365 Layoutなどを挙げた。

Dynamics 365 Remote AssistやDynamics 365 Layout

そのほか、HoloLensを製造などの現場向けにカスタマイズするキットも用意されているという。「HoloLens 2といっしょにTrimble社からXR10が発表される」とキップマン氏は語り、ヘルメット型のHoloLensの写真を紹介した。

ヘルメット型のHoloLens、Trimble XR10

HoloLensとAzureの組み合わせの可能性として、キップマン氏はまず部屋から建物へ、都市へと広がるInternet of Hologramを挙げた。また、CADなどで必要な1億ポリゴン以上をリモートレンダリングで実現することについても語った。

HoloLensとAzureによるリモートレンダリング

最後にキップマン氏は「MRでみなさんの夢を現実にしていただきたい」と会場に呼びかけて講演を締めくくった。

フリーランスのライター&編集者。IT系の書籍編集、雑誌編集、Web媒体記者などを経てフリーに。現在、「クラウドWatch」などのWeb媒体や雑誌などに幅広く執筆している。なお、同姓同名の方も多いのでご注意。

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