流行色はなぜ生まれるか
色に対する感じ方が変わるきっかけ
ところで、「流行」とは流れ行くと書き、常に変化していくことを表します。人も社会も常に変化し続けるものであり、同じ状況は二度と表れることはありません。人も社会も変化しながら、互いに共感しながら変化していく。だから「流行」が生まれるのです。
散りゆく桜を愛(め)でる感性を持つ日本人、「一期一会」という言葉を大切にする日本の人々は、古代から変化していくことに「美」を見いだそうとしてきました。このような感性が私たちの心の奥底にあり、前述のような「流行」に敏感な市場を作り上げているのかもしれません。
80年代半ばに、自動車市場で白が爆発的に流行したきっかけは、スーパーホワイトでした。このようにある色が注目される背景には必ず、人々の気持ちを動かす何らかのきっかけがあります。図2は流行色が生まれるきっかけについて説明したものです。
例えば、静かな湖面に石を投げると、波紋が広がっていき、やがて消える。この波紋を流行色の波及の波と例えると、現代社会では常にどこかで石が投げられ、波紋が起こり、波及し、干渉し合いながら流れていく。
通常、「変化」はじわじわと起こります。多くの人が「変わった」と気づいた時は、かなり大きな変化を遂げた後です。しかし、大きな事件によって激しい「変節点」を迎えることもあります。
2001年9月11日のテロは、世界中を震撼(しんかん)させた事件として記憶に新しいと思います。あの事件の直後、ファッション市場の色は変わりました。
2001年の秋から冬にかけて、ファッション業界では「ミリタリー」調のデザインを販売する予定でしたが、世界中で放映されたテロの現場を見た後に、ミリタリールックを売る方も買う方も「見たくない」という気持ちになり、予定していた販売を中止しました。
色では「黒」を中心とした展開が計画されていましたが、悲しみを増幅させる「黒色」は極力避け、人々の気持ちを和らげるための優しい形、柔らかい色合いの衣服が用意されました。
「流行色」変化の周期
「流行の周期」は市場経済から考えても、人間研究という点から考えても大変興味深いテーマで、古今東西の学者によって研究されています。結論として「流行色に絶対的な周期はない」という結果が報告されていると言ってよいと思います。
特に、不安要素が大きく、変化の激しい現代社会では、いつ何が起こってもおかしくない状態です。このことは「流行色」を予測することを仕事としている筆者にとっては、非常に頭の痛い問題ですが、逆に言えば腕の見せ所でもあります。
「流行色」は、やがて流行色ではなくなる時があります。商品開発に携わる人なら誰でも、流行の周期を考えます。つまり、流行の変節点を見極めるのです。
そこにはいろいろな条件がからんできて、その商品のその人気はいったいいつから始まったのか、それは誰によって伝えられたのか、その色を持っている人はどのくらいいるのか、今その色を最も好む人たちはどのような人たちなのかなど、考えなければならない要素はたくさんあります。
ただひとつはっきり言えることは、人はやがてその状況(色)に「飽きる」ということです。その「飽きる」という現象が起こるとしたらそれはいつか、それはどのような形でやってくるかを読み解くことが筆者の仕事です。つまり、流行色の発生から「飽きられる」までをひとつの周期と見なし、その周期を見極めることです。
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