副業について考える!税理士による副業の秘密と副業を実践する個人や企業担当者が語る”副業の実態“とは
2018年7月3日(火)、ランサーズとザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンの共同開催イベント「ドーナツを食べながら副業について考える!? ~輪になって対話しよう!~」が渋谷・The Millennials Shibuyaにて開催されました。
2018年は「副業元年」とも言われ、1月には厚生労働省から「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が発表されました。しかし副業への関心が高まる一方で、まだまだ副業禁止の会社が多いのも実情です。
そこで、「副業を解禁した企業や実際に副業をしている会社員の方にお話を伺ってみよう!」という趣旨で開かれたのが本イベントです。今回は、そんな本イベントの内容を、元公務員ライターの新美友那(@inaka_free213)がレポートします!
税理士が教えるフリーランスにまつわるアレやコレ
最初に、高橋創税理士事務所 所長の高橋 創さんによる「税理士が教える10の副業の秘密」トークセッションがありました。
高橋さんは、新宿で税理士事務所を開業して11年目。他にもバーを経営するほか、最近ではYouTubeとネットショップも始めたとのこと。今回のイベントでは「副業するにあたって知っておいた方がいいこと」について解説してくださいました。
副業の始まりはいつ?
- 高橋:特に正式な開始日を定める必要はありません。ただ、開業届や青色申告承認申請書などの税務署等への提出書類には記載する必要があります。その際は
- 準備を始めた日
- 最初の仕事をした日
- 入金があった日
- 開業届…事業の開始の事実があった日から1ヶ月以内
- 青色申告承認申請書…青色申告しようとする年の3/15まで(1/16以降に開業した場合、開業日から2ヶ月以内)
副業用の口座は必要?
- 高橋:別口座を作るのがおすすめです。日々の帳簿がつけやすく、税務調査が入った時の対応や税理士への依頼がしやすくなります。副業の取引だけ抽出できる方が確定申告の際にも楽なので、あったほうが良いですね。
副業にあたり銀行からの借り入れは可能か?
- 高橋:金融機関を納得させれば可能です。金融機関が気にするポイントは以下の通りです。
- 事業に将来性があるか
- 用途がはっきりしているか
- ちゃんと返済できる見込みがあるか
副業の確定申告は必ずしなければいけないの?
- 高橋:副業で入ってきた金額から経費を引いて利益を算出しますが、年間20万円以上利益が上がったら申告しましょう。なお、利益がない場合でも、還付がある場合は申告したほうがお得です。
認められる経費と認められない経費は?
- 高橋:原則、商売にかかったものは必要経費です。金額・割合の縛りはありません。生活費か経費かあいまいなものは原則経費にできませんが、聞かれた時に経費である理由を答えられるのであれば、経費として計上できます。
「経費で落ちる」ってどういう意味?
- 高橋:「先輩が『これは経費で落ちるよ』と言ったから大丈夫」ということでは根拠にならないので注意しましょう。確定申告書を提出しても、機械的に受理されているだけで「経費として認められた」わけではありません。
副業でも税務調査は来る?
- 高橋:税務調査が入るのは、個人事業主のうちたった3%です。個人事業主には本業のフリーランスも含まれているので、副業ベースであればもっと少ないかもしれません。また、副業の人は大体電話で調査が終わるので、あまり心配する必要はないでしょう。
副業がバレたらどうしよう…?
- 高橋:副業がバレるケースには、大きく分けて二つあります。
- 会社に送られる住民税の通知書から
- 公言したため
- 住民税を普通徴収にする
- 確定申告の際、項目を雑所得にする
「マイナンバーから副業がバレるのでは…?」と心配される方もいらっしゃいますが、マイナンバーと紐づけされるのは- 銀行口座
- 証券会社の口座
- 確定申告書
- 源泉徴収票・支払調書
確定申告のコツ
- 高橋:確定申告を上手に行うためには、いくつかコツがあります。
- 経費の領収書は漏れなくとっておく
- 副業の住民税は普通徴収を選択する
- 青色申告も良し悪しなので、収入が低いうちはあまり必要ない
- 規模が小さいうちは雑所得で申告する
- 規模が大きくなったら法人化する
「お客様が副業のアイデアを実現していく過程を見るのは、とても楽しい」と語る高橋さん。「税理士は敷居が高くて相談できないという声も聞きますが、ガンガン相談してくださいね」と参加者に呼び掛けてトークセッションを締めくくりました。
5つのテーマで話せる副業相談トークブース
高橋さんのトークセッションに続いて、トークブースセッション「5つのテーマで話せる、副業相談トークブース」が行われました。このセッションは副業を実践している個人や企業担当者に副業に関する悩みや疑問等を質疑応答できるもの。ここでは、各ブースでの質疑応答の一部を紹介します。
1. 副業解禁企業者ブース:岡 直哉さん(ヤフー株式会社)
Q:副業を始めるにあたって、情報収集はどのようにしていましたか?
A:基本的にネットで調べました。今までこのようなイベントには参加しておらず、ツテがなかったので。今は契約書のテンプレートなどもネットに無料で落ちているので、そういった資料もネットで調べて半年ほどかけて自分用にカスタマイズしました。
2. 副業未解禁企業者ブース:岸 健二さん(コクヨ株式会社)
Q:副業は世の中に広まるほうが良いと思いますか?
A:ハッピーな副業なら広まる方が良いと思います。苦しんでしまう人もいるので。僕の印象では、趣味じゃなくても得意としているものをどれだけ磨き上げていくかということが大事な気がします。副業をすることで居場所が会社以外にもでき、本業に対しても余裕が生まれてきます。そういう方が増えると、日本がよくなるのでは。
3. 解禁したて企業ブース:中尾 陽平さん(株式会社新生銀行)
Q:副業を解禁して、雰囲気は変わりましたか?
A:よく副業に関する質問をされたり、社内外から「雰囲気が変わったね」と言われたりすることが増えました。副業をやる方はモチベーションが高く、「副業を実現できている」ということに対してまた活力が湧くようです。
4. 成功している解禁企業ブース:石田 恵一さん(ソフトバンク株式会社)
Q:副業解禁の準備期間はどれくらいでしたか?また、効果測定はしていますか?
A:準備期間は1~2か月くらいでした。解禁とはいえ、不動産管理のために法人を設立する事業などの副業は以前からあって承認していたので、原則禁止を許可制にしてメッセージを変えただけです。効果測定は、どれだけイノベーションを発揮できたかということを定量的に図ることは難しいのですが、本人の主観によるアンケートを取って指標としています。
5.ソーシャルアパートメント住人副業ブース:清水 正樹さん(株式会社エンファクトリー)
Q:どういう副業をされている方が多いですか?
A:結構バラバラです。半分くらいはコンサルなどのスキルを売る仕事で、もう半分は自分で事業にチャレンジしています。意外なところでは、フィリピンで会社をやり、翻訳やコーヒー豆の輸入をしている方がいます。2か月に1回くらい休みを取って現地に行っているようです。
副業のリアルについて、企業と個人が語り合う
トークブースセッションが終わったところで、ゲストの皆さんによるパネルディスカッション「副業のリアルについて、企業と個人が語り合う」が行われました。
【ファシリテーター】
竹下 隆一郎さん(ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社)
【パネラー】
・石田 恵一さん(ソフトバンク株式会社)
・中尾 陽平さん(株式会社新生銀行)
・岡 直哉さん(ヤフー株式会社)
・岸 健二さん(コクヨ株式会社)
竹下:副業の良いところを1つ挙げるとしたら何ですか?
- 石田:企業目線で言うと、社員が社外で別の経験を積み、スキルを身に付けてくれるところです。当社は副業のことを武者修行のようなものだとポジティブに受け止めています。良い経験をして、本業に還元してほしいですね。
- 中尾:副業を始めた方の顔がイキイキしてきたところです。イキイキとした人が増えるのが一番のメリットだと思うので、そうやって会社の外にも還元し、活性化してくれると嬉しいです。
- 岡:副業は自由なのが良い点ですね。職種も時間帯も選べますし、融通がきくのが魅力です。
- 岸:人生を豊かにしてくれるのが良いところです。僕も他の人に「イキイキしているね!」と言われます。
竹下:副業する人が増えると、日本にとってどのようなメリットがありますか?
- 石田:年功序列・終身雇用などの日本型雇用システムが崩れる大きなきっかけになることだと思います。1つの会社に縛られ続ける必要がなくなるので、成長産業にも人が移ってくるでしょう。そうすると、日本の労働生産性も上がると思います。
- 中尾:1つは効率化が進むことだと思います。副業をされる方は時間管理がしっかりしているので、そういった方が増えると業務効率もしっかり考えるようになります。もう1つはイノベーションが起こることです。他社で得た経験を自社に還元し、社内のインフルエンサーとなることでイノベーションも起きやすくなるでしょう。
- 岡:企業の働き方が多様化してくると思います。今は「企業」という枠組みがありますが、今後なくなるのでは。やりたいことにすぐ挑戦できる世の中になると思います。
- 岸:本業へのシナジーがあると思います。副業をやっていると「成果を出そう」という頭になるので。企業側も働きがいを与えないとだめになると思います。
竹下:副業解禁は企業の成長にとって必要ですか?
- 中尾:副業は力試しのような側面もあります。20年くらい会社に勤めると、自分にどれだけ外で通用する力があるのか見えなくなることもあると思います。副業で実力を試し、腕を磨いてまた戻ってきてくれれば、企業の力になると思います。
- 石田:違う環境で働いた経験を持ってきてくれるのは大きいですね。当社の例で言うと、エンジニアの社員が大学の講師をしたり、本を書いたりしているんです。そうすると本人は専門性を常に高め続けてくれますし、社内にはないネットワークもできて、専門領域も広がります。社員がより活躍できるようになって戻ってくることは、本人はもちろん会社にとっても良いことだと思います。
竹下:では、逆に副業のデメリットは何でしょうか?
- 石田:会社として感じた大きなデメリットは今のところないですね。強いて言えば、当社の場合ビジネスの幅が広く、許可の検討に工数がかかることくらいです。副業が競業にあたると判断された場合、会社としては許容できないので、間違いがないようにチェックしています。
- 中尾:社員の健康管理は心配です。当社では問題は起きていませんが、一般的には副業を始めたばかりの頃は特に、副業にのめり込んでしまい体調を崩しやすいと聞きます。また「一律のルールで多様な働き方に対応できるのか?」など、人事部としても対応が求められます。なので、副業したい方は早めに申請してほしいですね。その方が親身になって相談に乗れますので。
竹下:最後に、副業を始めるためのアドバイスを教えてください。
- 岡:「家に帰ってテレビを見る」くらいの気持ちでやるのが良いと思います。僕は最初、副業というより腕試しという意識で始めたので。気負いすぎた割に報酬が少なく辞めてしまう方もいるので、「今日帰って1個やってみようかな?」くらいの気持ちで。
- 岸:心身のバランスを取ることも大事です。私は夜中まで副業をしていて、心身のバランスを崩した時期がありました。本業に影響はありませんでしたが、ランニングや瞑想など、バランスをとる習慣をつけておくと良いです。あとは、会社の中で親しい同僚や上司と会話をオープンにしておくことです。最初から副業のことを話していた方が始めるときの後ろめたさがなくなり、何かとうまくいきます。
※ ※ ※
これまで、副業は「バレたらまずいもの」という風潮がありましたが、今はむしろ推奨・解禁する企業も増えています。また、その種類もかなり多様化しており、自分に合った副業を見つけやすくなってきているのではないでしょうか。
まずは好きなことや得意なことから、少しずつ副業を始めてみるのも良いかもしれませんね。
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