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de:code 2018が開催。基調講演はクラウド、開発ツール、MRが語られる

2018年6月11日(月)
高橋 正和
de:code 2018

 5月22日〜23日に、日本マイクロソフトの技術者向けカンファレンス「de:code 2018」が開催された。テーマは「L❤️VE to CODE(LOVE to CODE)」。

 初日の基調講演は、5月7日〜9日に米国で開催された「Build 2018」で発表された内容や、日本での新発表などをまじえ、約3時間ほど繰り広げられた。

 特に今回は、毎年登場する日本マイクロソフトの伊藤かつら氏のほか、クラウド分野をJulia White氏、開発ツール分野をJulia Liuson氏、MR(Mixed Reality)分野をLorraine Bardeen氏と、米Microsoftの女性幹部が続々登壇して解説した。デモもすべて女性社員が担当した。

Windows 10のデバイスをまたがったエクスペリエンス

 オープニングに登場した伊藤かつら氏は、前回のde:codeからの12か月での変化として、クラウドがあたりまえのものになっていることと、生活の中にAIが入ってきたことを挙げた。

伊藤かつら氏

 この時代には「ITテクノロジーの可能性と責務を考える必要がある」と伊藤氏。Microsoftのありかたとして、同社のミッション「Empower every person and every organization on the planet to achieve more」に立ち返り、「empower、つまりみなさんに成功していただくことを目的としている」と語った。

 伊藤氏は、いまMicrosoftが注力しているプラットフォームとして、Microsoft AzureとMicrosoft 365の2つを挙げた。

 また、パラダイムとして、Microsoftが近年繰り返している「Intelligent Cloud」と「Intelligent Edge」の有機的な結びつきを挙げた。そして、そのコアとなるテクノロジーとして、「Ubiquitous computing(ユビキタスコンピューティング)」「Artificial Intelligence(AI)」「Multi-sense, multi-device experiences(デバイスをまたがったエクスペリエンス)」の3つを挙げた。

Intelligent CloudとIntelligent Edgeのコアとなる、ユビキタスコンピューティング、AI、デバイスをまたがったエクスペリエンスの3つの技術

 「ユビキタスコンピューティング」には、分散処理やサーバーレスなどの技術が必要になる。「それらをAzureでサポートする」と伊藤氏は語った。

 「AI」については、Microsoftが音声認識や画像認識などで数々の成果を上げていることや、それをサービスとして提供し開発者でなくても利用できることを説明した。

 同時に、AIについて「Microsoftは責務を大切に考えている。将来の仕事や雇用に対する影響を考えていかなくてはいけないと思っている」と強調。同日、書籍『Future Computed:人工知能とその社会における役割』日本語版をPDFで無償公開したことをアナウンスした。

マイクロソフトは書籍『Future Computed:人工知能とその社会における役割』日本語版を無償公開した

 「デバイスをまたがったエクスペリエンス」については、Windows 10の新機能が2つ紹介された。

 1つめは、Windows 10 April 2018 Updateで実装された「タイムライン」の機能だ。過去に使ったアプリケーションやウィンドウ構成などのアクティビティを最大30日さかのぼれる。タイムラインはAndroidではMicrosoft Launcher、iOSではMicrosoft Edgeによってスマートフォンでも使え、PCと同じものが見える。「オペレーティングシステムを再定義したいと思っている。Windowsデバイスだけを朝から晩まで使っている人は稀だ」(伊藤氏)。

Windows 10のタイムラインの機能
Windows 10のタイムラインをAndroidで見る
Windows 10のタイムラインをiOSで見る

 2つめは、次のWindows 10メジャーアップデートで予定されている「Your Phone」だ。スマートフォンの機能をそのままWindows上で利用できる(UWPアプリ)。伊藤氏は、スマートフォンに来たメッセージの通知がPCにも表示されるだけでなく、それにPC上で返信したり、デスクトップに保存した画像をシームレスにスマートフォンのアプリに送るところや、スマートフォンアプリの添付ファイルをPCに保存するところを紹介した。また応用例として、経費精算のときに、スマートフォンでレシートを写真に撮ってPCでメモを書き込み、これをスマートフォンの経費精算アプリに送るところを見せた。

スマートフォンの通知がPCにも表示される
返信や添付ファイルの開封もPCから行える

 伊藤氏は最後に、「最も重要なのは、新しい技術ではなく、それによってみなさんがどんなイノベーションを実現するかということ。今年のテーマ『LOVE to CODE』は、『イノベーティブなコードを書くことで組織の潜在能力を解き放つ』ことを意味している」と聴衆に語りかけた。

Azureのサーバレス関連機能

 Julia White氏(Corporate Vice President, Azure Marketing)のパートでは、クラウドの分野としてMicrosoft Azureが語られた。

 White氏は「Azureは非常に広範なテクノロジー」として、その中から「Containers + Serverless(コンテナ+サーバレス)」「Internet of Things(IoT)」「Data(データ)」「Artificial Intelligence(AI)」の4分野を順に紹介した。

Julia White氏
Azureの「Containers + Serverless」「Internet of Things」「Data」「Artificial Intelligence」の4分野を順に紹介

 1つめは「コンテナ+サーバレス」だ。コンテナやサーバレス(FaaS)のプラットフォームは各クラウド事業者から提供されているが、「Azureがすごいのは、各機能について最適化されたすばらしい環境を提供する点だ」とWhite氏は主張。PaaSのWeb Apps、FaaSのFunctions、CaaSのAKS、マイクロサービスプラットフォームのService Fabricを紹介した。

Azureのコンテナ+サーバレスのサービス

 サーバレスのメリットとしてはコードがイベントドリブンで動き、スケーラビリティがよくなることや、必要なときだけリソースが使われることをWhite氏は説明した。その中で「Azure Functions」の特徴として、いろいろな言語が使えることや、いろいろなAzureサービスと簡単に接続できるワークフロー機能「Azure Logic Apps」を挙げた。

 さらに、Azureの新しい機能として「Azure Event Grid」が紹介された。イベントをハンドラーに簡単につなぐためのルーティングサービスで、1秒あたり100万イベントを処理できるという。White氏は、AzureポータルからEvent Gridを使ってワークフローを作成する例を紹介し、「コードを書かずにサーバレスのロジックを定義できる」と説明した。

サーバレスのためのFunctionsとLogic Apps、そこにイベントをつなぐEvent Grid
Event Gridでコードを書かずにワークフローを作成

IoT Hubとサーバレスを組み合わせる

 2つめは「IoT」だ。IoTデバイスが指数関数的に増えている中で、Azure IoT認定デバイスがすでに数百のパートナーから数千種類出ているという。

Azure IoT認定デバイスはすでに数百のパートナーから数千種類提供されている

 ここではまず、「Azure IoT Hub」が紹介された。IoTデバイスとの連携やデータ収集、制御、デバイスのセキュアな管理などの機能を持つ。

 ステージではサーバレスとIoTを組み合わせるサンプルとして、実際に本間咲来氏がデモした。BLE接続のボタンを押すとTwitterにツイートするシステムを数分で作るというものだ。まずIoT HubのWeb画面でのイベント定義と、JSONを返す簡単なFunctionsのコードを用意する。そしてワークフローを定義するLogic AppsでTwitter投稿のアクションを作成するとその場で完成して、実際にTwitterのタイムラインにメッセージが流れた。

本間咲来氏
IoT Hubでイベント定義
FunctionsでIoT Hubからイベントを受けるコードを作成
Functionsで雛形のコードが作られる。ここにコードを追加
Logic AppsでTwitter投稿のアクションを作成
ボタンを押すと…
Twitterに投稿された

 Azureの一部機能をIoTのエッジ側で実行する「Azure IoT Edge」も紹介された。Azure Machine LearningやAzure Functionsなどの機能を、エッジ側のWindowやLinuxの上で動作させることができる。

 IoT Edgeについても本間咲来氏がデモした。Raspberry Piでリアルタイムに画像認識するもので、Azureコグニティブサービスで学習したモデルをIoT Edgeにダウンロードすることで、Raspberry Piにパイナップルをかざすと、LEDの絵がパイナップルになった。

AzureコグニティブサービスのモデルをIoT Edgeにダウンロード
Raspberry Piにパイナップルをかざす(この後、LEDの絵がパイナップルに変わった)

世界に分散してどこからでも読み書きできるCosmos DB

 3つめは「データ」だ。AzureにはSQL DBやPostgreSQL、MySQL、Redis、Cosmos DBなど、さまざまなデータサービスの選択肢がある。これらはマネージドサービスとして提供され、バックアップや復旧、拡張や縮小などもサービスとして管理されている。

Azureのさまざまなデータサービス

 White氏はその中で、「Cosmos DB」を採り上げた。世界規模で分散されたNoSQLデータベースで、利用が急成長しているという。

 Cosmos DBの特徴としては、世界中に分散されてどのロケーションでも高速に利用できることや、複数のリージョンを組み合わせることでゼロダウンタイムを実現すること、柔軟なスケール、さまざまなプログラミングモデルによる柔軟な再利用性、マルチマスター書き込み対応などが紹介された。

世界中に分散されてマルチマスター書き込みに対応

 実際にCosmos DBを使ったアプリケーションのデモが、Lara Rubbelke氏と千代田まどか(ちょまど)氏によりなされた。Rubbelke氏がAzureの日本のリージョンに、千代田氏がアメリカのリージョンにアクセスして、Tシャツの絵柄に手書きでコメントを書き込む例だ。このサンプルのデータは20のリージョンに分散し、世界中で同時にリード/ライトができる。

 Rubbelke氏は、書き込みのコンフリクト(衝突)の解決機構が組み込まれていることや、複数の整合性レベルを提供していること、金融で使えるレベルのSLAを担保していること、ターンキー(即時利用可能)で使えることなどをCosmos DBの特徴として語り、「ぜひ新しいアプリケーションを」と語った。

Lara Rubbelke氏
千代田まどか(ちょまど)氏
日本とアメリカから同時に絵に書き込む
20のリージョンに分散

AIのライフサイクルのすべてをカバー

 4つめは「AI」だ。

 まずは「できるだけAIを簡単に使って欲しい」という分野について、イメージ、ビデオ、言語などの認識をさまざまなプログラミング言語から使える「Azure Cognitive Services」をWhite氏は紹介した。

 そして新機能として、クラウド検索サービスの「Azure Search」とCognitive Servicesの統合も紹介された。ビデオの内容のインデックス作成や、ビデオのテキスト起こしなどに対応する。

 そのサンプルとして、NBAの試合ビデオから選手やユニフォーム、シューズなどを認識してインデックスする例が紹介された。

さまざまなAzure Cognitive Services
Azure SearchとCognitive Servicesの統合
NBAの試合ビデオからインデックスを作る例

 続いてWhite氏は、Cognitive Serviceでは足りず自分でモデルを作りたい人がアプリケーションを作るためのAzureの機能を紹介した。これには「データを用意」「学習してモデルを作成」「モデルを使う」の3つのステップが必要になる。

自分でAIモデルを作成するための3つのステップ

 まず、80%の力を使うともいわれるデータの用意。Azureに最適化されたApache Sparkベースの分析プラットフォーム「Azure Databricks」が紹介された。

ステップ1:Azure Databricks

 モデル作りでは、「Azure Machine Learning」が紹介された。繰り返し学習が、Azure Machine Learningにより劇的にシンプルにできるという。

ステップ2:Azure Machine Learning

 作ったモデルを使うためのデプロイについては、Azure Machine Learningで作ったモデルをDockerコンテナにして、AKSやAzure Batch、Azure IoT Edge、あるいはオンプレミスで使う方法が紹介された。

ステップ3:コンテナにしてデプロイ

 この3つのステップについて「Azureはツールからデータ、トレーニング、デプロイまで、AIのライフサイクルのすべての部分をカバーする」とWhite氏は語った。

 さらにAzure Databricksなどのデータサービスを活用している例として、クリーンエネルギーのデータを分析するrenewablesAI社の事例ビデオが上映された。さまざまな場所から送られる太陽光発電のリアルタイムデータを分析しており、Databricksにより生産性が50%向上したという。

renewablesAI社の事例ビデオ

 Azureのパートのまとめとして、White氏は世界50リージョンのデータセンターに投資していることを語った。これは技術だけでなく、その土地の法律や規制に合わせるためにも必要だという。「Fortune 500企業の90%がMicrosoftのクラウドを利用し、銀行やATMでも採用されている」とWhite氏。「みなさんがAzureを使って新しいアプリケーションを作るのを楽しみにしています」と語って講演を締め括った。

次ページでは……
  • クロスプラットフォームで共同プログラミング
  • GitHubからApp CenterでCI/CDや実機テストを実行
  • Azure上にCI/CD環境を簡単に作る
  • AKS上に開発環境を簡単に作る
  • .NET Coreは.NET Frameworkとの互換性を強化
  • 「現場の人」に向けたMRの遠隔支援と空間プランニング
  • MRパートナーに4社が新規参加
  • IoTビジネス共創ラボの最新事例
  • 「りんな」に次世代会話エンジンを採用

フリーランスのライター&編集者。IT系の書籍編集、雑誌編集、Web媒体記者などを経てフリーに。現在、「クラウドWatch」などのWeb媒体や雑誌などに幅広く執筆している。なお、同姓同名の方も多いのでご注意。

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