第3回:価値評価を考慮したIT投資評価 (2/3)

IT投資効果分析
ビジネスモデルの変革を伴うIT投資効果分析の考え方

第3回:価値評価を考慮したIT投資評価

著者:オープンストリーム  赤穂 満   2007/5/16
前のページ  1  2  3  次のページ
正味現在価値(NPV)の算出

   NPV(Net Present Value)とは、将来発生するキャッシュフローをしかるべき利率で割り引いて算出した現在価値(PV:Present Value)から、投下投資額を差し引いたものである。
NPV算出例
図2:NPV算出例

   企業における投資判断には通常、「ハードルレート」と呼ばれる基準金利を参考にする(図3)。

ハードルレート
図3:ハードルレート
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   NPV算出の際には、以下のポイントに留意する。

  • 投資案件の期間リスクプレミアムは、経験的に一律1%が適用されている
  • WACCの算出には、時価ベースの負債と株主資本の加重平均を使用することが理想的である。しかし負債の時価算定が困難なため、簿価ベースの負債と時価ベースの株主資本の加重平均を使用する企業が多い

表2:NPVの留意ポイント


内部収益率(IRR)の算出

   IRR(Internal Rate of Return)は、投下投資額とキャッシュフローの現在価値が同じになる割引金利であり、「ハードルレート」との比較で投資判断を行う際に用いる(図4)。

内部収益率(IRR)の算出
図4:内部収益率(IRR)の算出

   IRR算出の際には、以下のポイントに留意する。

  • 資本構成が変わればWACCの値も変化してしまい、基準として用いる際に留意する必要がある
  • IRRの単位は%であるため、投資規模の違いを無視しがちとなりやすい。IRRが低くても、NPVの絶対値が大きい方が投資優先順位は高い
  • IRRの解が存在しないケースもある(例:キャッシュフローがプラス/マイナス両方に散発している場合など)

表3:IRRの留意ポイント


投資資本利益率(ROI)の算出

   ROI(Return on Investment)は投下資本に対する利益の割合であり、判断基準の目的によって算出データ(分母と分子)が異なるケースがある。

ROIの投資算定式
図5:ROIの投資算定式

   ROI算出の際には、以下のポイントに留意する。

  • 投資案件を長期的に判断する場合、時間の価値が無視されてしまう(単年度評価に適している)
  • 短期的な目標としてROIを設定した場合、長期的な投資に消極的判断されることがある

表4:ROIの留意ポイント

前のページ  1  2  3  次のページ


株式会社オープンストリーム  赤穂 満
著者プロフィール
株式会社オープンストリーム  赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。


INDEX
第3回:価値評価を考慮したIT投資評価
  投資価値の判断について
正味現在価値(NPV)の算出
  Payback Periodの算出
ビジネスモデルの変革を伴うIT投資効果分析の考え方
第1回 IT投資の動向と可視化について
第2回 ビジネスモデル変革におけるIT投資の視点
第3回 価値評価を考慮したIT投資評価

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る