de:code 2018が開催。基調講演はクラウド、開発ツール、MRが語られる
5月22日〜23日に、日本マイクロソフトの技術者向けカンファレンス「de:code 2018」が開催された。テーマは「L❤️VE to CODE(LOVE to CODE)」。
初日の基調講演は、5月7日〜9日に米国で開催された「Build 2018」で発表された内容や、日本での新発表などをまじえ、約3時間ほど繰り広げられた。
特に今回は、毎年登場する日本マイクロソフトの伊藤かつら氏のほか、クラウド分野をJulia White氏、開発ツール分野をJulia Liuson氏、MR(Mixed Reality)分野をLorraine Bardeen氏と、米Microsoftの女性幹部が続々登壇して解説した。デモもすべて女性社員が担当した。
Windows 10のデバイスをまたがったエクスペリエンス
オープニングに登場した伊藤かつら氏は、前回のde:codeからの12か月での変化として、クラウドがあたりまえのものになっていることと、生活の中にAIが入ってきたことを挙げた。
この時代には「ITテクノロジーの可能性と責務を考える必要がある」と伊藤氏。Microsoftのありかたとして、同社のミッション「Empower every person and every organization on the planet to achieve more」に立ち返り、「empower、つまりみなさんに成功していただくことを目的としている」と語った。
伊藤氏は、いまMicrosoftが注力しているプラットフォームとして、Microsoft AzureとMicrosoft 365の2つを挙げた。
また、パラダイムとして、Microsoftが近年繰り返している「Intelligent Cloud」と「Intelligent Edge」の有機的な結びつきを挙げた。そして、そのコアとなるテクノロジーとして、「Ubiquitous computing(ユビキタスコンピューティング)」「Artificial Intelligence(AI)」「Multi-sense, multi-device experiences(デバイスをまたがったエクスペリエンス)」の3つを挙げた。
「ユビキタスコンピューティング」には、分散処理やサーバーレスなどの技術が必要になる。「それらをAzureでサポートする」と伊藤氏は語った。
「AI」については、Microsoftが音声認識や画像認識などで数々の成果を上げていることや、それをサービスとして提供し開発者でなくても利用できることを説明した。
同時に、AIについて「Microsoftは責務を大切に考えている。将来の仕事や雇用に対する影響を考えていかなくてはいけないと思っている」と強調。同日、書籍『Future Computed:人工知能とその社会における役割』日本語版をPDFで無償公開したことをアナウンスした。
「デバイスをまたがったエクスペリエンス」については、Windows 10の新機能が2つ紹介された。
1つめは、Windows 10 April 2018 Updateで実装された「タイムライン」の機能だ。過去に使ったアプリケーションやウィンドウ構成などのアクティビティを最大30日さかのぼれる。タイムラインはAndroidではMicrosoft Launcher、iOSではMicrosoft Edgeによってスマートフォンでも使え、PCと同じものが見える。「オペレーティングシステムを再定義したいと思っている。Windowsデバイスだけを朝から晩まで使っている人は稀だ」(伊藤氏)。
2つめは、次のWindows 10メジャーアップデートで予定されている「Your Phone」だ。スマートフォンの機能をそのままWindows上で利用できる(UWPアプリ)。伊藤氏は、スマートフォンに来たメッセージの通知がPCにも表示されるだけでなく、それにPC上で返信したり、デスクトップに保存した画像をシームレスにスマートフォンのアプリに送るところや、スマートフォンアプリの添付ファイルをPCに保存するところを紹介した。また応用例として、経費精算のときに、スマートフォンでレシートを写真に撮ってPCでメモを書き込み、これをスマートフォンの経費精算アプリに送るところを見せた。
伊藤氏は最後に、「最も重要なのは、新しい技術ではなく、それによってみなさんがどんなイノベーションを実現するかということ。今年のテーマ『LOVE to CODE』は、『イノベーティブなコードを書くことで組織の潜在能力を解き放つ』ことを意味している」と聴衆に語りかけた。
Azureのサーバレス関連機能
Julia White氏(Corporate Vice President, Azure Marketing)のパートでは、クラウドの分野としてMicrosoft Azureが語られた。
White氏は「Azureは非常に広範なテクノロジー」として、その中から「Containers + Serverless(コンテナ+サーバレス)」「Internet of Things(IoT)」「Data(データ)」「Artificial Intelligence(AI)」の4分野を順に紹介した。
1つめは「コンテナ+サーバレス」だ。コンテナやサーバレス(FaaS)のプラットフォームは各クラウド事業者から提供されているが、「Azureがすごいのは、各機能について最適化されたすばらしい環境を提供する点だ」とWhite氏は主張。PaaSのWeb Apps、FaaSのFunctions、CaaSのAKS、マイクロサービスプラットフォームのService Fabricを紹介した。
サーバレスのメリットとしてはコードがイベントドリブンで動き、スケーラビリティがよくなることや、必要なときだけリソースが使われることをWhite氏は説明した。その中で「Azure Functions」の特徴として、いろいろな言語が使えることや、いろいろなAzureサービスと簡単に接続できるワークフロー機能「Azure Logic Apps」を挙げた。
さらに、Azureの新しい機能として「Azure Event Grid」が紹介された。イベントをハンドラーに簡単につなぐためのルーティングサービスで、1秒あたり100万イベントを処理できるという。White氏は、AzureポータルからEvent Gridを使ってワークフローを作成する例を紹介し、「コードを書かずにサーバレスのロジックを定義できる」と説明した。
IoT Hubとサーバレスを組み合わせる
2つめは「IoT」だ。IoTデバイスが指数関数的に増えている中で、Azure IoT認定デバイスがすでに数百のパートナーから数千種類出ているという。
ここではまず、「Azure IoT Hub」が紹介された。IoTデバイスとの連携やデータ収集、制御、デバイスのセキュアな管理などの機能を持つ。
ステージではサーバレスとIoTを組み合わせるサンプルとして、実際に本間咲来氏がデモした。BLE接続のボタンを押すとTwitterにツイートするシステムを数分で作るというものだ。まずIoT HubのWeb画面でのイベント定義と、JSONを返す簡単なFunctionsのコードを用意する。そしてワークフローを定義するLogic AppsでTwitter投稿のアクションを作成するとその場で完成して、実際にTwitterのタイムラインにメッセージが流れた。
Azureの一部機能をIoTのエッジ側で実行する「Azure IoT Edge」も紹介された。Azure Machine LearningやAzure Functionsなどの機能を、エッジ側のWindowやLinuxの上で動作させることができる。
IoT Edgeについても本間咲来氏がデモした。Raspberry Piでリアルタイムに画像認識するもので、Azureコグニティブサービスで学習したモデルをIoT Edgeにダウンロードすることで、Raspberry Piにパイナップルをかざすと、LEDの絵がパイナップルになった。
世界に分散してどこからでも読み書きできるCosmos DB
3つめは「データ」だ。AzureにはSQL DBやPostgreSQL、MySQL、Redis、Cosmos DBなど、さまざまなデータサービスの選択肢がある。これらはマネージドサービスとして提供され、バックアップや復旧、拡張や縮小などもサービスとして管理されている。
White氏はその中で、「Cosmos DB」を採り上げた。世界規模で分散されたNoSQLデータベースで、利用が急成長しているという。
Cosmos DBの特徴としては、世界中に分散されてどのロケーションでも高速に利用できることや、複数のリージョンを組み合わせることでゼロダウンタイムを実現すること、柔軟なスケール、さまざまなプログラミングモデルによる柔軟な再利用性、マルチマスター書き込み対応などが紹介された。
実際にCosmos DBを使ったアプリケーションのデモが、Lara Rubbelke氏と千代田まどか(ちょまど)氏によりなされた。Rubbelke氏がAzureの日本のリージョンに、千代田氏がアメリカのリージョンにアクセスして、Tシャツの絵柄に手書きでコメントを書き込む例だ。このサンプルのデータは20のリージョンに分散し、世界中で同時にリード/ライトができる。
Rubbelke氏は、書き込みのコンフリクト(衝突)の解決機構が組み込まれていることや、複数の整合性レベルを提供していること、金融で使えるレベルのSLAを担保していること、ターンキー(即時利用可能)で使えることなどをCosmos DBの特徴として語り、「ぜひ新しいアプリケーションを」と語った。
AIのライフサイクルのすべてをカバー
4つめは「AI」だ。
まずは「できるだけAIを簡単に使って欲しい」という分野について、イメージ、ビデオ、言語などの認識をさまざまなプログラミング言語から使える「Azure Cognitive Services」をWhite氏は紹介した。
そして新機能として、クラウド検索サービスの「Azure Search」とCognitive Servicesの統合も紹介された。ビデオの内容のインデックス作成や、ビデオのテキスト起こしなどに対応する。
そのサンプルとして、NBAの試合ビデオから選手やユニフォーム、シューズなどを認識してインデックスする例が紹介された。
続いてWhite氏は、Cognitive Serviceでは足りず自分でモデルを作りたい人がアプリケーションを作るためのAzureの機能を紹介した。これには「データを用意」「学習してモデルを作成」「モデルを使う」の3つのステップが必要になる。
まず、80%の力を使うともいわれるデータの用意。Azureに最適化されたApache Sparkベースの分析プラットフォーム「Azure Databricks」が紹介された。
モデル作りでは、「Azure Machine Learning」が紹介された。繰り返し学習が、Azure Machine Learningにより劇的にシンプルにできるという。
作ったモデルを使うためのデプロイについては、Azure Machine Learningで作ったモデルをDockerコンテナにして、AKSやAzure Batch、Azure IoT Edge、あるいはオンプレミスで使う方法が紹介された。
この3つのステップについて「Azureはツールからデータ、トレーニング、デプロイまで、AIのライフサイクルのすべての部分をカバーする」とWhite氏は語った。
さらにAzure Databricksなどのデータサービスを活用している例として、クリーンエネルギーのデータを分析するrenewablesAI社の事例ビデオが上映された。さまざまな場所から送られる太陽光発電のリアルタイムデータを分析しており、Databricksにより生産性が50%向上したという。
Azureのパートのまとめとして、White氏は世界50リージョンのデータセンターに投資していることを語った。これは技術だけでなく、その土地の法律や規制に合わせるためにも必要だという。「Fortune 500企業の90%がMicrosoftのクラウドを利用し、銀行やATMでも採用されている」とWhite氏。「みなさんがAzureを使って新しいアプリケーションを作るのを楽しみにしています」と語って講演を締め括った。
- クロスプラットフォームで共同プログラミング
- GitHubからApp CenterでCI/CDや実機テストを実行
- Azure上にCI/CD環境を簡単に作る
- AKS上に開発環境を簡単に作る
- .NET Coreは.NET Frameworkとの互換性を強化
- 「現場の人」に向けたMRの遠隔支援と空間プランニング
- MRパートナーに4社が新規参加
- IoTビジネス共創ラボの最新事例
- 「りんな」に次世代会話エンジンを採用
クロスプラットフォームで共同プログラミング
続いて登場したJulia Liuson氏(Corporate Vice President, Developer Division)のパートでは、開発ツールが語られた。
「Visual Studioは優秀だが、われわれは、各自がどんなツールを使って、どんなアプリケーションを開発しても、成功できるようにしたい」とLiuson氏。そこで、700万人のユーザーを持つ「Visual Studio」のほか、360万人のユーザーを持つオープンソースでマルチプラットフォームの「Visual Studio Code」をリリースしている。
新機能として、これらVisual StudioおよびVisual Studio Codeを使って共同作業をするためのサービス「Visual Studio Live Share」が紹介された。
実際にVisual Studio Live Shareがステージ上で、大森彩子氏と原綾香氏によってデモされた。
macOS上のVisual Studio CodeとNode.jsの環境でプログラミングしていて、リモートでヘルプを求めるメッセージを送る。Windowsでそれを受信してリンクをクリックすると、Node.jsの入っていないVisual Studioが起動し、共同作業が始まる。
別々のファイルを開いてそれぞれ作業しながら、ソースコード中の選択部分を共有したりできる。また、リモートからブレークポイントを設定して実行してもらうこともできる。ローカルで起動したWebアプリケーションのサーバーを共有し、リモートの共同作業相手からアクセスしてもらうこともできる。また、ターミナルを共有する機能により、Node.jsの入っていないVisual Studioから、Node.jsの入ったmacOSのターミナルを操作することもできる。
デモを受けてLiuson氏は「好みのマシンやキーボードを使いながら共同作業できる」とコメントした。
GitHubからApp CenterでCI/CDや実機テストを実行
続いてLiuson氏は最近のMicrosoftの変化として、GitHub上のOSSに貢献している最大の単一企業であるとアピールした。GitHubはde:code 2018の展示会場にも出展していた(編注:その後MicrosoftがGitHubの買収を発表した)。
そのうえで、新しいサービスとして、Visual Studio App CenterとGitHubの組み合わせが紹介された。Visual Studio App Centerは、iOSとAndroidの開発のためのサービスで、ビルドやテスト、テストユーザーへの配布、クラッシュレポートなどの機能を持っている。
このデモに千代田まどか(ちょまど)氏が再び登場し、Visual Studio App Center+GitHubを実演した。
題材は、iOSのホテル業務アプリ。このアプリのGitHubリポジトリにプルリクエストが来ているところからデモが始まった。「ここで何も考えずにマージボタンを押す人はいないので、まず自分の環境で動かすが、毎回は面倒」(千代田氏)。
そこで、GitHub MarketplaceのMobile CIで「App Center」を選んで導入。自動でiOSアプリと認識され、簡単な設定だけでCIが設定でき、ビルドが実行される。
ビルドされたアプリは、Visual Studio App Centerから実機テストを自動で走らせることもできる。異なる機種、異なるOSバージョン、異なる言語のほか、Androidも含めて一度に100種類以上の実機でテストできるという。テストに失敗した機種についてはログを見られる。
さらに、ベータテスターに配布する機能や、ユーザー分析、クラッシュリポートの機能もあると千代田氏は説明した。
Azure上にCI/CD環境を簡単に作る
次に紹介されたのはVisual Studio Team ServicesのDevOps機能、特に「Azure DevOps Project」だ。
Azure DevOps Projectについては、最初から阿佐志保氏がデモで説明した。CI/CD環境を手作りしていくのは面倒なところを、Azure DevOps Projectを使うとAzure上にCI/CD環境を作ってくれる。これは現在プレビュー段階であるという。
阿佐氏は、言語、フレームワーク、実行環境といった項目を選択し、Azure Kubernetes Service(AKS)を選んで基本設定するだけで、CI/CDパイプラインができるところを実演して見せた。ビルドパイプラインはDockerのマルチステージビルドや、クラスターパッケージツールHelmに対応、デプロイパイプラインはデプロイタイミング指定などができるという。
また、AKSで動いているので、WebのKubernetes DashbordやWSLコマンドラインのkubectlコマンドから、動作を確認したりPodを増やしたりできるところも見せた。
AKS上に開発環境を簡単に作る
AKSは、Build 2018で名称を「Azure Container Service」から「Azure Kubernetes Service」に変更している。このAKS関連の新サービスとして、「Dev Spaces for AKS」も紹介された。
「通常は、開発するときにローカルにDockerやKubernetesのさまざまなソフトを入れる必要があって大変。Dev Spacesでは、短時間でAzure上に開発環境を作成できる」とLiuson氏。
チームでのコンテナクラスターアプリケーションの開発にも対応。たとえば、Kubernetes上でクローンを作って一部を開発しつつ、チームのほかの人はそれ以外の部分の開発を進めるといったこともできるという。
.NET Coreは.NET Frameworkとの互換性を強化
次の話題は.NETだ。Liuson氏は「.NETには400万人の開発者がいて、毎月45万人が新しく試すなど、開発者は増えている」と語った。
もともとWindowsプラットフォーム専用の.NET Frameworkだった.NETは、現在ではオープン化とクラスプラットフォーム化が進められている。「たとえばタクシーに乗ってWeChat Payで料金を支払うとき、Tencentの支払いゲートウェイでLinux上の.NET Coreが動いている」とLiuson氏。
オープンソース版.NETである.NET Coreの次期バージョン「.NET Core 2.1」が現在RCの段階という。シナリオによっては5倍の速度改善を実現したほか、.NET Frameworkとの互換性が進化。ASP.NET CoreとEF Coreの差も縮めている。
今後、.NET Core 3.0に向けてのロードマップとして、デスクトップ、IoT、AIを包含するための拡張が掲げられた。特にデスクトップ分野では、UWPコントロールやWPF、Windows Formsとの互換性を持ち、すべてのWindows APIにアクセスできるようにする計画をLiuson氏は語った。
.NET Coreについて、原綾香氏が再び登場してデモした。パイチャートを表示する同じサンプルコードを、.NET Frameworkと.NET Coreのそれぞれのプロジェクトにし、両者が同じように動くことを見せた。さらに、.NET Core版が処理速度が速かったことや、約66MBのEXEファイルにまとめられたところも示した。
「現場の人」に向けたMRの遠隔支援と空間プランニング
Lorraine Bardeen氏(General Manager, Mixed Reality Studios)のパートでは、MR(Mixed Reality)分野が語られた。
Bardeen氏は、Microsoft 365から話を始めた。Microsoft 365は、Office 365とWindows 10、Enterprise Mobility + Securityを含むソリューションだ。Microsoft 365では複数のデバイス、いくつものアプリ、いくつもの部署の人などがいっしょに働くようになっている。
そうしたつながりの中心にあるのがMicrosoft Graphだ。さまざまなデータがつながり、利用できる。
デジタル化されたデータが集まり、次のステップとなるのが、「空間的なデータ」によりデジタルとフィジカルの両方のデータが結びつくことだ。そこにHoloLensによるMRが使われる。「MRによりファーストラインワーカー(現場の人)をempowerする」とBardeen氏。ファーストラインワーカーは、Microsoftにとって新たな顧客セグメントであり、開発者によっての新たな機会となる。
HoloLensを2年前に出荷したMicrosoftは、ファーストラインワーカーのシナリオを学んだという。価値の高いものとして、遠隔支援、空間プランニング、トレーニング、コラボレーションの4つが挙げられた。
ここで新しく「Microsoft Remote Assist」と「Microsoft Layout」の2つのMRビジネスアプリケーションが紹介された。
Microsoft Remote Assistは、前述の「遠隔支援」に相当する。作業者をリモートのエキスパートが助けるもので、ハンズフリーのビデオ通話や画像共有、MRでの注釈付け機能を持つ。
Microsoft Layoutは前述の「空間プランニング」に相当する。MRで現実空間にリアルサイズの3Dモデルを可視化し、リアルタイムに関係者と共有して変更できる。これにより、意思決定が数ヶ月から数日に短縮できるという。
スクリーンには、飛行機工場でMicrosoft Layoutを使って空間分析をしたり、Microsoft Remote Assistを使って共同作業をしたり、コルタナを使ってハンズフリーで情報を調べたりする動画が上映された。
日本でファーストラインワーカーにHoloLensが採用された事例も紹介された。
東急建設株式会社では、株式会社インフォマティクスによる、パイプラインの青写真をMRで重ねて見るシステムを採用した。工程の短縮につながり、より早い意思決定ができるという。
海上輸送のJRCS株式会社では、MRによるトレーニング、MRによるエキスパートの助言、陸上からの操船のプロジェクトを開始した。
最後にBardeen氏は、「こうした未来を実現するのに、いちばん重要なのは開発者」と語った。
MRパートナーに4社が新規参加
最後のパートとして、日本マイクロソフト社長の平野拓也氏が登場した。今回、唯一の男性登壇者となる。
平野氏は、投資を加速しているテクノロジー分野として、MR、IoT、AIの3つを挙げた。
日本マイクロソフトは、2017年にMRパートナープログラムを開始し、11社が参加している。このMRパートナープログラムに新たに4社が加わったことがアナウンスされた。
株式会社セックは、MRをJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究している。株式会社ポケット・クエリーズは、東京電力の現場の作業支援にMRを使う。株式会社シャンティは、MRで処方箋から薬の場所や数量がわかる調剤薬局支援システムを開発中。株式会社電通国際情報サービス(iSiD)は、工場での作業者補助やロボットの利用を実験している。
平野氏はそのほか、de:code 2018直後の5月24日〜29に日比谷シャンテで開催される「ゴジラ・ナイト」を紹介した。HoloLensを使ってMRでゴジラを体験するというものだ。
IoTビジネス共創ラボの最新事例
IoTについては、まずMicrosoftがIoT分野でテクノロジーとイノベーションの支援プログラムに4年間で50億ドル投資していることを紹介した。日本での取り組みとしては、2016年に「IoTビジネス共創ラボ」をスタート。現在435社に参加者が増えているという。
その事例としてはまず豊田自動織機が紹介された。世界各地のフォークリフトをIoTに接続し、活動状況を分析したり、予兆保全や人員配置の最適化に利用しているという。
またLANDLOGでは、建築現場で、スマートコンストラクションや、ドローンからの建築現場の情報収集、予兆保全などを行っているという。
さらに、日立製作所とIoTソリューション「Lumada」で協業することも明らかにされた。
「りんな」に次世代会話エンジンを採用
AIについてはソーシャルAIチャットボット「りんな」のユーザーが690万人になったことを紹介。そのうえで、次世代の会話エンジン「共感モデル」を、同日(5月22日)から採用することを発表した。共感モデルでは、人間が会話するのと同じように、会話の流れを読んで返答するという。
AI関連でそのほか、米国ではAIを使った障害者支援機能の開発者を支援する「AI for Accessibility」を発表している。これを日本でも同日(5月22日)設立することがアナウンスされた。
なお、de:code 2018の展示会場でも、AIを含むアクセシビリティ機能のブースが設けられていた。
平野氏はそのほか、Microsoftが関与する開発コミュニティの成長や、女性技術者の活動を支援するWomen in Technologyを紹介した。
また、日本マイクロソフトでリターンシップのプログラムを1月から開始したことも紹介した。事情により日本マイクロソフトでのエンジニアの道を断念した人が、同社またはほかの会社でエンジニアに戻ることを支援しているという。
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