StartupGoGo!が運営支援。静鉄・静ガス・テレ静3社による、静岡県内初のオープンイノベーションプログラムを開始

2019年7月5日(金)
望月 香里(もちづき・かおり)

2019年6月3日(月)、LIVE ROXY Shizuoka(静岡市葵区黒金町28-1-2)にて、「しずおか未来共創プログラム StartingXI(スターティングイレブン)」のキックオフ説明会が開催された。

しずおか未来共創プログラムは、静岡鉄道、静岡ガス、テレビ静岡の3社が協働し、「地域活性化」や「地域課題解決」を切り口に3社の経営資源リソースと日本全国や海外の法人・団体・個人のアイデアを結びつけ、静岡を起点に日本のこれからの100年を持続的なものとする、新たな価値の創出を目的としたオープンイノベーションプログラム。今回はそのキックオフ説明会の位置づけで、立ち見が出るほどの人が集まり、会場には新たな可能性に向けたワクワク感があふれていた。

開催会場のLIVE ROXY Shizuoka

本プログラムにかける、主催3社の想い

説明会は、まず主催3社の代表挨拶から始まった。はじめに登壇したのは、静岡鉄道株式会社 代表取締役の今田智久さん。

静岡鉄道株式会社 代表取締役社長 今田智久さん

交通事業を基軸に生活関連ビジネスを展開し、現在では約30社からなる静鉄グループは、2019年に創立100周年を迎えた。その100周年記念事業の一環として、同じく地域に根差した事業会社である、静岡ガスとテレビ静岡の賛同の元、地域に新しい価値を提供する静岡県内初、複数社が連携して実施するアクセラレータープログラムを企画。「少子化・高齢化・都市との格差など地域社会の衰退はそのまま会社の危機にも繋がってくる。しかし『ピンチはチャンス』と捉え、課題に対して積極的に関わっていく試みは新たなビジネスチャンスと捉えていきたい」。

続いて、静岡ガス株式会社 代表取締役 社長執行役員の岸田裕之さんが登壇。

静岡ガス株式会社 代表取締役 社長執行役員の岸田裕之さん

静岡ガスは、都市ガス・プロパンガス・電力などのエネルギーを中心に展開する企業グループだ。静岡県は日本の中央に位置し、首都圏等へのアクセスにも便利という立地だが、そのメリットを存分に発揮できているかは疑わしい。また、これまでは「安心安全」ブランドでお客さまに信頼されてきたが、本当にお客さまを驚嘆させるサービスの創出には至っていないことも否めない。「思いもよらないアイデアとの化学反応で『しずおか』が活性化され、少しでも人口減少の歯止めになればと思っている。ここ『しずおか』から日本・世界へと新しい風を起こしていきたい」。

そして、最後に株式会社テレビ静岡 代表取締役社長の小林 豊さんが登壇した。

株式会社テレビ静岡 代表取締役社長の小林 豊さん

これまで、テレビ番組やイベント等を通じて成り立ってきた人々のコミュニケーションがここ5年程でインターネット・SNSへと変化してきて、テレビ局としては危機感を感じている。この先の経営は厳しいものがあるだろうと、社員共々さまざまな事業展開を進めてきた。「番組やイベントを作るなど企画力やノウハウはある。斬新なアイデアや技術との掛け合わせによりお互いが刺激される事で『しずおか』が活気付き、ゆくゆくは世界へと良い風を起こしていきたい」。

主催3社のテーマとリソースを紹介

続いて、3社の社長によるプログラム公式ロゴマークの除幕式等が行われた後、主催3社より自社のテーマとリソースの紹介があった。詳細はこちらから見ていただきたい。

3社の社長によるプログラム公式ロゴマークの除幕式

なお、テレビ静岡のリソース紹介の際、ご当地ヒーローの「からくり侍 セッシャー1」が登場。それまで少し張り詰めていた会場の空気が少し緩んだ。さすが「テレしず」の愛称で親しまれているテレビ静岡。場の空気を掴む力だなと感じた。

テレビ静岡のリソース紹介ではご当地ヒーロー「からくり侍 セッシャー1」が登場。会場の空気を和ませた

「アイデアの募集は7月から。
まずはエントリーを!」

今回、運営支援として本プログラムに関わる、福岡を拠点にスタートアップや起業家をサポートするコミュニティの一般社団法人StartupGoGo代表理事の岸原稔泰さんからは、プログラムの概要説明があった。

一般社団法人StartupGoGo 代表理事の岸原稔泰さん

大企業には多くの人・モノ・資金が、ベンチャーやスタートアップには知識・技術・アイデアがまだまだ眠っている。オープンイノベーションとは、地域社会にとっては地域課題の解決・地域活性化・企業文化の造成が、主催3社にとっては地域活性化による相乗効果や新規事業の開発が、スタートアップやベンチャーにとってはアイデアの具現化・事業の成長・静岡での事業展開の化学変化が起こり「ウィンウィンの関係」を目指すものだ。プログラムの最後にはDEMOdayも設けている。

「大企業は自分たちのやりたいことを実現するための対等なパートナー。そのために、大企業のリソースを使わせていただくと思ってもらいたい」。大企業だからと恐れず、「どんどんおいで」と言っているような、彼の温かく熱い魂には、まるで父親のような包容力を感じた。

なお、本プログラムへのアイデアは7月より募集を開始する。まずはエントリーを。また、Facebookでも公式ページを設けている。今後の進捗状況など、気になる方はぜひチェックしていただきたい。問い合わせはプログラム運営事務局(info@shizuokamirai.com)まで。

所狭しと詰め掛けた参加者で会場は熱気に包まれていた

「資源・人脈は世界にある。
パートナーは地域に限らなくて良い」

説明会の終了後、本プログラムを運営支援するStartupGoGoの担当者に、福岡と静岡の違いと本プログラムの狙いを聞いた。

「福岡は新しいもの好きやお祭り好きな人が多い傾向があるためか、アーリーアダプターの反応を見るのに適している。また、地理的にもアジアや世界を意識した市場に向いている。その点、静岡は日本の真ん中に位置し、日本の平均的な『一般市民』の反応をテストするのに適しているのではないか。本プロジェクトの企画に向く土地柄と言えるだろう」。

また、福岡は現在、主にITスタートアップの拠点として、アジアや世界に進出したいスタートアップ企業における玄関口のような役割を担っている。「今回のプログラムがうまくいけば、StartupGoGoが持つ福岡でのネットワークを活用することも可能だろう。オープンイノベーションがきっかけとなり、ビジネスとして回り始めている例もある。実際、台湾のスタートアップが凸版印刷とビジネスを始めたケースもある」。

StartupGoGoは、本プログラムにおいて提案された事業をブラッシュアップしスタートアップがビジネスとして本当に成立していくかを見極める立ち位置を担っている。「協働プログラムの1回目はどの企業も苦労することが多いが、2回、3回と続けていくうちに社内の雰囲気も変わってきて、社員を巻き込みやすくなってくることが多い」という。

数々のスタートアップ支援を行なって来た、彼らだからこその言葉だと感じた。

「いかに視野を広げ、
シェアしていくかが今後のカギ」

また、本プログラムを企画・主催する静岡鉄道にも話を聞いた。

静岡鉄道が考える一番の地域課題は静岡県の人口減少だ。「県外から入りやすい環境を作り、交流人口・関係人口を増やしていくことで、自然と定住人口は増えてくるだろう。既存の分野を独占するというより、その分野を『どうシェアしていくか』がキーポイントになる」。静岡県に関わってくれる関係人口・交流人口をいかに「観光」という視点で広げていくかが大事なのだ。

また、環境問題への取り組みとして、新型車両A3000形を導入し、既存車両からの移行を進めているとのこと。CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)からCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)へ、新たなビジネスとして取り組んでいきたいと語った。

* * *

「静岡人は保守的だ」と言われることが多い。そんな中、今回のプログラムはとても画期的だと捉えている。地方創生に関して、ある方の言葉が印象的だったので、ここで共有しておきたい。「どこかで成功したシステムをコピー&ペーストしてシステムに組み込もうというのはおもしろくない。盛り上がっている地域とは、住んでいるその地域のことが好きでたまらなく、地域の魅力を延々と語る人のいるところ。都心やどことも比べる必要はない」。静岡の方はもちろんのこと、スタートアップ・ベンチャーの方々も、一度静岡に足を運んで土地の風土に触れていただきたいと思う。あたまで感じるのでなく、からだを通した五感・体験で感じてこそ、わかるものがある。ぜひ、この機会を有効活用してほしい。

著者
望月 香里(もちづき・かおり)
元保育士。現ベビーシッターとライターのフリーランス。ものごとの始まり・きっかけを聞くのが好き。今は、当たり前のようで当たり前でない日常、暮らしに興味がある。
ブログ:https://note.com/zucchini_232

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