チャレンジに「これが正解」というものはない。「好き」を仕事にして生きたいなら「まずはやってみる」こと
2019年6月12日(水)、SHIBUYA CAST・SPACE(東京都渋谷区渋谷1丁目23−2)にて、好きをスキルにする生き方 『d365 SUKI-LL LINK』が開催された。
記念すべき第1回目は、「あなたの『好き』を仕事にする生き方とは?」というテーマで、家入一真さんと佐々木俊尚さんによるトークセッションを開催。家入さんと佐々木さん、オンライン上でのやりとりはあるものの、実際に会って話すのは実に10年ぶりだったそう! そんな2人が醸し出すゆるやかな雰囲気の中、トークセッションはスタートした。
出会いは必然であり偶然
1999年の肉食系ネットバブル時代から2010年頃は人と人を繋げ支え合うなど、「お金も大事だけどそれだけではない」という社会貢献型の起業家が多く誕生した。佐々木さん自身の起業家像も、2010年のリーマンショックや東日本大震災をきっかけに変化。 「家入さんも肉食系からCAMPFIREなど、草食系の起業家に移行してきたよね?」と佐々木さん。
家入さん自身、「起業して成功したい」と奮闘して成功できた当初は、子ども時代にいじめられていた自分にとって遅れてきた青春だったのかもしれないと感じていたそう。でも、成功してお金が尽きるまで遊び呆けたら、周りにいた人はほとんどいなくなった。そんなときに出会ったのが高木新平さん。その頃は「会社や組織の肩書きがなくてもプロジェクトベースで繋がれるのではないか」「水平に繋がっていくことはできないか」と思い始めたタイミングでもあり、彼との出会いは大きかった。「きっと、出会うべきときに、出会うべき人に会っているのだろう」と、家入さんは振り返る。
「期待」と「見返り」は求めない
「あまり人に期待しないし、期待されない生き方をしたい」という家入さん。相手に期待することは、少なからず「見返りが欲しい」という意味が含まれている。見返りを求め合う関係は難しく、見返りを求めないで期待するとは、結果はどうであれ信じるということ。「仕事はお金が絡むから抑圧に転じやすい。抑圧せず仕事をするのは難しくないか」と問う佐々木さんに、「チームの仕事は距離感の問題。自分のやることはやるが、人には期待しない。みんな自分と相手のバランスをとろうとするけど、先に自分への期待値を下げておくと期待されすぎない」と家入さんは答えた。
ハブになる人のいる場はワクワクしている
続いて、家入さんが以前に参加したオープンイノベーションイベントでの話題へ。
「地方でオープンイノベーションのイベントに参加すると、よく大企業の担当者が『どこどこ会社の誰々です』とあいさつに来る。でも、会社の鎧をまとって来ているうちはイノベーションなんか起こせない。会社の鎧を脱いで、一(いち)個人として動ける人がとても大事。イノベーションは一(いち)人間同士の中からしか起こらない」と家入さんは強調する。
佐々木さんは「いま長野と福井と東京で3拠点生活をしている。地方の論理と都会の論理は噛み合わないが、その中でも『ハブになる人がいるところ』はうまくいっている」とした上で、「都会の人とも行政の人とも地域の人とも会話ができる人を『3言語を話せる人』と呼んでいるが、そういう人がいるから成り立つのだと思う。そのハブになる人がどれだけいるかが大事」とまとめた。
家入さんが地方のイベントに参加すると、よく「東京と比べてこの地域はどうですか」と聞かれるそう。「都心や他の地域と比べなくていい。『その地域が好きでたまらない』という熱量の高い人や、地域の魅力を延々と語る人が住んでいるところは違う。自分がハブにならなくても、ハブになっている人の地域にどうハマっていくかが大事で、そこに自分も重なり合っていけば良い。コミュニティ同士の架け橋をどう作っていくかということ。周辺にキーパーソンになる人がたくさんいて、コミュニティ同士の境界線がゆるやかになるのが良いのではないか」と、2人の話はお互いに架け橋を掛け合っているように聞こえた。
失敗からのほうが学べることはたくさんある
対談の最後には、会場からの質問の時間。ここにこそ、学ぶものが多くあったと私は感じた。
Q:「無駄なことや寄り道をすることが人生で大事だ」
とよく言われるが、その判断基準とは?
「何をもって無駄と言うかだけど、僕が作ったリバ邸は僕には1円も入ってこない。一見非効率に見えるけれど、リバ邸から起業家が生まれたりもしていて、割と価値を感じて大事にしている」という家入さん。
佐々木さんも「何がどこで繋がっていくかわからないから、無駄かどうかはその場の一瞬では判断できなくて、判断できないってことはおもしろいし可能性があるってこと。自分がやったことが何か新しい可能性を広げるとか、そんな期待感の中にぼくらは生きているから、いまこの瞬間のメリットデメリットだけで判断するのは逆に良くないという基準です」と付け加えた。
Q:熱量の高い人とどのように出会い、繋がっていけば良いのか
「『僕たち』というコミュニタイズ(コミュニティ最適化)が大事。小さな島が幾十も連なって、その連なりの中に自分がいるというイメージで、ゆるやかなコミュニティの中で情報共有していけたら良いのでは」と佐々木さん。家入さんからは「今日のイベントもそうだけど、集まった人たち同士が交わって繋がることでカオスが生まれる。そのカオスから新しいアイデアやヒーローも生まれるので、参加者同士どんどん繋がっていく方が後々のためにも良いよ」とイベントへ参加した際の参加者同士の関わり方へのアドバイスもあった。
Q:内向的な性格の人がコミュニティに関わっていくには
自他ともに認める内向的な性格の家入さん。佐々木さんから面白いエピソードが語られた。2人は佐々木さんが家入さんの取材に行ったときが初対面で、人見知りする家入さんは部屋の観葉植物の後ろに隠れて佐々木さんの様子を伺っていたそう。「佐々木さん、『テレビに出てる人や』と思って、そういう人って怖そうじゃないですか」という家入さんに、会場からはドッと笑いが起きた。「背伸びしないで頑張りすぎないこと」。佐々木さんのひと言に、2人の温かさを感じた。
Q:一度辞めた仕事を再度始めようと考えているが、
経験があるからこそ躊躇してしまう
「やってみるのは良いが、自分の中で続けられる自信があるかの見極めが大事」と佐々木さん。家入さんは「0か100かではなく、まずやってみてから徐々に精査していくことが大事では。僕だって今残っているモノが成功しているように見えているだけで、8割くらいは失敗と挫折の連続ですよ…あと、あれ、なんだっけ。良いこと言おうとしたんだよ、なんだっけな…」という家入さんに、会場内も(なんだろう)という空気に(笑)。佐々木さんが場を繋げようとしたその時、「ああ、思い出した!」と家入さん。
「今回は『好きをスキルに』というテーマだけれども、まだ学生でいくらでも挑戦できる人と、40代で守っていくものがある人とでは、それぞれの前提条件が違いすぎるから、すべての人に再現性なんてないし、『これが正解だよ』なんて少なくとも僕には言えない。1つだけ言えるとしたら、『いま自分は何を守らなくてはならなくて、最低限いくら必要なのか、それを得るために何をすべきか、好きなことをすることでそれは得られるのか、すぐにやるべきか持続可能な働き方で長期的に実行できないか』を自問することが大切」。この最後の言葉には、これまでの様々な経験からくる、チャレンジャー達への熱い思いを感じた。「生き残った人の『生存バイアス』のかかった話よりも、失敗した経営者の話の方が学びがあるかもね」と、佐々木さんがひとこと付け加えたところで、イベントは終了した。
* * *「好きを仕事に」というと、これまでは「一念発起してチャレンジする」というイメージもあったが、「その人なりのやり方でやれば良い」という、どこか応援歌のように感じた時間だった。そこには佐々木さんと家入さんだからこその空気があったことが一因だったように思う。これは持論だが、自分には自分にしか吹いていない風があり、そのタイミングはその人にとって最適な時に吹くもの。自問自答しながら「徐々に」その割合を変化させていけば良いのだと改めて思った。まずは日々の挨拶や、ちょっとした対応の仕方などを見直していくことから始めようと思う。今回のイベントは「d365」の第1回目。今後のイベントも楽しみである。詳細はコチラから。
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