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IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦 |
第4回:アウトソーシング成功の秘訣は協業&マネジメント体制の構築
著者:有田 若彦 2007/2/26
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アウトソーサーの目的
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まず最初に、IT業界におけるアウトソーシングの目的を考えてみよう。広義に解釈すれば次のようになる(図1)。
図1:アウトソーシング分類 (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
1はASPサービスや、サーバのハウジング/ホスティングといった、自社にはないIT資産を社外から調達することを指す。2は、パンチャーやプログラマの派遣など、いわゆる労働力を社外から調達すること。3は、システム運用や設計の委託といった、労働力の社外調達はもちろんのこと、一定以上の「責任」の負担を要求しつつ「成果」の創出までも依託するものだ。
1や2は、よほどぞんざいな計画を立てない限り、失敗するものではない。というのは、対価が明確であり固定的な内容であるため、良し悪しの判断がつきやすく、コストの透明性が高いので費用対効果を事前に算段できるからだ。
現在、最も物議を醸しているのが3のタイプだろう。昨今はITが高度化し、対応要員の育成が困難となってきている。そのため、この種のアウトソーシングを有効活用できるかどうかが、企業におけるIT活用成否のポイントとなる。
実際、「品質が良くなった」「本業に集中できた」といった成功の声がある一方、意外に失敗事例が多いことにも驚かされる。以下、失敗した企業から聞かれる声をピックアップしてみた。
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従来よりITコストが増加 |
社内人件費を含めたITコストを削減するためにアウトソーシングを断行。ところが、はじめの1〜2年は少し安くなったが、その後は徐々に費用が増加するようになった。
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融通が利かなくなった |
開発や運用業務をアウトソーシングしたものの、社内各部門とアウトソーサとの関係が妙にビジネスライクになってしまい、いざというとき融通が利きにくくなってきた。
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ブラックボックス化が進んでしまった |
はじめのうちは、アウトソーシングした仕事の内容や、意思決定コントロールが自社で可能だったため、不安はなかった。それが、互いに要員が入れ替わったり、改善・改良が進むうちにアウトソーサのアウトプットでしか状況判断できなくなった。そのため、対応内容に首をかしげることや、ベンダーのいいなりにならざるを得ない状況が増したというもの。
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発注者とアウトソーサに起因する課題が存在 |
こうした結果を招いている背景には、発注者とアウトソーサそれぞれに起因する課題が存在する(図2)。例えば、発注者側には次のような問題がある。
図2:アウトソーシングの失敗要因 (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
- 社内に残す仕事と、残さない仕事の判定が非合理的
- アウトソーサとの契約内容が明確に決まっていない
- アウトソーサの力量や得意不得意を考慮していない
- アウトソーサを管理・監督していない
- アウトソーサの評価尺度が明確になっていない
- アウトソーサによる「囲い込み」対策を考慮していない
表2:発注者側の問題
一方、アウトソーサ側には以下のような問題が存在する。
- 受注したいがために過剰宣伝になっている
- 仕事内容が曖昧なまま受注する
- 人材の士気が低い
- 顧客のビジネス環境に疎く、場違いな対応をする
- 顧客と運命共同体の関係を築くことが不得意
- アウトソーシング運営に不慣れ
表3:発注者側の問題
こうした現状を踏まえて、筆者が考えるアウトソーシング成功のポイントを5つあげる(表4)。
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ポイント |
1. 活用戦略 |
アウトソーシングは手段 シナジー効果を発揮できる使い方 |
2. 業務の透明性 |
仕事の内容、関連、必要スキルの明示 保身のための仕事にも要注意 |
3. 理解 |
アウトソーサのマネジメント力を評価 アウトソーサの限界を把握 |
4. PDCAの確保 |
PDCAループを断ち切るな マルチソーシングを覚悟せよ |
5. マンネリ化 |
共同の目標を持つ 新しいことにもチャレンジする |
表4:アウトソーシングの注意点
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著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。
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