図解からユースケース抽出する!
システム境界の決定
「3. 編集」の処理の最後の処理として、「3.4 境界」を行い、業務鳥瞰図上にシステム境界を設定する。システム境界とはソフトウェア化するシステムの範囲である。記述者と分析者で、業務のどの部分をシステム化するかを業務鳥瞰図を見ながら決めるわけである。
SBVA法では、システム境界は必ず業務鳥瞰図上の動詞要素または動詞要素群の上に設定する。この境界上の動詞がユースケースの候補となる。また、境界上の動詞に主語としてつながっているシステム境界の外側の名詞要素がアクターの候補となる。
システム境界を設定するには、まず「電子化」したい名詞や「システムによって自動化」したい名詞を選ぶ。その後、これらの要素の周囲にある動詞の上を通る境界線を引く。今回の例の成績処理システムでは、このシステムの目的をくんで「成績表」「成績」「成績原簿」の周囲にシステム境界を設定することを決め、動詞「作成する」「判定する」「記入する」の上を通る境界を設定した。
SBVA法では、システム境界の決定を分析者と記述者の共同作業として行う。共に業務鳥瞰図をにらみながら、どこをシステム化するのか、議論をするわけである。この作業によって、システムを実際に使うことになる記述者自身が強くユースケースの決定に関ることができる。
ユースケース図の構成
分析作業の最後として「5. 構成」を行う。システム境界を設定した業務鳥瞰図からアクターとユースケースを抽出する作業である。
まず成績処理システムのユースケースを抽出する。システム境界上にある動詞のうち、DとJについては主語となる名詞要素がシステム境界の内側に位置しているため、ユースケースとはならない。残りのC、E、F、G、H、Iの5つがユースケースとなる。次に成績処理システムのアクターを抽出する。システム境界上にある動詞の主語となる名詞のうち、境界の外側にあるものはAの名詞要素群とBの名詞要素群の2つである。
これでアクターとユースケースを抽出できたので、最後にこれらに適切な名前をつける。UMLのユースケース図におけるアクターは、システムを利用する時の役割、ユースケースはシステムの使われ方である、という定義に従って命名する。最終的には図3のようなユースケース図を構成する。ユースケース図上のアルファベットは、どの要素からどのアクター・ユースケースを抽出したかを示しており、業務鳥瞰図上のアルファベットに対応している。
以上、前回と今回に渡って、SBVA法による分析のプロセスについて述べた。業務シナリオの記述、図解、編集、ユースケース図の構成、と手間がかかっているように思われるかもしれない。しかし、各作業においては決して難しいことをしているわけではないことを理解していただけただろうか。ぜひとも実践してSBVA法による効果を実感していただきたい。
次回はこれまでのまとめと周辺技術、将来展望について述べる。