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ビジネスとITのギャップを埋める〜システム開発の失敗を招く4種類のギャップ〜
第１回：ビジネスとITのギャップとは何か
著者：
ウルシステムズ 林 浩一
2007/3/9
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ビジネスとITのギャップには種類がある
ビジネスの成功にとってITの活用が不可欠であるという認識が広がる中、業界を問わずシステム開発が失敗するケースが後を絶たないということが常識になっている。これにともない、企業が解決しなければならない課題として「ビジネスとITのギャップ」があげられるようになった。
開発するシステムの大小に関わらず、さらに発注先が大手ベンダー／中小ベンダーにもよらず、常に失敗は起こる。こうしたシステム開発の失敗要因がすなわち「ビジネスとITのギャップ」であり、これを理解し、解決することができればIT活用によるビジネスの成功が実現できるはずである。
では、この「ギャップ」とは具体的にどのようなもので、その解決のために何をしなければならないのだろうか。残念ながら、それについての明快な答えはまだ発見されていないのが現状だ。
本連載では、システム開発の失敗を招くギャップの正体を明らかにし、それをどう解決するかの指針について、具体的な事例を使って解説していく。第1回ではビジネスとITのギャップの種類について説明する。
システム開発の失敗とは何か
「ギャップ」とはシステム開発の失敗要因のことであるが、それを考える前に「システム開発の失敗とは何か」という点について明確にしておく必要がある。
誰の目にも明らかな失敗は「求められている機能や性能を満たすシステムを作ることができない」というものだろう。しかし、ビジネスの成功を支えるためのシステムという観点で考えると、もう少し広い範囲で捉える必要がある。
BODの観点から見る失敗パターン
システム技術が経営に与える効果を見る視点には、図1のように、大きくわけて4種類がある。
図1：システム開発の失敗パターン
図1の3つの視点はシステム技術が持つビジネス上の意味を理解するのに便利な枠組みであり、筆者は頭文字をとって「BOD評価」と呼んでいる。このBODは「ビジネス機会の要求（Business Opportunity Demand）」の意味も含んでいる。
まず「ビジネスの拡大」は、ITを使って新しい収益を得られるビジネスモデルを実現するという観点である。ビジネスモデルとは、誰にどのようなサービスを提供し、どのように代価を得るかという枠組みのことだ。経営上の効果は、新しい枠組みでのサービス提供による売上増である。
「業務遂行の効率化」は、ITを使って業務をより効率的なものにするという観点である。システムの提供する機能によって、業務の効率は良くも悪くもなる。既存ビジネスの業務遂行の場合、全体最適の視点から、より無駄の少ない円滑な業務プロセスを実現することが重要となる。また、新規ビジネスの実現の場合には、運営のための業務プロセスが確実に提供サービスを実現できるように定義することで、ビジネス目標の達成を支援する。経営上の効果は、サービス運営によるコスト削減だ。
「システム構築」は、品質の高いシステムを構築し、運用するためのコストを最適なものにするという観点である。ビジネス目標の達成／業務の効率化のどちらのケースでも、システムを導入する以上は構築コストが必要となる。経営上の効果は、システム構築のためのコストをできるだけ低く抑えることである。
システム開発失敗のパターンには、これらの3つの観点での問題に加え、最初に示したシステムが動かないという、誰の目にも明らかな失敗を合わせた4種類のものがあると定義できる。
システムによってビジネス上の目的を達成しない（Business）
システム導入で業務負荷を増やしてしまう（Operation）
システム構築の予算と納期が守れない（Development）
システムが必要な機能や性能を満たせない（IT）
表1：システム開発失敗の4つのパターン
失敗の種類がはっきりとしたところで、それぞれの失敗とギャップがどのようなものなのかを、2000年頃に筆者が関わったXMLを使った電子商取引システムの事例から紹介する。
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著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社 林 浩一
アジャイル開発手法やXML技術を駆使して、ビジネスとITのギャップを埋めるITコンサルティングを行う部門を率いるディレクター。お客様のビジネスを本当に支援できる先端技術の活用を目指して、理論と実践の両面からアプローチしている。
INDEX
第1回：ビジネスとITのギャップとは何か
ビジネスとITのギャップには種類がある
XML-EDIの事例
アクティビティのギャップ
スキルのギャップ
