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顧客の声を活用するテキストマイニング |
第5回:顧客の声を経営に活用するための課題解決法
著者:野村総合研究所 神田 晴彦 2007/3/2
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顧客の声を経営に活用する「顧客の声ポータル」
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ここでは「TRUE TELLER顧客の声ポータル(以下、「顧客の声ポータル」)」というシステムを用いた事例を紹介する。この「顧客の声ポータル」とは本連載の「第2回:テキストデータ活用の変遷」で述べたように、テキストマイニングを行った結果を全社イントラネットで共有できる仕組みである。
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事例1:報告までのスピードアップ
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従来顧客の声の分類作業やそのグラフ化などの作業に時間がかかり、報告までのタイムラグが発生してしまっていたのは先に述べた通りである。「顧客の声ポータル」では、前日までの顧客の声がすぐにカテゴリー別や緊急度合い別などに分類され、かつグラフでビジュアルに表示してくれる。
その結果、ある小売業の会社では従来1ヶ月間ほどタイムラグが発生していたが、現在では前日までの顧客の声を、翌朝出社した際に瞬時にチェックできるようになったという。
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事例2:品質管理
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最近では製造業の経営層において、品質管理上課題のある商品についての顧客の声を、きちんとチェックしておきたいという要望が非常に多くなってきた。
例えばあるメーカーでは「不満商品ワースト10」をポータルサイト上で「見える化」している。これは品質管理上問題のある事象(=リスクワード)を多く含む顧客の声のみ抽出され表示されている。その結果、経営層は早期に対策を検討できるように、かつすぐ事業部へ指示を実施することができるようになった。
なお製造業のみならず、銀行や生損保においてもコンプライアンス関連の事象を「アラート分析グラフ」や「アラートメール」として抽出し、対策を講じる企業も増えつつある。
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事例3:顧客の声のコックピット化
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経営層にとっては、様々な種類の顧客の声を瞬時に把握したいという思いも強い。しかしながら「コールセンターの苦情はこちらのデータベースで、メールによる苦情はまた別のデータベースで」という運用では非常に不便で、顧客の声を活用することは難しい。
従来このような課題を抱えていたある金融業やサービス業では、コールセンターへの問い合わせやハガキ・メールで寄せられた苦情など複数の顧客の声を集約し、画面1ページ内で表示できるようにしている。これにより顧客接点別に特徴や異変を把握することが可能になった。
ちょうど飛行機のコックピットでは、様々な計器の表示情報がパイロットの視界に入るように設計されている。同様に「顧客の声ポータル」では、様々なチャネルから収集された顧客の声を集約し可視化することが可能なのである。
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事例4:課題管理システムによる改善
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顧客の声から得られた課題を、きちんと施策に落とし込むまで管理することが重要だ。寄せられた生の声や、異変を示したグラフを、主管部署に共有し、対策時期をきちんと明示することで、はじめて施策に生きてくる。
ある通販業では、生の声から得られた改善策をシステム上のワークフローに載せ、課題の解決数を1つのKPIに設定している。
「顧客の声ポータル」では課題管理機能も提供しており、課題解決の進捗状況の把握や、解決のためのコミュニケーションなどが可能になっている。
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事例5:生の声による意識改革
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顧客の生の声は示唆に富んでいて、非常に興味深いものではある。しかしながら、経営層にとって限られた時間で全てに目を通すのはやはり困難であり、自分の関心ある事柄のみ詳細を把握したがる。そこで「顧客の声ポータル」では、グラフやキーワードランキングなどにおいて気になる箇所があれば、すべての分析結果の画面において、クリック1つでエピソードを閲覧できるようになっている。
実際にあるサービス業では、顧客の不満のエピソードやお褒めのエピソードを自動抽出し閲覧できる経営層向けのページを設計している。顧客視点の生々しいエピソードを把握する中で、経営層は具体的な判断や指示伝達が可能になるという。
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著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 神田 晴彦
野村総合研究所ビジネスインテリジェンス事業部にてテキストマイニングを活用したCS調査や、データマイニング分析コンサルティングを数多く手がける。近年はテキストマイニングによるBlog分析やFAQ構築、品質管理・経営層向けのポータルサイトの構築を実施している。また人材育成プロジェクトも担当し、日本で最初となるテキストマイニング認定試験の企画に携わる。高度情報処理技術者(上級シスアド)。
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