SEO、その前に

2009年2月2日(月)
中島 公平

原因は何か

 良かれと思って導入したSEO施策が結果的に悪い影響をもたらしてしまうという現実、その原因は一体どこにあるのでしょうか。

 筆者は主要な原因として以下の2点があると考えます。

・目指すべき成果目標の欠如
・ユーザー視点の欠如

 「目指すべき成果目標の欠如」については先述のとおり、コンバージョンレートとしてSEO施策を見た場合の結果が雄弁に物語っています。成果に対する誤った認識のままでSEO施策を行ってもそこに求める効果は得られません。そして、単純な集客だけで、ユーザーを成果へと導くための複合的な施策がなければSEO施策全体は無意味なものになってしまうのです。

 また、求める効果が不明確なままやみくもにSEO施策に投資を続けることは最も避けるべき行為です。行った施策が成功なのか失敗なのか、誰にも判断することができません。企業として最も忌諱(きき)される無駄な投資が継続されるばかりです。

 「ユーザー視点の欠如」についても既に述べたとおり、企業の目線だけで始めるSEO施策はユーザーに不愉快な体験を提供し続け、結果として企業に対するイメージを悪くしかねません。企業に利益を運んできてくれる存在であるユーザーをこのような気分にさせていては、ビジネス成果の追求など到底望むべくもありません。このような事態が続く場合、長年かかって築き挙げてきた優良な自社ブランドでさえもあっという間に地に落としてしまうことでしょう。

 読者の方々がこれからSEO施策に着手するという立場にいる場合、まずはこれらの原因とその結果がもたらす危険性について十分に認識を持つところから始めるべきでしょう。

 ここまでSEOを悲観的な視点から述べてきましたが、決して悲劇をもたらすばかりの技術知識ではありません。本質的にSEOとはインターネット利用におけるユーザビリティを向上させる王道の手段であり、理にかなったものです。十分な理解と対策を持ってうまく活用すれば、きっと良い結果を届けてくれるはずです。そのためには、流行しているからとりあえず手をつけてみる、という安直な導入は一歩踏みとどまり、十分な事前の準備を行ってほしいと筆者は考えます。

最初に考えなければならないこと

 SEO施策を導入するにあたり、最初に考えなければならないこと、それは先述の2つの原因に対する明確な回答を持つことです。

・目指すべき成果目標の設定
・ユーザー視点での情報発信

 まず、これら2つの明確な答えを持つところから始めましょう。

 「目指すべき成果目標の設定」については、企業として何が成果なのかということを見直すところから始める必要があります。そして、SEO施策を通じてかかったコストに対し、どのくらい成果を上げれば回収できるのか、という費用対効果の観点からの成果目標を設定することが重要です。目指すべき目標を掲げることによって初めて施策が成功だったのか、失敗だったのかを判断できるようになります。企業活動として投資を行う場合にはごく当たり前に行われている手法です。これがSEO施策においても重要な判断基準となるのです。

 「ユーザー視点での情報発信」については、Webサイトは企業目線ではなくユーザー視点での情報発信を行うようにすることが重要です。やみくもなSEO施策による集客は、このこととは決して相いれません。誰にどのような情報を発信してどのように収益を得ていくのか、企業としてのビジネス戦略に基づいた緻密(ちみつ)なユーザー視点が必要です。そのためには、SEO施策だけに注力するのではなく、現状のWebサイトがどのようになっているのか、SEO施策を通じて確実な成果を得るために改修すべき部分がないかの見直しを行うことも不可欠です。

 また、企業としてどのようにユーザー視点を確保し、そこに合致する情報発信を行っていくのか、という手法の確立も急務の課題となってくるでしょう。

 これらの明確な答えを中心に据えた対策を打つことで、SEO施策は企業にきっと良い結果もたらしてくれるはずです。

 次回からは、SEO施策における対策を詳述していきます。

【参考文献】

生田昌弘/株式会社キノトロープ著『Webブランディング成功の法則55』株式会社翔泳社(発行年:2005)

株式会社キノトロープ
広島大学教育学部卒業。デジタルハリウッド福岡校の講師を経て、2005年にキノトロープ入社。開発部にてECサイトやコーポレートサイトの構築ディレクション、業務系システムのインターフェース設計等に従事。2008年より営業・広報部副部長としてグループ全体の営業窓口・ブランド戦略を担当。http://www.kinotrope.co.jp/

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