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| はじめに | ||||||||||||
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以前、筆者がものづくりのエンジニアを勤めていた時には、どこの工場にも「神様」と呼ばれる人がいた。 例えば、磁気媒体の工場では、高機能顕微鏡でも見つけにくいミクロの世界のキズが肉眼で見える人と会った。この人は一目見ただけで、だいだいどの工程で問題が起きたのかまですぐにわかった。 また、鉄パイプの工場では、手で触るだけで、鉄パイプの弧度を三次元測度装置なみに正確に把握できる人もいた。この人の長い歳月の経験から培われた感覚で、設備の100個以上のパラメーターを短時間で微調整することができたので、量産準備を短期間で整えられたこともあった。 日本のものづくり現場では、こうした「匠の技」を持った人が、数十人いれば必ず1人はいるような気がする。だがIT業界では、同じような「神様」レベルのSEになかなか会えないのはなぜだろうか。 前回述べたように、日本のエンタープライズIT全体を見渡すと、様々な点で物足りない状況だと感じる。ITのグローバルスタンダードに対するユーザ企業の貢献をはじめ、ITサービスやプロセスマネジメント分野におけるSIベンダー、グローバルソフト市場への国産ソフトベンダー、ソフトエンジンニアリング工学に対する研究機関などいずれも充分とはいえない。 これはトヨタ方式を筆頭にした、ものづくりにおけるリーダーシップとは対照的だ。 その理由としてよく耳にするのは、日本人は理論的に思考することが苦手。または、ソフトの世界が英語中心だから、日本人には難しいという説だ。 だが、数学や物理のような理論的な分野でも、日本は多大な貢献を果たしてきている。また、世界の様々な国が日本のものづくりの方法を、言葉の壁を越えて学んできている。同様に、台湾や韓国などの英語が得意とはいえない国でも、IT分野は日本より進んでいる。 つまり、そういった「苦手説」はすべて言い訳で、本当の問題は業界の構造にあると筆者は見ている。 |
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| IT業界の構造的な問題点を正視せよ | ||||||||||||
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「情報サービス白書2006」によると、日本の情報サービス業界における第1の課題は「人材育成の強化」となっている。そして、ITSSなどのITスキル標準の促進や、教育体制の強化などが急速に進んでいるようだ。 だが、それに止まらず業界全体のレベルを引き上げ、グローバルスタンダードを創出できるエンジニアを育成するためには、構造的な問題点を正視する必要があるだろう。具体的には、業界の構造的な問題は、以下の3つのスパイラル関係から形成されていると、筆者は考える。
表1:業界の構造的な問題の3つのスパイラル
それぞれについて、詳しく見ておこう。 |
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