ストレージのコスト削減
急増するストレージ容量
現在の世界的な不況下において、IT支出が削減されるなかでも、相変わらずストレージの容量ベースでは今も2けたの成長を続けている。それだけ企業が抱えるデータの増加が著しいということだろうが、年々ストレージのビット単価が下がっているとはいえ、その支出は決して低いものではない。
一般にストレージのコストはIT予算全体の20~30%(ハードウエア支出の55%程度)を占めるといわれるが、導入済みストレージの使用率は30~40%程度ともいわれる。余剰のストレージは、使用していなくても電力を消費し、冷却も必要だ。この未使用の領域を効率的に活用できれば、当面のストレージ増設のコストを先送りにできる可能性がある。
また一方で、増え続けるデータ量を削減する手段も検討の価値がある。ファイルのデータ圧縮は古くから使われている手段だが、これに加えてシングルインスタンスやブロック単位での重複除外技術も実運用が始まっている。データ量の増加を止めることはできないが、余剰領域の効率的な活用やデータ量の削減によって、ストレージへの支出をある程度抑制できる。
シンプロビジョニング
前述したように、ストレージの利用効率は30~40%となっているのはなぜだろうか?原因のひとつには、実際のストレージ需要とシステム導入時の想定に乖離(かいり)があるためだ。
一般に多くの企業では、多少多めにストレージ需要を見積もる傾向がある。ストレージ容量の不足を懸念して、過大に需要を見積もってしまうためだ。1部門当たりではたいした容量ではなくても、全社的な規模では実需要との差は大きくなる。いったん割り当てた領域がほかの目的に利用されれば問題はないが、実際の運用ではあまりそうしたことは行われない。利用部門への配慮ということもあるだろうが、システムごとにストレージが割り当てられているため、ボリュームの再割り当ての作業が煩雑だというのも大きな原因である。
こうしたストレージの過剰な割り当てに対応する手段が、シンプロビジョニング(仮想プロビジョニング)である。ストレージシステムを仮想化し、すなわち物理的なストレージとサーバーがアクセスする論理的なボリュームを分離することで、ボリュームの容量を仮想化する。こうすることで物理ストレージの容量にかかわらず、任意のボリュームサイズを論理的に割り当てることを可能にする(図1)。
例えば、それぞれ100GB、200GB、300GBを必要とする3つのアプリケーションがあったとする。全部で600GBが必要になるわけだが、最初から600GB必要なわけではない。通常、必要量は将来的に最大これくらい必要になる、ということを見越して算出するものであり、スタート時ははるかに少ない容量で済ませることが可能である場合が多い。にもかかわらず、将来の最大量を見積もるのは、いったんシステムが稼働してしまうと、ソフトウエアに割り当てるボリュームサイズを、システムを停止させずに動的に変化させることが難しいからだ。ストレージの利用効率がどうしても低くなってしまう理由のひとつがここにある。
シンプロビジョニングを利用すると、ソフトウエアに割り当てる論理ボリュームサイズは将来を見越した最大値にしたままで、実際にストレージプールから割り当てる物理ストレージサイズを必要最小限に抑えることが可能だ。アプリケーションを運用し、必要量が増大したら、必要に応じて物理ストレージの割り当てを増やしていけばよい。そのときどきで必要な物理ストレージを用意するだけで済むのだから、当然利用効率はよくなる。
ビジネス環境の変化は、往々にして当初の見積もりを覆すことが多いが、シンプロビジョニングを利用することで、見積もりの誤りの影響を排除することも可能になる。これは、見積もり作業にかける手間と時間を削減できるということでもある。