さまざまな角度からDevRelの歴史を紐解いてみよう

カンファレンスの歴史
先ほどから何度か出しているDevRelConは、ロンドン発祥のDevRelに関するカンファレンスです。最初に開催されたのは「DevRelCon London 2015」で、100人弱くらいの規模で行われました。その後、サンフランシスコや東京、中国(北京と蘇州)で行われています。ロンドンは約300〜400人くらいの規模にまで成長し(DevRelCon London 2019)、大規模なカンファレンスとなっています。前述の通り東京は筆者が2017年より継続して主催していますが、約200人くらいの規模となっています。
昨今はコロナ禍もありオンライン開催となっていますが、これまで欠かさずに参加してきただけに、またオフラインで再開されるのが待ち遠しいカンファレンスです。
同じようにDevRelをメインテーマとしたカンファレンスはいくつかあります。まずシアトルやシンガポールを拠点に実施している「DevRel Summit」があります。DevRelConと比べると規模は少し小さくなりますが、ディスカッションが多くコミュニケーションを重視した形式で50名近くが参加するカンファレンスです。筆者はシンガポールで開催された際に2回参加しましたが、欧州や米国で開催されるものと違った参加者が集まるので面白いです。
これも筆者は参加したことはないのですが、「Developer Relations Conference」というカンファレンスがあります。こちらは歴史が長く、2004年または2005年から開催されているようですが(Webページ上から2008年までは遡れます)、最近(少なくとも2016年)までDeveloper Relations ConferenceでDevRelという単語は使われていませんでした。参加したことがないので内容は分かりませんが、チケットが30万円超の高額カンファレンスであり、スピーカーが豪華なようです(先述のガイ=カワサキ氏も登壇されています)。
そのほかにも「Future Developer Summit」というカンファレンスがあります。最近ではオンラインで実施されていますが、以前は招待制が取られていました。詳細な条件は分かりませんが、限られた人たちだけが参加するカンファレンスでした。なお、カンファレンス終了後のセッションは申し込めば誰でも閲覧できるようです。
また、インドで1度だけ開催された「DevRel Confs」というカンファレンスもあります。こちらも筆者は参加していないので具体的なことは分かりませんが、筆者が運営しているDevRel Meetup in Bangaloreを一緒に運営してくれているAravind氏が運営に関わっていたと聞いています。
最後に、ロシアでも「DevRel Conf」というカンファレンスが行われています。過去に4〜5回ほど行われていたようですが、2018年を最後に開催されていません。多くのカンファレンスと同様に、コロナ禍になって継続が難しくなってしまっているようです。
筆者が開催しているカンファレンス
筆者はDevRelのカンファレンスを複数開催していますが、その1つが「DevRelCon Tokyo」シリーズです。オリジナルのDevRelCon主催企業であるHoopy社とフランチャイズ契約を結び、日本で開催しているカンファレンスです。元々DevRelCon LondonやSan Franciscoの雰囲気が好きで、日本でも海外カンファレンスの雰囲気を感じてもらいたいと考えて設計しています。そのためすべて英語セッションで行っており、日本人登壇者でも英語で講演します。
DevRelCon Tokyoとは異なり、日本語でセッションを行っているのが「DevRel/Japan CONFERENCE」です。これは筆者が主催するコミュニティ「DevRel Meetup in Tokyo」で開催しているカンファレンスです。
の様子最後に「DevRel/Asia」を紹介しましょう。これはアジア各国(8カ国)から集った主催者と一緒に同日開催したオンラインカンファレンスで、2020年に行われました。日本、韓国、中国(本土・香港)、インドネシア、ベトナム、シンガポールなどの主催者がそれぞれスピーカーを募って開催しました。一般的にカンファレンスを同日開催するメリットはあまりないのですが、オンラインであったり、開催都市が国レベルで離れているとプレゼンスの効果は大きくなります。
DevRelの広まり
日本で誰もDevRelを知らなかった段階から比べると、コミュニティやカンファレンスなどのイベントを通して徐々に名前が知られるようになってきています。SaaSなどを提供する企業でエバンジェリストを雇用するケースが出てきていたり、DevRelの部署を立ち上げたという話も聞かれるようになっています。外資系企業では元々シリコンバレーを中心にDevRelが盛んなので、ここでは内資系企業を中心にDevRelに取り組んでいる企業を紹介します。
・mixi
mixiでは2018年にDevRelチームを立ち上げています。主に技術コミュニティへの貢献やブログ記事の執筆、社員の社外活動への貢献などがメイントピックとして挙げられています。
「2021年 mixi developers 振り返り(-ω☆)キラリ | by mixi DevRel Team | mixi developers」
・Yahoo! JAPAN
Yahoo! JAPANでは2018年よりCTO直下のDevRel組織を立ち上げています。「Yahoo! JAPAN Tech Conference」の開催やハッカソン「Hack Day」の実施、そして「Yahoo! Tech Blog」も有名です。
「ヤフーの「DevRel」って何する人? 社内外クリエイターの熱量をつなぐ取り組みの全貌 | SELECK」
・kintone(サイボウズ)
kintoneでは社内にエバンジェリストがおり、パートナー企業にもエバンジェリストを任命する制度があります。「kintone Café」というコミュニティがあり、世界に41支部が存在するとのことです。
「engineer-marketing_introduction(Devrel)2021v8」
・さくらインターネット
さくらインターネットではエバンジェリストの横田氏が執行役員になっていることからも、DevRelが経営としても重要課題であることを認識されていることが分かります。専門部署もあり、コミュニティやイベント開催に積極的です。
「DevRelのための経営、経営のためのDevRel - さくマガ」
・Forkwell
Forkwellは元々開発者イベントへの協賛を積極的に行っていましたが、コロナ禍になってからは自社主催のイベントを強化しています。そして2021年秋にはDevRelの部署として独立しています。
「Forkwellの事業責任者を離れ、DevRelチームの立ち上げに尽力します|akira.akagawa|note」
おわりに
DevRelという単語は2014年あたりから使われるようになっていますが、開発者向けの啓蒙活動はずっと昔から取り組まれてきました。そのため、多くの人たちにとって、すでに関わったものであったり、見知った存在だったりします。筆者がDevRelを知らない方と話して、そこではじめて自分のやっていることがDevRelだったのかと気付くケースがよくあります。何らかのサービスやソフトウェアが好きで、それを広めようと活動されている方はDevRelの一端を担っていると言えるでしょう。
Microsoftのちょまどさんは、仕事を「推しごと」と表現しています。まさに好きなものを推すことがDevRelであり、歴史的に見てもずっとブレずに行われています。
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