マネジメントの常識が変わる
マネジメントの品質の指標:フロー
1つ目は、社員が「仕事の挑戦を楽しんでいるか」である。これを明らかにするために「フロー理論」が有効である。「フロー」とは、クレアモント大のチクセントミハイ教授が提唱したもので、時のたつのも忘れるほど、ものごとに集中して、没頭する状態を「フロー」と呼び、知的生産性が高く、挑戦的な仕事にワクワクして楽しむことに対応する。
これは、「最適経験」と呼ばれる。実は、この「フロー」になれることが本当の「幸せ」の正体だと考えられている。
フローを増やすには、仕事のチャレンジと能力をマッチングさせて、「不安」と「退屈」の間の「フロー」のチャネルに入ることが必要である(図2)。仕事の場において、このフローをつくり、育てることは、マネジメントの核心である。
筆者らは、チクセントミハイ教授と共同で、「フロー状態」をセンサーで計測する研究を行ってきた。その中で、人は「フロー」になると、動きに特徴的なパターンが現れることがわかってきた。これを用いて、社員の「フロー」を定量化することに成功した。これをマネジメント品質の指標とすることとした。
マネジメントの品質の指標:組織力
2つ目は、組織力である。人が集まったことによる相乗効果が上げられているかを測るには、第2回で紹介した、組織ネットワークの構造に着目する。
筆者らは、実組織の計測から、生産性の高い組織は、「アンバランスな三角形」が少ないという事実を見いだした。そういう組織では、少ないステップ数で、組織内がつながっている。逆に、アンバランスな三角形が多いと数十人の組織でも、端から端まで6ステップ以上必要な場合もある。社員の周りの三角関係のバランスの良さを表すものとして「結束度」と呼ばれる指標を定義した。
この2つの指標を合わせて、マネジメントの品質を定量化する。筆者らは、3万人日の世界最大規模の組織データを収集し、組織により、このマネジメント品質に大きな差があることを見いだした。