スキルアップ、キャリアアップ、自分らしい働き方を実現。フリーランスのパワーを最大化する「Independent Power Fes」レポート
11月1日(金)、東京のNagatacho GRiDにて、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、フリーランス協会)が主催する11月1日(いいひとりのひ)を「キャリア自律の日」として「世の中に自分の旗をたてよう! フリーランスのパワーを最大化する一日<Independent Power Fes>」が東京・名古屋・大阪・福岡の4箇所で同時開催された。本レポートは、東京会場での様子をお伝えする。
会場には、フリーランスにとって大切な年金、法律、保険、クラウドサービスなどの無料相談ブースが設けられ、セッションの合間を縫って参加者が相談している様子が見られた。
また、「フリーランスの活躍の場を拡げる」というミッションのもと、「第1回 フリーランスパートナーシップアワード2019」の大賞受賞者が決定され、従来の考え方に囚われずに課題解決や事業成長を成し遂げた企業部門には株式会社瀬戸内ジャムズガーデンが、フリーランスが力を最大限に発揮できる環境をマッチング支援したエージェント部門にはNPO法人G-netの掛川 遥香さんが表彰されるなど、盛りだくさんの内容だった。イベントのメインとなる各セッションの模様はこちらだ。
SessionA:自分の値決め、どうしていますか?
~フリーランスなら身に付けたい交渉力とスキルの見える化
平田さんの挨拶に続いて行われた最初のSessionAでは、Sansanのコネクタ、Eightエヴァンジェリストの日比谷尚武氏、株式会社Leonessa代表取締役社長 経営コンサルタント、声楽家の秋山ゆかり氏のスピーカー2名と、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授 高橋俊介氏をモデレーターに議論した。
仕事は主に知り合いの伝手から
まず、仕事の取り方について、日比谷氏も秋山氏も知り合いの伝手からが多いという。単価については相手との関係性によるとか。また、秋山氏は特に営業活動などはしていないが、プロジェクトが終わる時期をSNSで告知するなど、やり方は今どきだ。声楽の仕事については、オーディションで役や番組を取得しているそうだ。
モデレーターの高橋氏は「『ワークライフインテグレーション』と言われるように、ワークとライフは統合するもの。自分がやりたいように働けることはフリーランスの特権だ」とコメントした。
仕事を受けるかは先方の誠実さがポイント
仕事の依頼は伝手からが多いという日比谷、秋山の両氏に、高橋氏は仕事を断るのはどんなときか聞いた。日比谷氏は「先方の期待値が自分の持っているリソースと全然違うとき」。日比谷氏も秋山氏も、株主総会時の様子やメディア・先方の関係者からのレファレンスを見聞きした上で、協働するか決めているという。加えて秋山氏は「特にスタートアップは経営陣の『ひと』の誠実さを見極めるようにしている。何もレファレンスのない相手とは、1ヶ月など短いプロジェクトなら受けることもある」とか。様々なひとと接してきた高橋氏も、「2時間位話すとその人が見えてきますよね」と合いの手を入れた。
段階的に興味の重なり合う部分を増やしてきた
幅広い分野で活動している両者。日比谷氏は「自分だけで決める目標は自分の範囲でしか見えていないので、可能性を狭めてしまいがち。これまで、6年ごとに自分の興味が重なり合う部分を少しずつスライドさせながら領域を広げてきた」という。一方、秋山氏は「変化はあまり感じていないが、業界は広がっている。テクノロジーを基としながら業種は金融・消費財・製造業まで幅広い。事業開発は永遠のテーマで0-1だけでなく1-100もある。地域を縛ることなく、より世界へと視野を広げていきたい」と話した。最後に、高橋氏は「No.1よりオンリー1。フリーランスとして一番大事なことは、自分ならではのバリューと自分らしさとは何かを自分で知っていること」と締めくくった。
SessionB:観たい! 食べたい! 働きたい!
フリーランスだからこそできる、旅するワークスタイル
続くSessionBでは、編集者・ライター・元ハフポスト日本版副編集長の笹川かおり氏、LOCAL REMOTE WORK NETWORK 主宰の山本裕介氏、株式会社マモル代表取締役・フリーランス協会地方創生PJリーダーのくまゆうこ氏のスピーカー3名と、一般社団法人Work Design Lab 代表理事の石川貴志氏をモデレーターに議論した。
地域が自分ごとになるワーケーション
ワーケーションのメリットについて、笹川氏・山本氏は「観光だけでなく、自分がその地域にどう関われるか、自分ごととして考えられること」と断言。笹川氏は現在、都心6、地方4の割合で生活しているという。また、山本氏は地域との交流を継続するコツとして「初対面から2回目はなるべく時間を空けずに会いに行くようにしている。東京でその地域のことを伝えるなど、情報収集しながら交流を続けている」という。
また、発信の方法やコツについて、山本氏はSNSなどでリアルタイムに「今ここで働いています」と発信した後、自分のブログでその地域を紹介しているという。笹川氏は「その地域の『何が強みなのか』が読者に伝わるように情報発信するなど、それぞれが自分の得意分野で地域と関わっている」とのこと。
家族との時間も増えて家庭内もより円満に
今後の展望について、現在都内と新潟の二拠点生活を送るくま氏は「旅をしながら働くなど、今よりも場所にとらわれない働き方をしていきたい」。また、仕事をしながら様々な地域を訪れ情報発信をしている山本氏は「現在は日本の地方からの発信だが、その一歩先として海外にも視野を広げていきたい」。笹川氏は「昨今地方と地方のキーパーソンが繋がりつつあり、今後も地方と地方が繋がる動きがより広まると良い」と、それぞれ抱負を語った。
最後は、自身もワーケーションを行なっているモデレーターの石川氏が「家族でワーケーションすることで、一人のときには見えなかった視点で地域が見られるようになったり、家族の時間が持てることで家庭内の空気も良くなる」と感想を共有したところでセッションを締めくくった。
SessionC:自営業のお金の話。
資産形成、節税、社会保障など気になるトピックまるわかり!
SessionCでは、税理士・株式会社ArtBiz代表の大河内薫氏、元日銀マン・たくみ総合研究所代表・エコノミスト・睡眠健康指導士の鈴木卓実氏、プロモーションプランナー・フリーランス協会事務局長の中山綾子氏のスピーカー3名と、編集者・ライターの友光だんご氏をモデレーターに議論した。
フリーランスはお金による資産形成よりも人的資産が先
「お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!」(サンクチュアリ出版刊)の著者である大河内氏は、「お金は仕事で稼ぐのが一番。資産形成の前にまずは種銭を作ることが大事。金融資産を増やことに目を向けすぎて騙されてしまったケースが多い。フリーランスは、まずは現金を積み重ねることが大事」と語る。鈴木氏も「フリーランスはお金だけでなく人的資産など、お金以外の資産を幅広くとった方が良い」という。日頃からフリーランスとよく会っているという中山氏は「今、自分は信頼資産か金融資産の時期か、立ち位置を見極めることが大事。自分を商品と捉え、自分の信頼価値を上げていくことが全てのベースでは」と示唆した。また鈴木氏は「複利を利用したり財産を分散させるなど、日本のものだけでなくSP500のインデックス(S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出しているアメリカの代表的な株価指数)など世界の経済に目を向けることも大切」とリスク分散の大切さにも触れた。
また、小規模企業共済制度とidecoについて、大河内氏は「小規模企業共済制度は元本保証があり、控除適用により節税にもなる。申し込みは郵送が望ましい」と解説。鈴木氏からも「idecoは自分で年金を作ろうという仕組み。補償はないが、投資信託もできてリスクをとって増やそうと思えばできるし、税金の控除もある。しかし、国民年金基金との併用ができない点は要注意」とアドバイスがあった。
|「インボイス制度」はリスクヘッジしておけば大丈夫
2023年10月1日より導入されるインボイス制度について、大河内氏は「本格的に制度が始まるのは4年後。それまでに情報を集めて対策を考えておくと良い」と事前準備を提案した。鈴木氏も「インボイス制度は軽減税率がなくならない限りある制度なので、手元の金額を把握しておくことが大切だ」と語った。また、中山氏は「怖がるだけでなく、これまでフリーランスだから加入が認められなかった制度に加入できるかも」など、会社員と同じ土俵に立つことが可能となる側面もあると話した。
フリーランスの活動は全てが自己責任になるため、一番の資本は健康な身体だ。スキルアップや人脈など人的資本が先で、金融資本は長期で積み立てるのが良いだろうと、3者からアドバイスがあった。加えて大河内氏からは「動画など新たな価値も増えている。未開拓の自分の価値の形成をしていくことをお勧めする」。中山氏からも「ビジネスリスクは自己責任だが、健康リスクの保証はフリーランス協会でも推進していきたい」という、フリーランスにとって手厚いバックアップ体制を紹介したところでSessionCは締めくくった。
SessionD:手放したくないフリーランスの条件
ここだけで聞けるクライアントの本音
最後のSessionDでは、テレビプロデューサー・顔ハメパネル愛好家の鎮目博道氏、グロービス学び放題 事業責任者・グロービス経営大学院教員の鳥潟幸志氏、株式会社Waris代表取締役 共同創業者・フリーランス協会理事の田中美和氏の3名のスピーカーと、BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長・AERA元編集長の浜田敬子氏をモデレーターに議論した。
コミュニケーションがとれることが第1条件
「一緒に働きたい」と思うフリーランスについて、鎮目氏は「テレビ業界はチームワークが大事。専門分野を持っている人は周りのモチベーションを上げる効果もある。年齢関係なくフットワークの軽い人と働きたい」と語った。採用側の鳥潟氏は「採用は人伝手が多い。採用時には実績・技術力・チームワークとコミュニケーションが取れるかを大切にしている」とか。そして、田中氏はエージェントの立場から「フリーランスとはいえ、丁寧なコミュニケーションや納期を守るなどのビジネスマナーと、クライアントの期待値を超える提案力のある人は指名が途切れない」と本音を語った。
仕事を始める前には入念な擦り合わせを
一方、困った人の事例として、鳥潟氏は「『できる』と言ったことができなかった人。プロジェクトにもよるが、半年間は様子を見ることがある。でも、中にはフリーランスから正社員になってもらったこともある」と、人によっては正社員への道が開けることも紹介した。また、日頃からフリーランスと企業に関わっている田中氏は「トラブルの大半は期待値の不一致。仕事を始める前に業務内容や金額など、契約書などで確認しておくこと。クライアントとフリーランス、最後は双方のモラルが大切」という当たり前のようでできていない点を指摘した。
時代への柔軟性や好きという純粋な気持ちが一番大事
最後に愛されるフリーランスについて、鳥潟氏は「自分の専門性を勉強し続けて、意思や想いを言語化できる人。異業種の方とのラーニングコミュニティ内で自分のスキルを掛け算しスキルアップさせていくフリーランスが愛される」と断言した。そして、田中氏は「自走性のあるフリーランスは仕事が途切れない」と指摘した上で、人の幸福度は自己決定することで高まるというデータを紹介した。最後に、鎮目氏は「時代が変化している今、自分の経験をアンラーニングでき、やりたいことは若い人に任せて自分たちの持っているスキルをどう活かしていけるか、若いスタッフに柔軟に対応できるフリーランスは愛される」と語り、セッションを締めくくった。
スペシャルトーク:「2030年のぼくらの話をしよう」
セッションの終了後には、自分の名前を看板に活躍するゲストとして元プロ陸上選手・Deportare Partners代表の為末大氏、黒鳥社コンテンツ・ディレクター(『WIRED』日本版前編集長)の若林恵氏を迎え、フリーランス協会代表理事の平田麻莉氏の3名のスピーカーと、ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏をモデレーターにスペシャルトークが開催された。
10年後の2030年はどうなっている?
ここ10年ほどで人々の働き方は大きく変わった。10年後の2030年は個人の時代と言われているが、未来は明るいか?という問いに対し、若林氏は「働き方改革も多様性により自分の人生は自分で決めるという自己主権型の流れがある。一方で、資本主義は基本的に奴隷制を介在させないと成り立たないため、企業もこれまでのように雇用できなくなってきている」と現代の両側面について語った。また、為末氏は「スポーツの世界でも『成長は選手かコーチ、誰の責任か』という問題がよくあるが、今後は自分で自分を育成する力がより大切になってくるのではないか」と示唆した。さらに平田氏は「大企業でも先行きが見えていない今、早くフリーランスになった方が良いのではと思う。日本も戦後は『明日どうやって生きていこうか』という中で、今の発展途上国のように活気や熱気に溢れていた。高度経済成長期に会社に所属することが当たり前化してしまったが、自己決定できないストレスから現代人は仕事に熱意が持てないのでは。今こそ原点回帰のとき。フリーランス協会では自己責任感の脱出を掲げ、会社と対等にパートナーシップを結ぶ働き方を推進している」と語った。
また、2030年予測として、若林氏は「世界的に見て『2016年からようやく21世紀に入った』と言われているくらいなので、ここから先は予想もつかない。インターネットの理念である世界中が繋がることによる個のエンパワーメント「Power to the People」の哲学を当初の理念に戻す時期にきていて、フリーランスが地に足のついた職業だと認識されてくる日も近いだろう」と語った。
2030年は個が主になっているか
最後に、2030年への展望として、平田氏は「フリーランスは1つのステータスに過ぎず、会社でなく『自分』の看板がある状態なだけ。フリーランスと社会人の垣根がなくなる世界を目指していきたい」と語った。若林氏は「ニューヨークのコーヒーショップでチェーン店よりもローカル店の方が多いのは、ローカル店を増やした方が雇用は産まれるからだ。スモールビジネスをいかに簡単に始められるか、行政によるサポートや便利ツールが増えていくことが、これからの経済として大切ではないか」と語った。
為末氏が「個人がデフォルトとなり所属が後付けになっている状況を、国と様々なシステムがサポート・アシストする未来を願う」と締めくくり、本イベントのトークセッションは終了した。
* * *
昨今、社会のフリーランスの認識もかなり変容してきているように感じる。筆者は、様々なひと・生き方に出会う度に、最近は「どんな状況でも働ける」と思えるようになってきた。自分で自分の範囲や可能性を狭めることなく、一人でも自分のパワーを最大限に発揮する生き方ができる人たちが増えれば良いと思う。2030年のあなたは何をしていますか。
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