第5回:IT部門主導型の業務部門の変革を考える (4/4)

情シスマネージャの挑戦!
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦

第5回:IT部門主導型の業務部門の変革を考える

著者:有田 若彦   2007/3/15
前のページ  1  2  3  4
情報システムを含め業務従事者は適切な業務スキルを具備せよ

   一般的に、IT操作スキルや情報加工スキルといった、IT関連スキルの補充に眼を向けがちだ。だが日常業務でもっとも問題なのは、業務従事者がそれに見合った業務スキルを持っていないことだ。

3. スキル

   スキルの向上には「課題を発見する感性と能力」や「戦略と戦術を構築する能力」「解決策を具体化、実行する能力」「すべてを早く進める能力」という観点が欠かせない。

   そして、そのためには、以下のことを教えることが肝要だ。

  • 社内標準的な問題把握、解決手法の習得
  • 社内標準的な企画手法と戦略展開手法の会得
  • 素早く仕事するための社内ノウハウの共用
  • 職場知識の吸収と同等業務の世間一般動向の把握

表6:業務スキル向上のポイント

   また、教える内容や手法は全社で共通していること、そして全社員に対して実施されていることが必要だ。

   というのも、A工場はKJ法だが本社はKT法でやっているなど、分立しているとしたらどうだろうか。その場合、状況確認や意見調整だけで余分な時間を費やしてしまう。また、ごく一部の社員だけが教育を受けても、周囲の者が手法を理解できなかったりして反発してしまうと、まとまる話もまとまらなくなる。

   社員教育には費用を掛けたがらない経営者が多いと聞くが、「人材」を「人財」にかえるためにはコストと時間を惜しんではならない。


4. 活躍の場

   実際にやらせてみる、実践の場ということだ。

   読者も経験があると思うが、はじめは何事も素人同然から始まって、失敗や経験を積むことで今の自分ができあがったのではないだろうか。

   そんな自分があるにも関わらず、後輩や新参者を見る目は異常に厳しい。「あいつはダメだ」とか「まったく成っていない」といった経験もあるだろう。

   確かに仕事に対して向き・不向きはあるが、経験が人を育てることも周知の事実だ。

   そこで、「権限と責任を与えて任せる」や「本人が申し出たことは反対せず、させてみる」といった活躍の場の提供があえて必要になる。

   もし失敗したら、その原因を突き詰めて、次回に活かすようにに指導したい。そして、もちろん成功したら、それなりの評価が必要だ。

   北海道の某菓子メーカーでは、600人を超える社員の一人ひとりが必ず何かのエキスパートだという。そして、その専門性を公にして互いに助け合いながら、日常業務を推進している。

   私の部門でも数は少ないものの、部員一人ひとりに専門性を持たせて活躍できる場を設定している。

   このように、個人それぞれが何かの活躍の場が持てるというのは、本人にとっても相当のやりがいになるはずだ。

前のページ  1  2  3  4

有田 若彦
著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。


INDEX
第5回:IT部門主導型の業務部門の変革を考える
  積極的な組織と消極的な組織
  デキる組織では成功ノウハウが蓄積・継承
  視点に変化がなければ経営者を変えても無意味
情報システムを含め業務従事者は適切な業務スキルを具備せよ
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦
第1回 IT部門は変わる!業務現場も変われ!
第2回 社内のIT要員を使える「エンジニア」に変える
第3回 オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要
第4回 アウトソーシング成功の秘訣は協業&マネジメント体制の構築
第5回 IT部門主導型の業務部門の変革を考える
第6回 企業トップとの積極的な対話で経営戦略とITを効果的に連係す
第7回 利用部門が「情報を使いこなす」ための正しいBIツール導入方法

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る