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情シスマネージャの挑戦!
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦

第5回:IT部門主導型の業務部門の変革を考える

著者:有田 若彦   2007/3/15
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積極的な組織と消極的な組織

   最初に断っておきたいのは、IT部門で頻繁に使われる「ユーザ」という言葉の定義だ。

   筆者のような社内のIT部門では、コンピューターシステムを使っている従業員を指して「ユーザ」と呼ぶ傾向が強い。ただし、これでは現在、何らかの理由でITの恩恵を受けていない、不幸な従業員を見落とすことになる。顕在化している利用者の利便性追求も大事だが、60点を80点にするよりも、0点を60点にする方が全体効果は大きいというものだ。

   そこで、「ユーザ」という表記には、顕在・潜在を問わず含めるということにする。

   今回、対象にするのは表のような消極的なユーザだ。何をもって積極的・消極的を判断するかは難しいが、「組織全体で業務の標準化に取り組んでいない」もしくは「業務の改善意識が薄い」といった場合を消極的とした。

   こうした消極的な組織の特徴には、次のようなものがある。
  • 仕事の流れや判断基準が過去から変化がない
  • 「わからない」「できない」といった言葉が平然と口についてでる
  • 上司の指示待ちが多い

表1:消極的な組織の特徴

   こうした消極的な組織が相手の場合、IT部門は「業務要件を定義できない、またコロコロかわる」「IT要件の定義には参加せず、完成後にクレームをだす」「手離れに手間暇がかかる」といった、難題を抱えることになる。

   これらの現象は、IT化を契機として気付かされることが多い。ただし残念ながら、これらはIT部門が直接手を下して解決できることではない。だが、この状態を放置しておくと、「IT部門がキチンと対応しないから業務改革が進まない」という、レッテルを貼られることになりかねない。


個人任せ・他人任せは負けパターンにつながる

   ではこうした問題に対して、社内のIT部門はどのように取り組めばよいのだろうか。

   まずは「負けパターン」と「勝ちパターン」で、それぞれの仕事に対する取り組み方の違いを見てみよう。

社内IT部門 ユーザ 解説
勝ちパターン
積極的 積極的 IT部門とユーザが一体となって取り組んでいる
優勢パターン
消極的 積極的 旺盛なニーズがIT部門を引っ張っている
消沈パターン
積極的 消極的 IT部門に「おんぶにだっこ」になっている
負けパターン
×
消極的 消極的 互いに批判しあい、何も実現できない

表2:社内IT部門とITユーザの意欲関係

   図1は、筆者が関わってきたさまざまな企業や、部門の業務改善のプロセスをパターン化したものだ。デキない組織の特徴は次の通りだ。

組織に対するベンチマーキング
図1:組織に対するベンチマーキング
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


沈滞した組織風土

   経営層は積極的でも、現場では変化や改革を好まない。現状で取りあえず結果がでているのに、さらに何を望むのかといった批判的な考えが蔓延している。多忙なので新たなことはしたくない、といった声も少なからずある状況だ。


個人任せ

   できる人やわかる人がすればよいといった、個人任せな対応が顕著。組織的に仕事が進められていない、ということもこれに関連する。


他人任せ

   「できない」「わからない」という言い訳が多くなり、他人に責任転嫁したり、問題解決を丸投げしがちになる。根本には事態の面倒さからの逃避や、主体性の欠如がある。


問題解決に不慣れ

   他人に任せてばかりいるため、問題を解決するための思考が身に付いていない。また、何事も完璧にできて当たり前だという、100%完璧主義的な意見が大勢を占める。そのため、チャレンジブルな試みは実を結びにくく、一方、当初の方針を修正しようものなら非難の嵐にあってしまう。根本には経験不足と、ロジカルかつ合理的な思考・判断の欠如がある。


労に報いる習慣がない

   目立った成果をあげた時のみ報い、地道で地味な活動は評価されない場合が多い。あらゆることに関して、経営者の感謝の気持ちが薄いと捉えることもできる。


組織を育てる習慣がない

   有能なメンバーや、若い社員ばかりに社員教育が集中する。あるいは、社員教育そのものが存在しないといったケースだ。会社は組織で支えているにも関わらず、組織全体を活動的にするという視点と行動に欠ける。

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有田 若彦
著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。


INDEX
第5回:IT部門主導型の業務部門の変革を考える
積極的な組織と消極的な組織
  デキる組織では成功ノウハウが蓄積・継承
  視点に変化がなければ経営者を変えても無意味
  情報システムを含め業務従事者は適切な業務スキルを具備せよ