妖精さんと学ぶ開発ドキュメント
システム開発も終盤に差し掛かってくると、疲れが溜まったり、睡眠時間が足りないといったために「ふっ」と意識が遠のくことがある。しかし、自分で入力した覚えがないのにコードが書かれていたり、知らないうちにバグがどこかに消えていた、ということはないだろうか。
実は開発者の作業能力が低下すると、C言語で開発しているのなら「C言語の妖精さん」、Java言語で開発しているなら「Java言語の妖精さん」が、どこからともなく現れて、あなたの代わりに作業を続けてくれているのだ。
古くから使われている言語であれば、妖精さんたちも高いスキルを誇っているのだが、最近になって登場したり、重要視されるようになった箇所の妖精さんは、まだまだ新人が多いのが現状である。
その中でもここ近年、重要視されているのが「開発ドキュメント」だ。開発ドキュメントの妖精さんは、システム開発に必要な仕様やテスト項目を、疲労困ぱいなあなたの代わりにまとめてくれる。もちろん古くからこの分野に携わる妖精さんがいるのだが、特にここ最近は要求定義の難しさや開発手法の変化に伴って、新人教育に力を注いでいる状況なのだ。
本連載では、新人妖精「A奈ちゃん」と指導教官の「B乃ちゃん」の2人といっしょに、開発ドキュメントの作成についての第一歩を学んでいく。
第1話「開発ドキュメントの妖精さん登場!」
深夜2時、とある会社の開発部では、いつ終わるとも知れない開発作業に疲れきったプログラマーたちがそれぞれの机に突っ伏し、現実の悪夢を忘れるべく眠りについていた。
「B乃先輩、ここが私たちの仕事場なんですか?」
「そうよA奈。…といっても、ここまでになってしまうと言語妖精の人たちのほうが大忙しね。ここみたいに開発現場が死屍累々にならないためにこそ、私たちの力が本当に求められるわけ」
力説するB乃だったが、A奈は話を聞かず、C言語の妖精さんに「こんばんは〜」と手を振っている。B乃は、その頭に後ろから蹴りを入れた。
「先輩、いた〜い」
「話を聞かないあなたが悪いのよ。開発ドキュメント妖精の学校で習ったことを忘れたの? 1つ、開発ドキュメントの妖精は開発プロジェクトの円滑な運営に寄与すべき!」
「…だって、現場ははじめてなんですもん。そんなに怒っちゃ怖いですよ」
「そんな泣き顔を見せてもだめよ! この現場をみても、そんなにのんきなことをいってるあなたが悪いの!」
「うぅぅ」
「…まぁいいわ。まずは学校で習ったことをおさらいしてみましょう。そもそも開発ドキュメントとはなにか、説明してごらんなさい」
「はいぃ…」
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