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ITIL実践のポイント
ITIL実践のポイント

第2回:サービスデリバリ〜Tivoliを中心としたプロアクティブ運用に向けたITIL導入実践
著者:東芝ソリューション   沼野 宏行   2006/3/17
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はじめに

   代表的なシステム運用管理ツールを用いてITILの実践について紹介する連載「ITIL実践のポイント」の第2回の今回は、Tivoliによるサービスデリバリの実践を紹介する。特に今回はサービスデリバリの中でも、株式市場の性能問題などでホットになっているキャパシティ管理を取り上げてみよう。
キャパシティ管理のプロセス

   前回ITILの概要について説明したが、もう一度ここでおさらいしておこう。ITILの中心になるのがサービスサポートとサービスデリバリからなるサービスマネジメントである。

サービスデリバリ サービスサポート
サービスレベル管理
サービス品質維持のための合意と監視・報告

キャパシティ管理
顧客の需要把握と必要なリソースの計画

可用性管理
サービスの可用性保証とサービス中断の監視

ITサービス財務管理
IT資産と費用・効果の把握と計画

ITサービス継続性管理
要求された時間内でのシステム復旧

サービスデスク
ユーザに対する単一窓口(SPOC:Single Point Of Contact)を提供

インシデント管理
サービスのすみやかな復旧

問題管理
インシデント・問題のビジネスへのインパクトの極小化

構成管理
構成要素の識別、管理、ステータス報告、確認、監査

変更管理
変更を効率的に行うための標準化された手順の提供

リリース管理
ソフトウェア/ハードウェアの実環境へのコントロールされた展開
:機能  :プロセス

表1:サービスマネジメントの機能・プロセス構成(再掲)

   今回のテーマであるサービスデリバリは、ビジネスにおけるシステムの性能や可用性、コストなどの要求をITシステムが満たすための計画や改善活動を行うものである。

   その1つであるキャパシティ管理は、特にITインフラの「キャパシティ(ディスク容量や処理性能など)」が必要十分に提供され続けていくことを目指すプロセスである。

   主な活動としては、表2にあげた項目があり、キャパシティを費用対効果の高い方法で管理していき、ビジネスの要求に対応して適切なタイミングでITインフラを増強してゆくことがポイントである。

  • キャパシティの監視、分析、チューニング
  • 顧客の需要の管理
  • 長期的なキャパシティプランの策定

表2:キャパシティ管理プロセスの主な活動

   特に重要なのは、最近のシステム障害事例でも明らかな通り、システムの性能が追いつかなくなってから対策するのではなく、将来のビジネス需要に基づき、問題が起きる前に計画的にシステム増強などの対策を打っておくこと、すなわちプロアクティブな運用が求められている。

   そのために、ITILではキャパシティ管理を「事業」「サービス」「リソース」の3つのサブプロセスに分けて管理している。

事業キャパシティ管理 将来の事業計画や動向に基づくキャパシティ要件の計画・検討。 事業計画の例:
何年後に支社を新設する、オンライン取引の登録ユーザ数は6ヶ月で数%増加するなど。
サービス・
キャパシティ管理
事業要件を満たすためのサービスレベルの定義と達成。 サービスレベルの例:
オンライン注文の処理件数は最繁時で何万件/時、ユーザが精算ボタンをクリックしてから画面が更新されるまでの時間は数秒以内など。
リソース・
キャパシティ管理
サービスレベルを満たすためのITインフラのリソース監視と分析、レポート。 リソース項目の例:
CPU、ネットワーク、メモリ、ディスクなどの利用率。

表3:キャパシティ管理3つのサブプロセス

   これにより、将来の事業計画から必要となるITサービスのサービスレベルを定義し、それに関連するリソースを管理することで、ビジネスとそれを支えるITインフラとを結びつけることができる。

   また、キャパシティ管理を行っていく上で重要になるのが、キャパシティ管理に必要な各種データが格納されるデータベース「CDB(Capacity management DataBase)」である。

   CDBには表3にあげた各サブプロセスに関連する内容として、表4に示す内容が格納されており、プロセス実行の基盤ともいえるものである。

事業データ(現在の事業規模や将来計画)
部門の数と場所、コールセンタへのコール数、予測された負荷の季節変動など。
サービスデータ(End to Endでのサービス性能値)
トランザクション応答時間、バッチジョブ処理時間など。
技術データ(機器の仕様値や異常とみなされるしきい値など)
回線種別ごとの帯域幅、帯域使用率の上限値など。
利用状況データ(リソースなどの利用状況)
CPU利用率、メモリ利用率、キューの長さの平均など。

表4:キャパシティ管理データベース(CDB)の内容

   つまり、プロアクティブなキャパシティ管理を行うためには、CDBにデータを蓄積しながら、それぞれのサブプロセスで「監視 → 分析 → チューニング → 実装」のサイクルを反復的に実行することが必要になる(図1)。

ITILキャパシティ管理のサイクル
図1:ITILキャパシティ管理のサイクル

   ITILでは図1のサイクルをまわすために適切なツールを用いることが推奨されているが、中でもツールが効果を発揮するリソース・キャパシティ管理について、Tivoliでどのように実現するかを見てみよう。

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東芝ソリューション 沼野 宏行
著者プロフィール
東芝ソリューション株式会社   沼野 宏行
米国テキサスのIBM Tivoli開発部門での技術者交流プログラムに1年間参加した、自他共に認めるTivoliのスペシャリスト(チボラー)。Tivoliを活用する運用管理ソリューションの中核メンバーとして活躍中。

INDEX
第2回:サービスデリバリ〜Tivoliを中心としたプロアクティブ運用に向けたITIL導入実践
はじめに
  IBM Tivoli Monitoring ソリューション
  キャパシティ管理のステップ1:監視
  キャパシティ管理のステップ2:分析