第5回:IT部門主導型の業務部門の変革を考える (3/4)

情シスマネージャの挑戦!
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦

第5回:IT部門主導型の業務部門の変革を考える

著者:有田 若彦   2007/3/15
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視点に変化がなければ経営者を変えても無意味

   それでは「デキない組織」が「デキる組織」に変わるためにどうすればよいだろうか。

   よくあるケースは経営者の入れ替えだ。だが、指導者層をかえても、視点に変化がなければ効果は得られない。そこで、弊社での実施例に照らし、必要なマネジメントの視点を見ていこう(図2)。
組織再生の視点
図2:組織再生の視点
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


1. 風土改革

   目的は、次の5つだ。

  • 耳の痛い情報でも、正確に伝えることができる
  • 本音と建前の区別をなくす
  • 自分の立場や肩書きを外して話し合いができる
  • 想いを共有する
  • 自律できる人間を作る

表3:風土改革の目的

   これらのためには、対話コミュニケーションを活発化させることで、信頼関係を少しづつ回復させ、インフォーマルな組織の影響をなくし、風通しの良い状態を作り出すことが必要だ。

   そして、そのためには次のようなアプローチで土壌を作っていかなければならない。

  • 経営者と現場との対話の機会を頻繁に作る
  • 現場同士でも「ざっくばらん」に話し合う時間を設ける
  • 困っていることや成功体験を共有する
  • 落としどころを作らない、話し合いの場にする。会議にしない
  • 批判にも耳を傾ける習慣をつくる
  • 情報を隠さないことを奨励する

表4:風土改革のアプローチ

   ここでのポイントは、組織の上下や水平方向で、双方向にコミュニケーションすることだ。

   通常、組織の上位に位置する者は現場の声を耳にすることは少ない。また、現場は上席者に対して、疎遠であればあるほど、意見することを躊躇する。一方、現場同士では部門の壁を越えてコミュニケーションする機会が少ない。

   これでは、いつまで経っても作業者意識からは抜け出せるはずはなく、本気の改革は難しい。

   一度できあがった風土は容易には壊せないが、リニューアルできれば長続きさせることが可能だ。風土改革は士気の源泉でもあるので、根気よく取り組むべきものと思う。


2. 制度&規程改革

   目的は、「社員に公平な機会(権利)を与えること」と「暗黙の了解を形にして、示すこと」「行動規範、ガイドラインを示すこと」の3点にある。

   これらのためには、いづれも「経営戦略実現」と「現場改革」の観点で見直し、整備することだ。制度や規程は、過去に一度できあがったものを部分改定している場合が多い。そのため、矛盾していたり、陳腐化によって従業員が見向きしなくなっていることも少なくない。

   だが、制度や規程は行動のガイドラインであり評価基準であるあるため、時代や会社の目的に合うよう定期的に再構成しなければならない。

   そのためには、次の点を再チェックすべきだろう。

  • 業務品質の向上の求めと評価
  • 全社員で共通する業績評価と大胆な報酬制度
  • 組織やチームへの貢献の求めと評価
  • 社内の行動ガイドラインと規程
  • 社員のモチベーションの維持と評価・表彰の制度

表5:制度&規程改革のためのチェックポイント

   また、制度といえば人事制度に着目しがちだが、現場を上手く動かすための動機付けも重要になる。

   そのもっとたるものが、業務品質の向上活動だろう。製品の品質向上には取り組んでいても、経営や業務の品質に眼を向けている企業は少ないのではないだろうか。

   デキる企業は、日々業務の改善や改革を行うために業務品質を行動基準に置き、制度化することによって緊張感を保ち続けているようだ。

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有田 若彦
著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。


INDEX
第5回:IT部門主導型の業務部門の変革を考える
  積極的な組織と消極的な組織
  デキる組織では成功ノウハウが蓄積・継承
視点に変化がなければ経営者を変えても無意味
  情報システムを含め業務従事者は適切な業務スキルを具備せよ
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦
第1回 IT部門は変わる!業務現場も変われ!
第2回 社内のIT要員を使える「エンジニア」に変える
第3回 オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要
第4回 アウトソーシング成功の秘訣は協業&マネジメント体制の構築
第5回 IT部門主導型の業務部門の変革を考える
第6回 企業トップとの積極的な対話で経営戦略とITを効果的に連係す
第7回 利用部門が「情報を使いこなす」ための正しいBIツール導入方法

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