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| はじめに | ||||||||||||
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最近、ITで「ものづくり現場」を改革するという話が溢れかえっている。だが筆者は逆に、ものづくり現場の知恵を活かして、ITの改革を狙う方が、企業の競争力の強化に一層の効果があると考える。 筆者は、1990年に米国の大学院を卒業した後、日本のメーカで働きはじめた。最初の仕事は、機械の設計と製造ラインでの設置・運用をサポート。その後、工程検査役として、国内の様々な現場を見て回った。そこで、日本のものづくりの素晴らしさに感動したことを、今でも鮮明に憶えている。 そしてエンジニア時代には、システム構築やソフト開発に携わってきた。正式にITプロジェクトの専任になったのは、1997年頃からだったと記憶している。それから現在までの9年間、日本国内外の様々なITプロジェクトに関わってきた。 そこでは、日本のものづくりに携わってきた時代と比べて、「ここが素晴らしいというより、むしろここがおかしい」と、しばしば思うようになってきた(表1)。
表1:日本でのシステムづくりとモノづくりの感想 結論からいうと、日本にはモノづくりの世界にはレベルの高いプロセスマネージマントや、品質管理が存在しても、そして日本以外のIT先進国が日本のモノづくりに学びはじめていても、日本のIT業界がそれらを積極的にITプロジェクトに取り込む姿が見えないのだ。 なぜ、日本のものづくりのセンスが、システムづくりに使われないのだろうか。今回から4回にわたり考えていきたい。 |
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| 日本のITプロジェクトは不確実性を認めない | ||||||||||||
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図1のように、確かにシステムを構築することは、橋を造るのとは異なる。それは、システムづくりは、ものづくりより、正確に計画しにくく、不確実性が高いということに起因する。とはいえ、ものづくりの原理が通用しないことはないと思える。 ![]() 図1:橋づくりとシステムづくりの違い これを裏付けるように、トヨタ自動車に代表される、日本型生産方式の権威である大野耐一氏は、次のように記している。「世の中はなかなか計画どおりにいかぬので、情勢によって、計画の中身はどんどん変えていかざるをえない」と。そして事実、その発想の下に世界をリードする仕組みを実現してきた。 たとえば、「引き取りかんばん方式」は、実際のものづくりのペースで、ベンダから納品するタイミングと量を決定し、内示(計画情報)とピッタリ合わなくても、実需の不確実性を認めて迅速に変化に対応する仕組みだ。 トヨタは計画の限界を知っていた。曖昧な計画をとりあえず作り、後に修正する仕組みでは不十分と認識していた。そして、ベンダとユーザが共同で計画の不確実性に対応する仕組みを実現し、世界のものづくりをリードしてきたのだ。 |
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