Gen AI Times 72

【開発の転換点】ローコードとAI開発が交わるこれからの開発現場

本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。

前田 優希

5月28日 6:30

はじめに

本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。

ソフトウェア開発の現場では、ここ数年で大きな変化が起きています。ひとつは、LCP(ローコード・プラットフォーム)の普及。もうひとつは、生成AIやAIエージェントを活用した開発支援の広がりです。

LCPは、少ないコードで素早く業務アプリを作るための仕組みです。一方、AIを活用した開発支援は、コード生成やテスト作成、仕様整理などをAIが補助する技術として急速に浸透しています。GitHub Copilotのようなツールは、すでに多くの開発現場で利用され始めています。

この2つは別々の流れに見えますが、本質的には共通点があります。それは、「人がすべてを細かく実装する開発」から、「人が目的を伝え、ツールが実装を支援する開発」への変化です。

では、AIが発達していく中で、LCP開発はどのように変わっていくのでしょうか。AIがローコードを置き換えるのか、それとも両者は共存しながら発展していくのか。本稿では、LCPとAI開発の現在地を整理しながら、これからの開発現場の姿を考えていきます。

開発スピードを変えたLCPという仕組み

LCPとは、Low-Code Platformの略で、名前の通り「できるだけ少ないコードでアプリケーションを開発する」ための仕組みです。ノーコードと似ていますが、必要に応じてコードを追加できる点が特徴で、業務システム開発にも対応しやすい柔軟性を持っています。

LCPでは、入力フォーム、一覧画面、承認フロー、通知、データベース連携など、業務システムでよく使われる機能があらかじめ部品として用意されています。開発者はそれらを組み合わせながらアプリを作るため、ゼロからコードを書く量を大きく減らせます。Microsoft Power PlatformやOutSystems、Mendixなどは代表的なLCP製品として知られています。

LCPが広がった背景には、企業の「もっと早くシステムを作りたい」というニーズがあります。従来のシステム開発では、要件定義から設計、実装、テストまで長い時間がかかることが一般的でした。しかしLCPでは、画面やワークフローを短期間で形にできるため、まずはプロトタイプを作り、利用部門と確認しながら改善を進める開発スタイルを取りやすくなります。

また、業務部門とIT部門の距離を縮めやすいことも大きな特徴です。これまでは、業務側が文章で要件を伝え、それを開発側が読み解いてシステム化する流れが一般的でした。しかし、文章だけでは認識のずれが起きやすく、「完成したがイメージと違う」という問題も少なくありませんでした。LCPでは、実際の画面や操作イメージを早い段階で共有できるため、業務部門も開発プロセスに参加しやすくなります。

さらに、LCPは単に「簡単に作れるツール」というだけではなく、企業全体で開発を標準化しやすい点にも価値があります。共通部品やテンプレートを利用することで、一定の品質を保ちながら複数のアプリを展開しやすくなります。近年では、現場部門が主体的にアプリを作り、IT部門がガバナンスやセキュリティを管理する形も増えています。

一方で、LCPは万能ではありません。複雑な業務ロジックや高い性能が求められる処理、大規模な基幹システムでは、通常のコード開発が必要になる場面もあります。また、簡単にアプリを作れる反面、管理が不十分だとアプリが乱立し、保守やセキュリティの問題につながることもあります。そのため、権限管理や運用ルール、レビュー体制を整えることが重要になります。

つまりLCPは、「開発者を不要にする仕組み」ではなく、「開発を標準化し、素早く進めるための基盤」です。そして現在、このLCPにAI開発支援が組み合わさることで、開発の進め方そのものがさらに変わり始めています。

筆者がChatGPTで生成

この組み合わせによって、LCP開発の進め方は大きく変わり始めています。たとえば、利用者が「顧客情報を登録し、上長が承認し、月次で集計できるアプリを作りたい」と入力すると、AIが画面構成やデータ項目、承認フローのたたき台を作り、それをLCP上で調整していくような開発が現実的になっています。従来は一つずつ設定していた作業の一部を、AIが初期案として提示することで、プロトタイプ作成や要件確認のスピードは高まっていくでしょう。

すでに主要なLCP製品でも、AIを組み込む動きは進んでいます。Microsoft Copilot Studioでは、AIエージェントがWebサイトやデスクトップアプリを操作し、入力作業や請求書処理などを自動化する方向が示されています。OutSystemsもAgent Workbenchを発表し、ローコードの考え方でAIエージェントを作成・管理し、業務フローやデータソースと連携させる取り組みを進めています。

その結果、今後のLCPは「業務アプリを簡単に作るための道具」から、「AIを業務に組み込むための開発基盤」へ広がっていくと考えられます。単に画面やワークフローを作るだけでなく、問い合わせ対応、文章要約、データ確認、異常検知、次のアクション提案などを、業務プロセスの中に自然に組み込む役割を担うようになります。

一方で、AIとLCPを組み合わせれば、すぐに開発が完全自動化されるわけではありません。AIが生成したコードや設定には、誤りやセキュリティ上の問題が含まれる可能性があります。

AI生成コードを分析した研究でも、動作するコードであっても、バグや脆弱性、保守上の問題が含まれる場合があり、本番利用前の検証が必要だと指摘されています。

そのため、今後の開発現場では「AIに作らせる力」だけでなく、「AIが作ったものを見極める力」がより重要になります。開発者は、画面やコードを一つずつ作る作業から、要件の妥当性、データ設計、権限管理、既存システムとの連携、セキュリティ、運用ルールを確認する役割へ移っていきます。LCPによって開発が簡単になるほど、アプリの乱立や管理不足を防ぐためのガバナンスも欠かせません。

今後の見通しとしては、まず社内業務アプリやプロトタイプ、申請・承認系のワークフローなどから、AIとLCPの組み合わせが広がると考えられます。その後、レビュー体制やセキュリティ基準が整った企業では、より重要な業務にも適用されていくでしょう。ただし、基幹システムや高い信頼性が求められる領域では、人間による設計・検証・責任ある判断が引き続き必要です。

つまり、AIはLCPを不要にするのではありません。むしろLCPは、AIが生成したアプリやエージェントを、企業システムとして安全に運用するための土台になっていく可能性があります。これからの開発手法は、「人がすべて作る」形から、「AIがたたき台を作り、人が設計と品質を担保し、LCP上で管理・運用する」形へと変わっていくでしょう。

筆者がChatGPTで生成

【参照】
AI for Low-Code for AI」(Cornell University 2023/05/31)
Microsoft lets Copilot Studio use a computer on its own」(The Verge 2025/04/16)
OutSystems Agent Workbench reaches general availability, helping enterprises streamline operations through agentic AI」(TechRadar 2025/10/01)
Assessing the Quality and Security of AI-Generated Code: A Quantitative Analysis」(Cornell University 2025/08/20)

まとめ

LCPとAI開発は、どちらも開発を速くし、より多くの人が開発に関われるようにする技術です。LCPは少ないコードで業務アプリを作る基盤であり、AIは自然言語からコードや設計案を生成して、開発作業を支援します。

AIの発達によって、LCPが不要になるわけではありません。むしろ、AIが開発のスピードを上げるほど、その成果物を安全に業務へ組み込むための基盤として、LCPの重要性は高まっていくはずです。

これからの開発現場で求められるのは、AIに任せる部分と、人が判断すべき部分を見極める力です。自社の開発現場では、AIとLCPをどのように組み合わせられるのか。まずはその視点から、これからの開発のあり方を考えてみてはいかがでしょうか。

この記事をシェアしてください

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る

企画広告も役立つ情報バッチリ! Sponsored