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| 日本と欧米の価値観の違い | ||||||||||
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なぜ、終身雇用や年功序列が日本企業に根付いたのだろうか。なぜ、欧米ではこれらの制度の代わりに「成果主義」が根付いたのか。 今回は歴史的・宗教的・文化的背景から、日本と欧米の人事政策の根底に流れる価値観の違いを検証し、日本のあるべき人材マネジメントとは何かを考える(図1)。 |
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| 武士道と騎士道 | ||||||||||
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日本と欧米の文化的な価値観の違いを考える上で、武士道と騎士道の違いを比較してみたい。武士道は鎌倉時代から戦国時代の動乱期を経て、江戸時代に完成した。一方、騎士道は12〜13世紀の中世の封建制の下で発展していった。武士道も騎士道も忠義や礼節を重んじ、同じように見えるが決定的な違いがある。 武士道のエッセンスは君主に対する忠誠であり、滅私奉公である。自己犠牲こそが日本人の最大の美徳となったことと関係する。騎士道は君主に忠誠を誓うが、最も大切なものは自分自身の誇りであり、自身の名誉の為に戦う個人主義である。 一昨年「ラストサムライ」がアメリカでブームになった。あの映画の中で描かれていた渡辺謙扮する勝元盛次の武士の姿は、日本の武士道の姿そのものだったのか。トム・クルーズ扮するネイサン・オールグレン大尉や侍達は、何を守る為に政府軍と戦ったのだろうか。彼らは、藩や君主、或いは天皇の為に戦ったのではない。自分の信念と誇りの為に戦ったのだ。騎士道の精神を侍の姿で表現したのだ。だからあれほど欧米で高い評価を受けて、共感を持たれたのだ。 武士道の行動として、しばしば引き合いにだされるのが、赤穂浪士である。大石内蔵助は、浅野内匠神の仇を討つ為に吉良上野介を押し入り、そして敵討ちを果たした。この話は400年の時を経て、なお語り継がれている。師走には必ずテレビでリメーク版が放送され、高い視聴率を得ている。 ここで注目しなければいけないことは、大石内蔵助やあだ討ちに参加した浪人は、まず最初に浅野内匠神の息子を立てて、お家を再興できるように幕府に願い出をしていることだ。「家の存続」を第一の目標とし、これを拒絶された後、赤穂浪士は討ち入りに踏み切ったのだ。日本人にとって、所属する「共同体」の維持こそが最も大切なことなのだ。 日本人の共同体のルーツは「村」にある。村の中には暗黙のルールがあり、それを破ると「村八分」となり、葬式と火事の消火活動の二分以外は村人として認知されない。村の構成員として認知され、その中で自己実現をはかっていくことが、最も良い生き方とされてきた。 戦前の日本人は、国家の為に自身を犠牲にすることを美徳として教育されていた。そして多くの日本人はそれを当たり前のように受け入れていた。第二次大戦後、国家としての拠り所を失った日本人は「企業」に拠り所を見つけた。 |
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| 儒教とキリスト教 | ||||||||||
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儒教とキリスト教の考え方の違いも日本と欧米の価値観に大きな影響を与えている。儒教は孔子の教えである。その思想は、他人に対する自己犠牲、そして親兄弟や目上の者に対する敬愛と忠義、そしてたゆまぬ尊敬の念である。日本では、これらの思想が江戸時代に身分制度を支える基盤の思想として奨励され、武士道の君主に対する「忠義」を解く為の思想の源泉となった。 日本の社会では、相手がどのような立場でも、年上に対して敬意を表しない人間は、礼儀を欠いていると見なされる。年齢の高さが敬意を払う基準なのだ。年功序列が日本企業に適合した理由の1つである。 一方、キリスト教の教えは、神の前では全員が平等であり、神との「契約」を守ることが最も大切なことなのだ。神と人間のタテの「契約」が人間と人間のヨコの「契約」に変わった時に、近代社会がはじまった。契約とは事前に条件を明文化して、双方がその条件に合意した時に初めて効力を発する。 欧米では職務給が一般的である。特定の職務に対しては詳細な職務記述書が存在する。職務記述書には、職務の義務・責任、物理的環境、職務に就くのに必要な知識・経験・技能・資格・学歴などについて細かく記載されている。職務記述書に記載されていること以外はやる必要はない。また、それ以外のことを行なえば、他の人の仕事を奪う行為と見なされる。 その前提は「契約」の概念がある。そのポジションの期待値に添えていれば、昇給やインセンティブがでるが、期待に添えない時は昇給はおろか、新しいポジションを見つけなければいけなくなる。なぜならば、その社員は「契約」を破ったことになるからだ。日本の企業でも職能要件書は存在するが、個人の仕事の範囲は曖昧であり、しばしば「できる社員」に仕事が集中する。 |
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