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IT投資効果分析
ビジネスモデルの変革を伴うIT投資効果分析の考え方

第1回:IT投資の動向と可視化について

著者:オープンストリーム  赤穂 満   2007/5/2
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IT投資の動向

   まずIT投資に関する各企業の動向について、いくつかのリサーチ結果から考察していく。
日米企業を比較した経営課題に対するIT活用

   「ITの活用」について、米国は「購入コストの削減」に次いで第2位の施策にあげているが、日本は第5位になっている。これは米国では経営戦略遂行のツールとしてITを効果的に活用していこうとする取り組みのあらわれであり、日本ではITを単なるコスト削減のツールとして捕らえている背景がある。これはITに対する姿勢の違いが日米企業の経営者間で明確にでている結果の1つといえるだろう。

日米企業でのIT活用の経営課題
図1:日米企業でのIT活用の経営課題


日本企業の半数がIT投資額が売上高比率1%未満

   あるリサーチ会社のデータによると、2006年度の年間IT投資額の売上高比率は、59%以上の企業が1%未満と回答している。売上高比率1〜2%のところは22%強、売上高比率10%以上の投資を行っていると回答している企業は2%程度しかなく、ベンチャー企業や金融機関などが中心であった。このことから「半数の企業がIT投資額が売上高比率1%未満」であり、積極的にITへの投資を行っている企業は少ないことがわかる。


過半数の企業が金額換算でIT投資を評価

   IT投資の評価手法については、あるリサーチ会社のデータによると、過半数の企業が金額換算した効果目標を設定していることが明確である。利用部門に投資効果について定期的に評価をさせ報告を義務付けている企業も22%強、KPI(重要業績評価指数)を算定しているところは13%もあるという結果であり、何らかの評価は行っていることが明確である。つまり「過半数の企業が金額換算でIT投資を評価」していることがわかる。


IT投資に関する傾向

   前述の調査結果より、経営課題の重要施策として表2のものが上位を占めている。

順位 理由 結果
第1位 販売・マーケティング機能の強化 23.20%
第2位 ビジネスプロセスの見直し 13.00%
第3位 サービスの向上 11.60%

表2:経営課題の重要施策

   これに対し、米国での施策の上位は表3のようになっている。

順位 理由 結果
第1位 購入コストの削減 27.10%
第2位 ITの活用 18.80%
第3位 販売・マーケティング機能の強化 2.90%

表3:米国での経営課題の重要施策

   これらの調査データより、日本企業では販売機能の強化、顧客サービスやビジネスプロセスなど「ビジネスプロセスの変革」をベースにしたIT投資を行っていることが明確になる。またIT投資手法の採用についても、投資効果を金額に換算して評価する企業が過半数をしめていることから、日本企業においては「ビジネスプロセスの変革を実現する投資効果の金額換算」の算定方法が求められている。つまり短期的なIT投資による効果だけを評価するのでなく、中長期的なビジネスの変革を実現するIT投資の評価が必要となるのである。

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株式会社オープンストリーム  赤穂 満
著者プロフィール
株式会社オープンストリーム  赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。


INDEX
第1回:IT投資の動向と可視化について
  IT投資と投資効果算定を考える
IT投資の動向
  IT投資の戦略的取組みと評価の考え方