GitHubが毎年開催しているカンファレンス、GitHub Universe 2025が今年もサンフランシスコ市内で2025年10月28日と29日の2日間にわたって開催された。このカンファレンスの直前にCEOのThomas Dohmke氏が年内で辞任することを発表していたため、カンファレンスではCOOのKyle Daigle氏が全体をリードする形となった。
GitHub Universe 2025は2日間のカンファレンスで、初日は新製品や新機能を中心にGitHubの先進性をアピールする内容、そして2日目はデベロッパーコミュニティへの訴求を行うというコントラストのある構成となっていたのは例年通りだ。2023年の初日のキーノートの最後でSatya Nadella氏がサプライズで登壇した時は、参加者がどよめくほどのインパクトがあったが、2年後の今年はもはやNadella氏の登壇はサプライズにもならないほどにGitHubとMicrosoftの一体感が強調されていた。GitHubの語り部であったCEOの不在が普通に受け止められることに、筆者は逆の意味で驚きを感じた。
初日はKyle Daigle氏がGitHubの最も大きな売り物となったCopilotについてさまざまなゲストを招いて解説を行った。そして2日目はオープンソースをテーマにGitHubがオープンソースをホストすることで世界最大のリポジトリとなったことを中心にして、さまざまな角度からGitHubによるデベロッパー支援の利点を解説する形で進行した。
初日の目玉はGitHub CopilotではなくAgent HQだ。CopilotはコーディングアシスタントとしてGitHubに実装されているだけではなく、さまざまなデベロッパー向けのワークフローで実装されて効果を挙げている。またMicrosoftのブラウザにも搭載されることで、GitHub&Microsoftによる知的なアシスタントとしてのブランディングを確立しつつあると言える。今年はエージェンティックAIの隆興に合わせて、エージェントの本拠地としてGitHubを位置付けるというメッセージだ。
Agent HQについては数多くの新機能を操作方法も交えて紹介しているが、要点はGitHubを離れることなくエージェントにタスクを割り振るという発想だろう。ソースコードの生成からプルリクエストの作成、レビューのアシスタントまでCopilotがデベロッパーに与えた価値は高いものがあるが、これまではOpenAIのモデルにいわばボルトオンされていた状況だったものをAgent HQでさまざまなAIモデルを使い分けることが可能になったことが大きな違いと言える。
またエージェントの管理UIであるMission Controls、コマンドラインからCopilotを使えるようになったこと、セルフホストでのCopilot、エンタープライズ向けの機能などが紹介された。詳細は以下のGitHubのブログを参照して欲しい。
●参考:Introducing Agent HQ: Any agent, any way you work
この後はAnthropicとOpenAIからゲストを登壇させて、エコシステムによる選択が可能になったことを訴求した。
このスライドではCopilotで利用できるようになった生成AIのモデルを紹介。Anthropic、OpenAI、Google、Xなどの企業が開発するモデルを選択できるようになったことを説明した。
MicrosoftのエンジニアによるVisual Studio CodeからのCopilotのデモなどを経て、Daigle氏の最後のメッセージは「AIとの共同作業による新しい時代が始まる」ことだった。
この後はGitHubのエンジニアとMicrosoftのCEO、Satya Nadella氏とのいわゆる暖炉を囲んだチャットという型のプレゼンテーションに移った。
全体で1時間に及ぶ内容で人の入れ替わりが激しく、英語に慣れていないと難しい内容となったが、以下の動画では英語字幕をオンにすることで補助にはなるだろう。
●初日のキーノートセッションの動画:GitHub Universe 2025 opening keynote
2日目のキーノートのテーマはオープンソースだ。キーノートのタイトルは「Dream it in the morning, build it in the afternoon: Collapsing the distance from idea to impact」、つまりアイデアを思い付いたら即座にプログラムを実装するという流れがGitHubとオープンソースによって可能になったわけだが、そのことをさまざまなゲストを登壇させることで見せるという内容だ。
MC役として登壇し、最初にファービーを使ったデモをステージ上で行ったのはGitHubのデベロッパーリレーションのVPであるMartin Woodward氏だ。
Woodward氏のデモはファービーを制御する新しいPythonのプログラムをGitHub上で開発し、実装したというもので、これも「朝思い付いて午後には実装されている」というテーマを実現したものと言える。
ここではインドのOpen Healthcare Networkという組織によるプレゼンテーションを紹介したい。
Open Healthcare Networkは2019年末から始まった新型コロナウィルスによるパンデミックを契機に、インドの地方の医療施設に向けてオープンソースコミュニティによって医療関係システムを開発するという試みを行っている組織であり、そのエンジニアがプレゼンテーションを行ったものだ。
すでに1000人以上のコントリビュータが開発に関わり、1400ヶ所の医療施設で実装されているという。
実際にGitHub上で開発されているプルリクエストを見せながら解説を行い、オープンソースとGitHubが可能にしたコミュニティによるソフトウェア開発のパワーを見せた形になった。デモでは病院におけるベッドの空きを管理できる機能が紹介された。
筆者がこのプレゼンテーションを見て感じたのは、オープンソースによるインパクトよりもそれぞれの国が抱える状況の違いだ。日本ではオフコンの時代から多くの医療関係のシステムが開発され販売、保守されている。医療を専業とするシステム会社においては無償でソフトウェアが提供されることに危機感を覚えるだろう。しかしインドにおいては地方の病院にそのようなビジネスが展開される状況ではないという前提であれば、このようなコミュニティ開発と実装が社会的に可能となるだろう。
オープンソースは思い付いたアイデアを実装するには素晴らしい仕組みだが、バグ修正や脆弱性に対する改善などの保証を誰がやるのか? 持続できるのか? については多くの実験と失敗が繰り返されている。オープンソースのスポンサーとしてのGitHubは確かに素晴らしい仕事をしているが、オープンソースコミュニティにおいては明るい一面だけではないことを意識して欲しいと常に思う。
2日目のキーノートの動画は以下を参照して欲しい。
●2日目のキーノートセッションの動画:Dream it in the morning, build it in the afternoon: Collapsing the distance from idea to impact
