ネイティブ講師が語る① ここが好きだよジャパニーズカルチャー!

2022年7月22日(金)
宮園 順光(みやぞの よりみつ)

はじめに

海外旅行に行くと、その場所の素晴らしい印象が多く残りますよね。しかし、実際に住んで見ると、マイナスな部分も見えてくるようになります。そのため、ある程度の期間をその場所で暮らした海外の人が「素晴らしい!」と思う点は、自信を持って「誇りに思うべきところである」とも言えます。

そこで今回は、日本における数々の素晴らしい点について、本連載season2の「ここが変だよジャパニーズ・イングリッシュ!」で登場してもらったキティ先生(イギリス出身)に聞いてみました。

キティ先生

キティ先生が日本に来たのは今から9年前でした。大学卒業を間近に控え、特にこれといってやりたいことがなかったキティ先生ですが、父親の知り合いが1年間日本で英語講師をしていたという話を聞いて、「自分も行ってみよう」という軽い気持ちで日本行きを決めたそうです。

日本語は7ヶ月ほど学習したのみで、日本に関しては漫画やアニメ、そして技術が発達しているというイメージしか持っていなかったとのことです。元々は1年間のみの滞在予定で、全く異なる文化を少し経験して帰国するつもりでした。実際にそのような感じで日本に来る外国人は少なくありません。

それが、気付けば日本在住も9年目。来日当初は言葉の壁にぶつかったり、携帯電話を買えなかったり、Wi-Fiが使える場所が限られていたり、Suicaを知らず毎回切符を購入したり…などなど、外国人だからこそ経験する苦労も多くありました。

しかし、今では「帰国する予定はない」というほど日本に溶け込んだキティ先生。どのような魅力に惹かれて、それほどまで日本が好きになったのでしょうか。

1. 店や食べ物、サービスの質の高さ

キティ先生が真っ先に挙げた日本の好きなところは「質の高さ」です。これは来日当初から驚いた点で、今でも素晴らしいと思うと言います。

例えばコンビニです。イギリスにもコンビニはありますが、パンやちょっとした食べ物や飲み物が買える程度のお店です。しかし日本のコンビニは食料品の豊富さはもちろん、公共料金からチケットの支払いまでできてしまい、服(下着や靴下等)も買えるという点に驚いたそうです。また、営業時間もイギリスでは一部24時間営業のコンビニもありますが、多くは7時~23時といった営業時間なので、常に開いている日本のコンビニは本当に便利で大好きと言っていました。

日本の食べ物の質の高さも日本の好きな点とのこと。日本のレストランは、どこへ行っても「不味い」と思う料理が出て来ないことに驚いたそうです。海外の料理を提供しているレストランの中には本場のものと少し違うと思うことはあるそうですが、決して不味いということはないそうです。

また、海外でも買えるお菓子の日本限定版がある点は、新鮮で面白いと思い、イギリスの友人にも教えたりするそうです。例えば、世界中で有名なキットカットは、海外ではノーマルなチョコのものしか売っていないところが多いのですが、日本ではホワイトチョコや抹茶、ストロベリーなど味も豊富で、さらにご当地キットカットまであります。これらは日本のお土産としても外国人の観光客に大人気ですね。

そのほかにも、日本にはほぼ全ての県や地域にそれぞれ異なる食べ物の名物がある点に驚いていました。ヨーロッパでも地域の名物はありますが、日本ほどではなく、どちらかと言えばその国の名物があるという感じです。キティ先生は日本で国内旅行をする度に、行く場所によって全く異なる食べ物を食べられる点が大好きと言っていました。

もう1つ、食べ物関連で(良い意味で)驚いたのは、フードサンプルです。これは海外にはないものなので興味津々になったのはもちろん、外国の人たちからすると、レストランでどのような食べ物を提供しているかが分かるのでとても便利とのことでした。「買いたい!」と思うほど驚いたそうです。

ちなみに、英語の教科書等でイギリスの食べ物が紹介され、「あまり美味しくない」と書かれている点は、読むとイライラするそうです。そもそも紹介されているような食べ物を常に食べているわけではなく、それだけでイギリスの食べ物を評価されるのは好きではないと言っていました。

サービスの質の高さも好きと語っており、お店やレストランではサービスのせいで嫌な思いをすることが稀だと言っていました。もちろん中には心からおもてなしをしようと感じないこともあるものの、総合的に見てとても高い質のサービスをほとんどの場所で受けられる点が好きとのことでした。

サービスに関しては日本人でも感じる点で、特に海外に行くとその差を改めて感じることができます。ただ、海外では丁寧さは欠けても親近感を持てるサービスもあるので、その点は価値観の違いなのかもしれませんね。

2. 効率を考えた行動や仕組み

キティ先生が挙げた、日本の好きなところの2つ目は「効率的な行動や仕組み」です。日本にも非効率だと感じることは多くあります。例えば、まだまだ紙文化が根強く残っており、公的な書類はほぼ全て紙で提出する必要があります。

しかし、日本には効率を考えた行動や仕組みが多く存在し、それらも日本の好きなところとして挙げていました。イギリスを含めたヨーロッパの多くの国々は、日本に比べて人口密度が低いため、建物の使い方が異なります。昔からの建物を使っているということもありますが、例えば建物にレストランが入っている場合、基本的には1つの建物には1つのレストランが入っているということがほとんどです。日本の場合は人口密度も高く、土地を有効活用する必要があるため、雑居ビルのように同じ建物の中に複数のレストランが入っていることが多くあります。

そのため、ときどき目当てのレストランを見つけるのが大変ですが、他のレストランを知るきっかけになったりもするので、この建物の使い方は好きとのことです。 昔からの建物を有効利用するヨーロッパも素敵ですが、このような日本の建物の使い方にも良い点がありますね。

キティ先生が効率を考えた行動で面白いと思ったのは、車の駐車方法だそうです。日本ではスーパーやコンビニ、自宅の駐車場等で、バック駐車をしている車がほとんどですね。これは筆者も言われて気付いたのですが、海外(もちろん全部の国ではないと思いますが)では通常前向き駐車をします。日本の場合、バック駐車する一番の理由は車を出しやすいことが挙げられると思います。確かにこれは効率的だし、交通量が多い場所では事故を起こす可能性も低くなるため合理的だと思います。

キティ先生曰く、海外で前向き駐車にする理由は、面倒くさいからではないかとのことでした。ただ、スーパー等ではカートで荷物を車まで持って行き、トランクに入れる際に前向き駐車の方が入れやすいから、ということもあるとも言っていたので、これはこれで効率的ではないかと思えますね。

ちなみに日本では電車やバス等に乗る際は並びますが、これはイギリスでも結構似ているそうです。ただ、国によっては並ばずに、到着したら色々なところから入るというところもあるので、そういった国の人達からするとラッシュ時にあれだけ奇麗に並ぶのは驚きかもしれませんね。

3. 他の文化を理解し、尊重することの大切さ

キティ先生が挙げた日本の好きなところの3つ目は、その「文化や歴史」でした。当然ながら日本の文化や歴史は他国、特に欧米とは全く異なるもので、それらの国から来た人達からすると、全てが新鮮に映ります。この2年近くはコロナ禍でなかなか旅行にも行けない状況でしたが、それまではキティ先生は日本中を旅行して、現地の人達と交流をしたり、その土地の食べ物を食べたり、観光地を巡ったり、ということを多くしていました。

そういった中で触れた日本の文化や歴史を更に好きになっていたようです。そして、日本の文化や歴史に触れる中で、あることに気付いたそうです。

Importance of learning a language as an English speaker.
 (英語を母国語する者として、言語を学ぶことの重要性)

ご存じの通り、英語は世界中で最も使われている言語のため、英語が話せれば海外のどこへ行っても何とかなることが多くあります。そのため、アメリカ人やイギリス人はよく「外国語が苦手」と言われます。要するに必要性が英語圏外の人達と比べて全然違うということですね。

しかし、日本に住むことで言語を学ぶことの大切さや難しさを知ることにより、他国の言語や文化等に敬意を払うことができるようになったと言います。これは日本に来る前には全く思ってもいなかったそうです。元々日本には1年のみの滞在予定で、言葉もそれほど覚えようとは思っておらず、そこから何かを学ぶということへの期待度もゼロだったため、言語習得を通して多くを学べていることに感謝しているとのことでした。

また、9年間日本に住み続けて思ったことがもう1つあるそうです。それは「イギリスのことをもっと知るべきだった」という後悔です。日本中を旅行して、そのことを日本人の知り合いに話すと、日本人でさえ「そこには行ったことがない」「そこのことは全然知らない」という声を聞くらしいのですが、それは自身のイギリスに関する知識についても同じとのことでした。日本にいることで「もっと自分の国のことを知る重要性」に気付いたそうです。

最後にキティ先生は、そういった経験ができる日本のことは好きで、日本に来る選択は正しかったと語ってくれました。

おわりに

今回は、イギリス出身のキティ先生に、日本の好きなところを聞きましたが、いかがでしたか。キティ先生は長く日本に住んでいるせいで、お辞儀をするといった仕草などが日本式になってきていることが多くあるそうです。また、家族や友人と英語で話しているときにも、たまに日本語が入ってしまうくらい日本が体に染み付いているらしく、本人も驚いていました。

日本に住んでいると気付かない日本の良いところは数多くあります。皆さんも本記事をきっかけに、改めてそういった良い点を確認してみるのも面白いかもしれません。

著者
宮園 順光(みやぞの よりみつ)
株式会社グローレン
株式会社グローレン 取締役。小学校〜高校卒業までをベルギーで過ごす。上智大学を卒業後、大手英会話スクールにて7年間教務主任として多くのクラスを担当。外国人講師の指導にも従事。マンツーマン英会話教室の代表を経て、2014年から現職にて語学プログラムの総監修を務める。これまで1万人以上にレッスンを提供。TOEIC990点、英検1級。

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