APIマネージメントのKongがニューヨークで開催したテクニカルカンファレンス「Kong API Summit 2025」で、CEO兼共同創業者であるAugusto Marietti氏にインタビューを行った。約20分という限られた時間の中で「Kongは線路を作る仕事をしている」という比喩を使って、AIの時代にも変わらないミッションステートメントを強調した内容となった。
会社名がKongに変わった直後に東京でインタビューしたのは2017年でした。その頃はAPI Gatewayだけの会社でまだ社員数が20名という状況でしたが、プロダクトのポートフォリオも増えましたね。その当時はAPI Gatewayの管理者数で課金するという画期的なモデルでしたが、それも変わっていると聞いています。現在の状況を教えてください。
●参考:APIマネージメントのKong、Mashapeからブランディングを一新して成長をアピール
Marietti:あれから社員数も増えて今では800名程度になっています。ヨーロッパとアメリカ、それにインドと中国にも拠点があります。我々がAPI Gatewayだけの会社ではなく、APIを中心にしたエンタープライズ向けのミドルウェアの会社であると認識してもらった方がいいですね。そして今回のカンファレンスでは、エージェンティックAIを前面に押し出して訴求しました。それはKongが生成AIではないものをエンタープライズ向けに提案しているということを知ってもらいたいからです。
まだ日本の企業、特にエンタープライズは生成AIをどのように業務に使うのかを模索している段階だと思います。その中で敢えて生成AIではなくエージェンティックAIと訴求しているのはどうしてですか?
Marietti:生成AIによるチャットを使っているのは基本的にコンシューマーですよね。コンシューマー向けのチャットであれば内容が毎回異なっても受け入れられると思います。しかし我々は最初からエンタープライズに対するソリューションを提供することを目指してきたわけです。コンシューマー向けのサービスであればそれでも使い物になるかもしれませんが、エンタープライズでAIを使う場合にはそうは行かないと思います。常にDeterministic(決定論的)なシステム、つまり必ず結果が保証されるべきだと考えています。
KongはAPI Gatewayからスタートして、今でもネットワークをベースにシステムを考えています。つまり社会に例えると我々は列車が走る線路を敷くことが目的です。これは比喩としては良くできていると考えていますが、コンピュート(演算)でもなくストレージでもなく、あくまでもシステムが接続されるデータの経路に対してより良いシステムを提供することを目指しているわけです。
多くのシステムベンダーが出発点からいろいろな領域にプロダクトを拡張しています。例えばGoogleであれば、出発点はBigQueryでしたが、今は多くのソリューションを提供しています。AWSであればS3が出発点でしょう。でもそこからさまざまなプロダクトを提供しています。我々はAPI Gatewayから出発して、今でもネットワークの中でソリューションの提供を目指していることは変わりません。その中でエージェンティックAIを使ってネットワークの領域でソリューションを提供しています。それが今回のキーとなるメッセージですね。
電車好きな日本人には訴求する比喩ですね。我々は正確にきちんと仕事をする列車のシステムが好きですから。アメリカ人にはウケないかもしれませんね。ニューヨークの地下鉄は別かな?(笑)
Marietti:アメリカはちょっと違うと思いますが、イタリアやヨーロッパの列車のシステムは優れていると思いますよ。でも日本のシステムには敵いませんけどね(笑)。
今回はKafkaのプロキシーとして動作するEvent Gatewayも強く訴求していましたが、それについては? 2025年の夏に北京で開催されたASFのカンファレンスに参加した時は、中国ではJavaで書かれたKafkaはすでにレガシーな扱いでした。RabbitMQやRustで書かれたRobustMQと言った新興のオープンソースが開発され、利用も進んでいるようです。それらのKafkaの後継プロダクトに対する対応は?
Marietti:Kafkaのプロキシーであることは確かですが、KongはKafkaだけを対象としているわけではなく、Red PandaやRabbitMQなどもKafka互換であれば利用できるようにしたいと思っています。KafkaはKongにとってはあくまでもメッセージ交換のためのシステムで、それをミドルウェアとして使いやすくしたいというのが意図ですから。
最後にこれからやりたいことは何ですか?
Marietti:日本では未だにKongがAPI Gatewayの会社だと思われており、それを払拭しないといけないと思っています。先ほど列車のシステムの線路を作るという例えをしましたが、その仕事の中でエージェンティックAIを活用してより良いシステムを作っていることを知ってもらうことが大事だと考えています。それにはKafkaのようなシステムについても、我々のソリューションが役に立つことをまず知ってもらうことが必要です。
8年前と同様に真剣にこちらの質問に熱く答えてくれるMarietti氏だったが、特に演算やストレージの領域にビジネスを拡げるのではなく、あくまでもネットワークの領域でAIを活用することが重要だと強調していたことが印象的だった。
補足的な内容となるが、KongのエンジニアJohn Harris氏が行ったセッションから、2枚のスライドを紹介する。AIとAPIの役割について「AIと既存APIを1対1で接続することが最初のステップ」と訴求していた。既存のAPIが固定的な動作であることに対して、AIがMCPを通じて動的に呼び出されるAPIを管理することで生成AIの時代においてもAPIゲートウェイの役割は変わらないという発想だ。
特にオブザーバビリティにおいては、可視化に合わせて課金のためのメータリングが重要だというのもKongらしい訴求内容だったと思われる。
Marietti氏とのインタビューでは語られなかったが、メータリングについては初日のキーノートで大きく訴求されていた。John Harris氏には2025年8月にインタビューを行っているのでそちらも参考にして欲しい。
●参考:API GatewayのKongのプリンシパルエンジニアにインタビュー。Backstageと差別化するScorecardsとは?
2日間の短いカンファレンスであったが、個々のセッションの時間がやや短いことを除けば、満足度の高いカンファレンスだったと言えるのではないか。2026年のKong API Summitにも期待したい。
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