KubeCon+CloudNativeCon North America 2025レポート 11

KubeCon North America 2025、DevOps(CI/CD)をサービスとして提供するHarnessのフィールドCTOにインタビュー

KubeCon North America 2025、HarnessのフィールドCTOにインタビューを実施した。

松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

6:00

KubeCon+CloudNativeCon North America 2025からCI/CDをサービスとして提供するHarnessにインタビューを実施した。対応してくれたのはフィールドCTOのMartin Raynolds氏だ。Harnessは起業家のJyoti Bansal氏が創業したDevOpsに特化したベンチャーだ。Bansal氏はApplication Performance MonitoringのAppDynamicsを創業してCiscoに売却したことでも知られている。

Harnessはすでに2000名を超える社員を抱え、アメリカ、ヨーロッパ、インド、アルゼンチンに拠点を持つ大企業と言える。DevOpsという非常に競争の厳しい市場における自社の優位性などについてインタビューを行った。

インタビューに応えるMartin Raynolds氏

インタビューに応えるMartin Raynolds氏

簡単に自己紹介をお願いします。

私はHarnessでフィールドCTOとして働いています。顧客と対話して問題をどうやって解決するのか、顧客のソフトウェア開発をモダナイゼーションするための方法などを考えてソリューションとして提供するのがミッションです。私自身はエンジニアとしてキャリアをスタートしましたが、DevOpsの領域で大半の仕事をしてきました。そして前職の時にHarnessを自社に導入して使うことを決めたんです。その頃はHarnessが創業したばかりで全世界でも最初の5つの顧客のうちの一社でした。ヨーロッパでは最初に導入を行った企業だったと思います。なので最初はエンドユーザー、現在はHarnessでDevOpsのモダナイゼーションを推進しているということになりますね。=== つまりエンドユーザーからベンダーに移ってHarnessのソリューションを顧客に広めているということですね。Harnessの良さはどんなところなんですか?

Harnessのことを簡単に紹介すると包括的なDevOpsのプラットフォームを提供しているということになりますが、過去を振り返って説明します。2017年の頃は継続的インテグレーション(CI)の領域には多くのベンダーが参入して混みあった市場だったと思いますが、継続的デリバリー(CD)の領域にはJenkinsぐらいしか存在していませんでした。ArgoCDは2017年に始まったばかりでした。Harnessも2017年に創業したばかりでしたが、早い段階からサービスとしてGitOps、CDを提供するというコンセプトでプロダクトを開発していました。それがエンドユーザー企業のDevOps担当だった私の目に留まったということですね。そこからHarnessはCIやアーティファクトレジストリ、フィーチャーフラッグ、カオスエンジニアリングなどにカバーする領域を拡げています。生成AIを使ったテストツールも含まれていますし、SREをアシストするための機能なども提供しています。AIを活用してDevOpsと運用、テスト、セキュリティ、コスト管理まで包括的に顧客のシステムを支援するというのが他社との差別化のポイントだと思います。

HarnessはSaaSだと思いますが、ソフトウェアのコアはプロプライエタリーのソフトウェアということですか?

簡単に言うとオープンコアのモデルを使っているということになりますね。コアの部分はオープンソースとして顧客が無償でシステムに組み込むことが可能です。Harnessのサービスとしてもフリーのプランを設定していますので、個人での利用や少人数のチームであれば無償で使うことが可能です。

またサービスではなく自社のシステムに組み込みたいというニーズにはオープンソースのHarness(Harness Open Source)がGitHubに公開されていますので、それを使うことは可能です。

●参考:https://github.com/harness/harness

オープンコアということは機能としてはエンタープライズ向けの物が別に追加で用意されているということですか?

そうですね。しかしエンタープライズ企業にとっては、機能だけではなくて信頼できるサポートが提供されるのか? これが重要になってきますので、サポートが充実したHarnessのSaaSを選択する理由は大いにあると思います。

Harnessブースで記念撮影

Harnessブースで記念撮影

カオスエンジニアリングについて簡単に触れられましたが、Litmus Chaosを提供しているということですか?

オープンソースのLitmus ChaosはCNCFのプロジェクトですが、そのコードの90%はHarnessのエンジニアが貢献していると思います。HarnessのカオスエンジニアリングプロダクトはLitmus Chaosをベースにして商用版として開発・提供されています。Harnessの強みはこうしたDevOpsを支えるさまざまな機能を、プラグインなどに依存することなく提供できることだと思います。

CD以外のツールが必要になった背景を説明しますと、ソフトウェアはソースコードを書いてビルドして本番環境にデリバリーすれば良いだけではないんです。その途中にはどんなライブラリーが使われているのかを提示しなければなりませんし、テストについても政府機関などが要求するレジリエンシーテストにパスする必要があります。かつてに比べれば面倒なことをしなければいけないという背景にあるのはEUやアメリカの政府などが決めた規制なんです。なのでビルドしてテストしてデリバリーというシンプルなパイプラインは、すでに過去のものと言っても良いかもしれませんね。そうした多様な要求を満たすDevOpsのプラットフォームがHarnessということになります。それが、Harnessが多くのエンタープライズ企業から選ばれている理由だと思います。

昨日、インタビューしたGitLabの人はHarnessについてGitLabのほうが良いとコメントしていました。それについて何かコメントすることはありますか?

私がコメントするよりもGartnerのDevOps Platformに対するMagic Quadrantのレポートを読んでもらったほうが良いと思いますね。他社の製品について何かコメントすることは止めておきます。しかしHarnessは単なるツールではなく、包括的なDevOpsのソリューションを提供していることは強調しておきたいと思います。CI/CDだけではなくデプロイメントのセキュリティモニタリングやAPI管理、APIテスティングなどの機能をすべて提供できるのはHarnessだけだと思います。

●注:Gartnerのレポートは以下のリンクから必要項目を記入することで参照することが可能だ。

●参考:https://www.harness.io/resource/gartner-magic-quadrant-for-devops-platforms-2025

Harnessが提供しているAIに関する機能について説明してください。多くのプロダクトでAIが使われているようですが。

AIについてですが、Harnessは創業当初から多くの時間を使って開発を行ってきています。一つの例を挙げると、CI/CDのパイプラインをHarness上で実行した際にエラーが起こったとしてそれは何が原因なのか? という部分にAIを使って原因を解明します。これには一般的なCI/CDに関する知識が必要ですが、それに加えてナレッジグラフを使って顧客に特有の構成や仕様を読み込んだ上で原因解明を行うことが可能になります。これは一般的なCI/CDの情報だけでは特定できないような複雑なエラーに対しても原因解明を行うことが可能になるわけです。そしてDevOpsエージェントが常にHarnessの上のプロセスから情報を得て修正方法や提案することも可能になっています。テストについても自然言語でテストしたい内容を入力するとそれに従ったテストコードを作ってテストまでを行うということも可能です。

それはコーディングの時のアシスタントをコーディング以降の作業にあてはめた感じですね。

我々は「AI Agent everything after Code(コーディング以降のすべての作業を支援するAIエージェント)」というように呼んでいます。HarnessはAIをソフトウェア開発ライフサイクルのすべての工程に適用しています。

課金体系はどうなっているんですか?機能単位の課金なのか、それとも利用ベースの課金なのか教えてください。

課金はデベロッパー単位になっています。カオスエンジニアリングなどのプロダクトについては、ユーザーベースではなく利用ベースの課金になっています。それはツールの用途によって変わります。

日本での活動はどういう状態ですか? RaynoldsさんはCTOなので営業ベースの質問をするのはお門違いなのは知っていますけど。

日本ではどういう活動をしているのかについて、私は情報を持っていないのでコメントすることはできませんが、Harnessは金融機関を始めとして規制が厳しい業界では多くの顧客を持っていますし、公開されている利用事例も多くあります。シティバンクもそのひとつです。金融業界は世界展開を行う中でそれぞれの国の規制をクリアするためにHarnessのソリューションを利用しているんです。やりたいことは同じでも、国ごとの規制により求められる内容が異なることはよくあることですので、それをカスタマイズで対応するのではなく最も厳しい規制をクリアできたプラットフォームを選ぶというのは妥当な発想だと思いますね。

まだ日本では知名度が低いHarnessであるが、CI/CDに限定せずにカバーする領域を拡げるプロダクト戦略と生成AIを至る所に応用する開発力、そして課金のシンプルさがポイントだろう。シティバンクやユナイテッド航空が採用しているのも業界に課された多くの規制をクリアできる開発力によるところが大きいと思われる。外資系のITベンダーが日本での活動を成功させるためにはローカライズと拠点の開設、パートナーを持つことが必須とされていたが、それも変わるのかもしれない。引き続きHarnessに注目していきたい。

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