第1回:Linux上で利用するOracle RACのメリット (3/3)

最大限の可用性とスケーラビリティを実現するOracle RAC
最大限の可用性とスケーラビリティを実現するOracle RAC

第1回:Linux上で利用するOracle RACのメリット
著者:日立システムアンドサービス  山崎 啓利   2006/6/9
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Oracle Clusterware概要

   Oracle RACを利用するためにはクラスタソフトウェアが必要となりますが、オラクルではこのソフトウェアを独自で開発しています。このオラクル製クラスタソフトウェア(Oracle Clusterware:OCW)では、データベースクラスタ管理に必要なほとんどの機能を実装しています。

   従来のクラスタソフトウェア上でアプリケーションを利用する場合、クラスタウェアの機能とアプリケーションを連携させるために、ユーザが自ら複雑なロジックを新たに組み込む必要がありました。しかしながらOCWでは、次のような多様な管理メカニズムを兼ね備えています(表1)。
  • クラスタノードの参加/縮退
  • インターフェースを提供するクラスタメンバーシップ
  • クライアントからの接続を負荷分散するためのロードバランシング
  • 万が一の障害時のためのデータベースインスタンスや接続フェイルオーバ
  • データベース・ファイルを格納させるストレージ管理の自動化および冗長化

表1:OCWが備えている多様な管理メカニズム

   そしてまた、これらの機能がOCWを通じて簡単にカスタマイズすることができるようになったことで、結果としてサーバ・リソースの監視および制御や、障害時のリカバリ時間が短縮され、柔軟なクラスタシステムの実現に到ったといえます。

   そして、これらがOCW上で一元管理/自動化されたことにより、管理の複雑性の隠蔽を実現し、データベースの監視についても強化される形となりました(図5)。

OCW上での一括管理
図5:OCW上での一括管理


Oracle RACのコストメリット

   従来のOracle RACといえば非常に高価な存在でした。その理由としてクラスタソフトウェアが各ハードウェアベンダーからのみ提供されていたことがあげられます。しかしながら、クラスタソフトウェアはOracle RACコンポーネントの1つとして提供されるようになり、高価なベンダー固有のクラスタソフトウェアは特に必要なくなりました。

   そのため、各ハードウェアベンダー提供OSしか対応していなかったOracle RACが、Linuxのような環境においても利用可能となり、システム規模を選ばずOracle RACが利用されるようになってきました。

   ストレージ管理部分でも、従来の高価なサードパーティーのソフトウェアがなくても構築可能になっています。

   あらゆる規模においてOracle RACの選択肢が広がったことは、業務停止の運用計画の必要性を可能な限り取り除くことを可能にしました。Oracle RACは最低1つのノードが稼動していればサービスを継続することができます。

   つまり極端にいってしまえば、24時間365日お客様にサービスを提供し続けられるということになります。またサービス向上のために、更なる可用性/スケーラビリティを求め、ノード追加が必要になった場合でもサービス停止することなく実現できるのです。このようにOracle RACを利用することのコストメリットは非常に大きいものといえると思います。


ミッションクリティカルな分野で多く利用されるOracle RAC

   どういった分野において、このOracle RACが選択されているのでしょうか。まずECサイトのシステムが代表的な例としてあげられます。ECサイトには1日数万、中には数百万といった単位でアクセスされるWebサイトも存在します。こういったWebサイトを展開している場合には、当然、受け皿となるデータベースサーバでも高いパフォーマンスとともに、24時間365日稼動できる高い信頼性が求められます。

   また当初予想よりもアクセス数が増え、サーバ増強を強いられるという場合もよくありますが、こういった要求にもこたえられるデータベースとして、「パフォーマンス」「可用性」「スケールアップの容易性」というメリットを持つOracle RACが選択されています。

   また、より高度な信頼性を求められる金融(銀行)系システムでもRACは多く利用されています。金融業におけるシステムダウンは一般の取引に直接影響を与えるため、日本経済において壊滅的な影響を与えるといっても過言ではありません。

   こういった厳しい状況下ではOracle RACの高い可用性が非常に高い評価を得ています。つまり、24時間365日稼動が必要であるといった非常にシビアな要求がある比較的大規模なシステムでOracle RACは多く利用されているといえます。

   また比較的安価な投資でOracle RACの恩恵を享受できるようになったこともあり、中・小規模でもOracle RACを利用することが可能となりました。今後益々広い分野で利用される傾向が高くなると考えています。

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日立システムアンドサービス 山崎 啓利氏
著者プロフィール
日立システムアンドサービス  オープンソリューション本部
カスタマサポートセンタ   山崎 啓利

入社5年目。オラクルサポートに携わりながら、同製品の環境構築・検証作業、および社内のサポート業務システム構築を経て、この2年間は、オラクル製品にサポートに従事している。オラクルを使用するお客様に対して、ベストのサポートを提供すること心がけ、日々対応している。


INDEX
第1回:Linux上で利用するOracle RACのメリット
  はじめに
  Oracleのデータベースクラスタ技術
Oracle Clusterware概要
最大限の可用性とスケーラビリティを実現するOracle RAC
第1回 Linux上で利用するOracle RACのメリット
第2回 押さえておくべき基本設定
第3回 Oracle Clusterwareのインストール
第4回 Oracle Clusterwareインストール後の設定と確認
第5回 Oracleソフトウェアのインストールと設定
第6回 サーバダウン時のOracle RACの可用性
第7回 Oracle RACのパフォーマンスチューニング
第8回 Oracle RACコンポーネントの管理
第9回 Oracle RACのノード追加手順
第10回 Oracle RACの拡張機能と更なる進化

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