流行色はなぜ生まれるか

2008年12月3日(水)
大澤 かほる

流行仕掛け人と波及の仕方

 図3は、流行のきっかけを作る人々と終わらせる人々の関係の一例を示したものです。

 流行色は媒体を通して波及していきます。媒体はテレビ、映画、最近ではインターネットが流行の波及に大きな役割を果たしています。どの媒体であっても最終的には「人」自身がその価値の是非を決定することには変わりはありません。つまり、「人」こそが「流行色」波及の最強の媒体であり、「始まり」を察知するためには「始める人」を追い続ける必要があります。

 「流行」の火付け役となる可能性を秘めている人としては、まず「若年層」が挙げられます。若いということは「変化」が激しいということであり、言い換えれば「変化」をいつも求めている人たちです。

 富裕層も「最先端の何か」をつかんでいる人たちとして注目します。この人たちの周りには「最も良い素材」「最も美しい発色」など、たくさんの最上級がそろっています。今は希少価値のあるものがやがて技術力などによって、一般に普及していくことがあります。このような流行の流れはいわば高いところから低いところへ流れていく流れです。

 この流れとは逆に、低いところから高いところへ流れることもある。例えば、ストリートファッションがモードファッションに取り入れられるといった流れです。

 もうひとつ、常にアンテナを張っておかなければならないのが、企業、商業施設など、サービス提供者側の動きです。彼らは「流行」を意識的に仕掛けることがあり、このような人たちを「トレンドセッター」と呼ばれています。

 いずれにしても、小さな点は大きな広がりとなり、希少価値があったものが、ごく一般的なものとなった時、「流行」に最も重要な要素と言える「新鮮さ」が無くなり、流行は終わっていくのです。

流行色予測の手順

 今回の結論に入るに当たって、そもそも「流行色」を予測する仕事がなぜ成り立つのかを説明しなくてはなりません。

 例えば、ある商品を開発するとして、企画段階から発売まで2年かかるとします。今現在、その商品市場で人気がある色が、2年先の市場でも人気があるとは限らないので、2年先の市場を予測する必要が出てきます。そこでターゲットとする消費者の心の変化を考え、今後の市場で注目したい色、形、素材は何かを決め込まなくてはならないのです。

 先行市場の予測では、必ず抑えなければならないポイントが5つあります。

 1つ目は、ターゲットの特性を知ることです。これは最も重要なポイントです。どのような色を好む人たちなのかしっかりと抑えなければなりません。

 2つ目は、先行市場に投入しようとしている商品の普及率はどのくらいかを確認することです。普及率が低い場合は、その商品の機能を端的にイメージさせる色が求められます。普及率が高くなると、より消費者の生活スタイルに寄り添った、消費者の感情を動かす色の設定が求められるようになるからです。

 3つ目は、その市場で今人気のある色を抑え、その人気がいつまで続くかを考えること、つまり、流行色の周期を考えることです。

 4つ目は、今流行している色とは全く反対の要素を持った色が、今どのような現れ方をしているかを抑えることです。流行する事象は1つだけで存在するわけではありません。必ず何かの要素と相対的な位置関係を保っていて、その関係を読み解かなければなりません。

 5つ目は、今市場で求められている色の関係を調べることです。流行色は1色だけで存在することはなく、必ず何らかの色を伴って存在します。それらの色と色との距離、その距離感覚が、人の心にどのようなイメージを作り出しているのかを抑えておく必要があります。

 以上、Webデザイナーの皆さんが、お客さんの目を引きつけるデザインを生み出すための、何かのヒントにしていただければ幸いです。

 次回は、ユーザーの目を引きつけるための色の組み合わせについて紹介します。

財団法人日本ファッション協会
日本有数の温泉地、長野県諏訪市に生まれる。東京造形大学彫刻科を卒業後、求人情報会社で営業を担当。彫刻家の助手をつとめた後、飲料、食料の市場調査会社にて「色のイメージ調査」を担当。広告代理店にて経理を担当後、現職(社)日本流行色協会(現・財団法人ファッション協会流行色情報センター)へ。現在は、カラートレンド情報に関する情報発信、講演、執筆、インターカラー日本代表、カラー戦略策定等のコンサルティング、色彩有識者のネットワーク作り、色彩教育等、「色事すべておまかせ!」をモットーに日夜仕事に励んでいる。http://www.jafca.org/

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