モデリングは世界語!

2008年5月8日(木)
竹政 昭利

より円滑なコミュニケーションのために

 UMLモデリングを導入し、伝えたいことをビジュアルに表現することで、開発関係者のコミュニケーションを円滑にできることは、前述した通りです。

 これは、日本側とオフショア側とのコミュニケーションについても言えることです。日本側とオフショア側では、言葉や文化の差があり、コミュニケーションを妨げていますが、UMLなどグローバルスタンダードの表記法を用いて作成したモデルを活用することで、コミュニケーションを正確かつスムーズに行うことができます。

 現在、オフショア開発では実装など、下流工程が主な対象となっています。しかしここでUMLモデルを使用することで、分析、設計といったより上流工程のコミュニケーションも可能になり、オフショア開発の効果がさらに高まります。

 その効果の高さには多くの企業が着目しており、アンケート結果においても、発注側(日本側)の58%が、「現在または過去にオフショア開発においてUMLを使用している」と回答しています。

UMLモデルの記述力の高さ

 オフショア開発において、UMLモデルを使用することが、どのように役に立つのか、ちょっとした例を見ていきましょう。図3は、日本語の文章と、それと同様のものを表現したUMLのモデルです。

 まず日本文だけを読んでみてください。日本人(もちろん日本語に自信のある)が読んでも、読み流すだけに終わってしまい内容を正確に理解するまでには、ちょっと時間がかかるのではないでしょうか?

 また、日本語も含め自然言語はあいまいなところがあります。あいまいなところは読み手が勝手に解釈をしてしまい。その結果、読み手が変わると180度異なる解釈がされてしまう可能性すらあります。

 では次にUMLモデルを見てください。たとえ、UMLを知らないとしても、UMLのモデルを見れば何がどうであるか、理路整然としているため一目で分かるのではないでしょうか。UMLは表記法が明確に定義されているのでUMLを知っている者同士ならば、詳細な部分も含め誤解が生じる余地がありません。

 例えば、営業職が持っている売上目標は、部署の売上目標なのか、個人の売上目標なのか、日本文でははっきり言っていませんが、UMLモデルを見ると、個人の売上目標であることが明らかです。

 モデルのほうは、日本語が登場すると言っても単語レベルです。UMLを知っていれば、言語や文化の壁におくすること無くコミュニケーションがはかれるのではないでしょうか。

 このようにUMLモデリングは、言葉や文化の壁が問題になるオフショア開発においてこそ、有効な開発の方法となります。

 次回は、オフショア開発の現状の課題と、モデリングを導入することによって、それがどのように改善されるかの期待についてお話します。

株式会社オージス総研
1985年株式会社CSK入社。人工知能システムの開発に従事。1994年株式会社オージス総研入社後はオブジェクト指向システムの開発を中心に多数のプロジェクトに参画。また開発者向けトレーニング、セミナの講師を行う傍ら、雑誌、書籍の執筆を行う。2003年UMTP設立後は、UMLモデリング普及活動も実施。主な著書:「はじめて学ぶUML 第2版」ナツメ社 ほか

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