連載 [第7回] :
  Gen AI Times

【誰も見たことのない新しい時代】AI×エンタメのいまと未来

2024年6月20日(木)
大川 美里細山田 隼人 (ほっそん)
本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。

はじめに

本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している6名で運営しています。注目されている生成AIに関するニュースを収集し、個性豊かなメンバーによる記事の深堀りから、半歩先の未来の想像を共有していきます。この記事を通して、ぜひ皆さまも各々の半歩先の未来を想像しながら、色々な価値観を楽しんでいただけると嬉しいです。

「GPT-4o」の発表から約1ヶ月。様々な機能が無料版でも利用できるようになりました。また、OoenAIと大手メディアとの連携のニュースも多く報じられるようになりました。

この流れは、今後の生成AI普及と活用の可能性にどのような影響をもたらすのでしょうか?

GPTsとOmni(GPT-4o)が無料ユーザーでも利用可能に

●2024年5月30日 Impress Watch
ChatGPT、無料ユーザーも「GPT-4o」を利用可能に

2024年5月30日にOpenAIが発表した新しいAIモデル「GPT-4o」(Omni)により、ChatGPTの利用範囲がさらに広がりました。これまでは有料ユーザーのみが利用できたGPTsやOmni機能ですが、無料ユーザーでも一定の範囲で使えるようになりました。

無料ユーザーが利用可能になった機能:
・GPT-4o(Omni)の利用: 高度な言語処理能力と画像認識機能を備えた最新モデル。
 ただし回数制限あり
・GPTs: カスタマイズ可能なAIモデルを検索して実行できるが作成はできない
・Webブラウジング: GPTがWeb上の情報を参照して回答できる
・データ分析: ファイルのアップロードと分析が可能
・画像解析: アップロードした画像を認識して説明できる

無料ユーザーの利用制限:
無料ユーザーでもGPTsやOmniが使えるようになりましたが、使用状況に応じて送信できるメッセージ数に制限があります。制限に達すると、ChatGPTは自動的にGPT-3.5に切り替わります。

有料のChatGPT Plusプランでは、これらの機能をより頻繁に利用できます。無料ユーザーにとっては、AIの機能を手軽に体験できる良い機会となりそうです。

GPTsやOmniの登場により、ChatGPTの活用範囲がますます広がっています。無料ユーザーでも一定の範囲で最新のAI技術に触れられるようになり、AIに対する理解が深まることが期待されます。

OpenAIと複数の主要なメディア企業とライセンス契約が進む

●2024年5月29日 VOXMEDIA
Vox Media and OpenAI Form Strategic Content and Product Partnership

●2024年5月1日 BRIDGE
OpenAI、Financial Timesと提携——「ChatGPT」の回答にニュース記事の引用が可能に

●2024年5月17日 ITmedia NEWS
OpenAI、RedditのデータをAI学習に利用する契約締結

●2024年5月23日 ITmedia NEWS
OpenAI、Wall Street Journalなどを擁するNews Corpともライセンス契約

●2024年5月30日 ITmedia NEWS
OpenAI、老舗メディアThe AtlanticおよびThe Vergeの親会社Vox Mediaともライセンス契約

これらの契約により、OpenAIはリアルタイムで信頼性の高いニュース記事やアーカイブされたコンテンツにアクセスできるようになり、ChatGPTの応答の質を向上させることが期待されています。

2024年5月16日に発表された世界最大の掲示板型SNS「Reddit」との提携発表後、Redditの株価は10%以上急騰しました。

●2024年5月17日 AP NEWS
OpenAI, Reddit teaming in deal that will bring Reddit’s content to ChatGPT

OpenAIとコンテンツホルダーとのライセンス契約は進展しており、コンテンツの透明性や権利者への配慮、AIへのコンテンツ利用と対価のバランスについては引き続き議論が必要です。

AIの進歩に対する権利者の保護や制度については、前回の記事で詳しく取り上げています。
【革新と規制】生成AIの未来はユートピアかディストピアか、その答えは?

Open AIと大手メディアとの協力関係が進む中、一般には公開されていないAIモデル「Sora」を使用して制作された短編映画がトライベッカ・フェスティバルで公開されるというニュースがありました。

今回の記事ではこのトピックにスポットを当て、創作物と生成AIについて掘り下げていきたいと思います。

トライベッカ・フェスティバルで、「Sora」を使用して生成された短編映画5本が公開

●2024年5月31日 TRIBECA
TRIBECA FESTIVAL AND OPENAI ANNOUNCE ‘SORA SHORTS’

OpenAIとメディア企業とのビジネス契約が増加する中、トライベッカフェスティバルでSoraを使った短編映画が公開されることが発表されました。現在Soraは一般公開されておらず、“選ばれた映画製作者”がSoraを使用して映画を製作したということを意味しています。

映画は2024年6月15日に上映され、その後ディスカッションセッションが行われることになっています。このディスカッションでどのように評価されるのか注目が集まります。

ここで、現在「生成AIを活用した映像」がどのように評価されているのか、いくつか事例を見てみましょう。

議論されている観点を表形式でまとめてみました。

観点 好評 悪評 筆者の所感
リアルさ - 素直に簡単には見分けが付かないと感じる
登場人物の一貫性 - 違う登場人物が何人も出てくる動画なのかと思った
人間味や感情の深み - 英語のサンプルが多く情感までは判断できない。日本語で観てみたい
ディテールの表現 - 神は細部に宿ると言いますね
コスト削減 - 素人目にはさほど問題のない動画が短時間で生成できるのだから、そこはありがたく利益を享受して良いと思う

その他、生成できる動画の時間がまだまだ短い(例:Soraは最長1分/KLINGは最長2分/Dream Machineは最長5秒)という点も課題です。よろしければ本記事下部の「X ポスト」「B!ブックマーク」から、ぜひみなさんの所感もお聞かせください!

AIを用いたコンテンツ制作はコスト削減の面で大きなメリットがあるものの、創造性や独自性の評価については慎重に議論する必要があります。AIによって生成された作品が、人間の手によるものと比べてどの程度の価値を持つのかを判断するのは容易ではありません。しかし、AIの活用が新たな表現の可能性を切り拓くことも事実です。

こうした中、教育の現場でもAIの活用が模索されています。特に、美術の分野ではAIを用いることで子どもたちの創造性を刺激し、個性や関心を引き出す試みが行われています。

群馬県教育委員会、図工と美術に生成AI活用

●2024年6月3日 読売新聞オンライン
指導難しい図工と美術に生成AI活用、子どもと対話重ね個性や関心引き出す…群馬県教委が導入へ

イラスト:Midjourneyで生成

群馬県教育委員会は、公立小中学校の図画工作と美術の授業に対話型生成AI(人工知能)を導入する計画を発表しました。2024年9月の2学期から約10校で試験的に開始される予定です。

小学校の図画工作や中学校の美術の授業は教員数が少ない上に専門性が高く、指導が難しいとされています。この取り組みでは、子どもたちが作品を作る際にAIが「なぜそう思ったの?」「何が好きなの?」といった質問を投げかけ、子どもたちが自ら考え、答えを出すように促すと共に、教員が主観に基づいた指導を避け適切な指導方法を学ぶことが期待されています。

SNSなどでの反応を見ていくと、生成AIを活用した創作物に対する意見は「AIを使っているだけ」というネガティブな見方と、創造性や革新性を評価するポジティブな見方に分かれているようです。

群馬県教育委員会の図工や美術の授業におけるAIの活用は、子どもたちに新たな選択肢や可能性を提示し、自由な発想を促すことができる可能性があるという点で注目に値します。

皆さんは、生成AIが描くコンテンツにどのような未来を想像するでしょうか?

【今回の深掘り】
生成AIの登場で創作の選択肢が広がり、より多くの人々が自らの創造性を発揮できる機会が増えています。かつては特別な才能や技術を持つ一部の人々にしかアクセスできなかった表現の世界に、今や誰もが足を踏み入れられるようになりました。これは創作の民主化とも言えるでしょう。

例えば、色鉛筆の発明により、かつては墨と筆でしか描けなかった絵を、今では誰もが色とりどりの鉛筆を使って描けるようになりました。生成AIも同様に、人間の「表現したい」という欲求を、より手軽に目に見える形にする新たな手段の1つと捉えることができます。

生成AIの利用は「人間の可能性が無限大であり、誰でも変わることができる」ことを示唆しているとさえ感じることがあります。わたしたちはこの新しい時代に生きることで、自分の中の「なにか」から解放され「自分らしさ」にもう一度火をつける機会を得られる…そのように考えています。

同時に、生成AIの利用を倫理や人権、政治利用、経済利用などをエクイティ(公平性)の観点から深く考慮することも求められています。これらの課題に真剣に取り組むことは、我々の社会をより公正で包括的なものにするための重要なステップです。このことは、ひいては多様性、公平性、包摂性(DE&I)について深く考えることになるのではないでしょうか。

おわりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今後も、生成AIに関する最新情報を紹介するとともに、その深掘りを発信していきます。次回もお楽しみに!

※本ニュースは「IKIGAI lab.」が配信しているコンテンツです。
 IKIGAI lab.はこちらをご覧ください。

・生成AI関連 スタートアップ企業勤務
・生成AIで書いた脚本で舞台をやりたいと思っている兼業女優。本業はディレクター
「生成AI-EXPO in 犬山」「生成AI-EXPO in 東海」登壇
著者
細山田 隼人 (ほっそん)
日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社(日本ペイントグループ)に所属
・経営企画/戦略策定に従事
・社内生成AI推進 プロジェクトマネージャー
・社内エンゲージメント有志団EFE(Engagement for Employees)コミュニティプロデューサー

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