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ここが変だよ!日本のIT
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第1回:ものづくり現場の知恵を活かし、ITプロジェクトを改革せよ
著者:アプリソ・ジャパン  ジェームス・モック   2006/9/29
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はじめに

   最近、ITで「ものづくり現場」を改革するという話が溢れかえっている。だが筆者は逆に、ものづくり現場の知恵を活かして、ITの改革を狙う方が、企業の競争力の強化に一層の効果があると考える。

   筆者は、1990年に米国の大学院を卒業した後、日本のメーカで働きはじめた。最初の仕事は、機械の設計と製造ラインでの設置・運用をサポート。その後、工程検査役として、国内の様々な現場を見て回った。そこで、日本のものづくりの素晴らしさに感動したことを、今でも鮮明に憶えている。

   そしてエンジニア時代には、システム構築やソフト開発に携わってきた。正式にITプロジェクトの専任になったのは、1997年頃からだったと記憶している。それから現在までの9年間、日本国内外の様々なITプロジェクトに関わってきた。

   そこでは、日本のものづくりに携わってきた時代と比べて、「ここが素晴らしいというより、むしろここがおかしい」と、しばしば思うようになってきた(表1)。
モノづくり時代の感想 システムづくり時代の感想
TPMやTQC、5Sなど優れた日本発のプロセス・マネジメントが多い 日本発のプロセス・マネジメント思想はほとんどない
工場長や部長といった管理者が、積極的に現場業務に参加したり、整理整頓を自ら実行したりというような参加型のマネジメント姿勢が見えた リーダーおよびPMはハンズオンの技術をほとんど持っておらず、ユーザの要件をわかってないケースもよくあり、一般的にPMの専門性が欧米より低い
設計者と生産側との間に以心伝心のようなコミュニケーションがあった ユーザとアーキテクト、開発者の間でどれほどコミュニケーションを取ってもズレがでる
多くの匠がいた 神様のようなSE・PMなどほぼ存在しない
ものづくりに対し日本人特有な感情があった システムやソフト、サービスといった目に見えないものを軽視したり、モノと一緒に無償で付いてくると思い込む傾向が見られる

表1:日本でのシステムづくりとモノづくりの感想

   結論からいうと、日本にはモノづくりの世界にはレベルの高いプロセスマネージマントや、品質管理が存在しても、そして日本以外のIT先進国が日本のモノづくりに学びはじめていても、日本のIT業界がそれらを積極的にITプロジェクトに取り込む姿が見えないのだ。

   なぜ、日本のものづくりのセンスが、システムづくりに使われないのだろうか。今回から4回にわたり考えていきたい。


日本のITプロジェクトは不確実性を認めない

   図1のように、確かにシステムを構築することは、橋を造るのとは異なる。それは、システムづくりは、ものづくりより、正確に計画しにくく、不確実性が高いということに起因する。とはいえ、ものづくりの原理が通用しないことはないと思える。

橋づくりとシステムづくりの違い
図1:橋づくりとシステムづくりの違い

   これを裏付けるように、トヨタ自動車に代表される、日本型生産方式の権威である大野耐一氏は、次のように記している。「世の中はなかなか計画どおりにいかぬので、情勢によって、計画の中身はどんどん変えていかざるをえない」と。そして事実、その発想の下に世界をリードする仕組みを実現してきた。

   たとえば、「引き取りかんばん方式」は、実際のものづくりのペースで、ベンダから納品するタイミングと量を決定し、内示(計画情報)とピッタリ合わなくても、実需の不確実性を認めて迅速に変化に対応する仕組みだ。

   トヨタは計画の限界を知っていた。曖昧な計画をとりあえず作り、後に修正する仕組みでは不十分と認識していた。そして、ベンダとユーザが共同で計画の不確実性に対応する仕組みを実現し、世界のものづくりをリードしてきたのだ。

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アプリソ・ジャパン株式会社 ジェームス・モック
著者プロフィール
アプリソ・ジャパン株式会社   ジェームス・モック
香港生まれ、英国ブリストル大学機械工学卒、米国スタンフォード大学工学修士、テンプル大学MBA修了。1991年に来日。東京大学生産技術研究所でシュミレーション研究と日本企業で鉄鋼成形機械のCAD・CAM設計・開発に携わる。2001年に米アプリソの日本支社を立上げ、テクニカルディレクターとしてMES・POP・WMSなどのソリューションをスペインや中国、韓国、日本で導入するプロジェクトを取りまとめる。現場ユーザや企業の情報システム部門、導入コンサルタント、ソフトベンダの立場から純日本企業と外資系企業の日本国内外ITプロジェクトを幅広く経験している。


INDEX
第1回:ものづくり現場の知恵を活かし、ITプロジェクトを改革せよ
はじめに
  計画の正確性を求めるより変化に柔軟かつ迅速に対応
  要件が決まらないのに見積りを強要するのは疑問