Open Infrastructure Summit上海、楽天モバイルのフル仮想化ネットワークに注目
上海で開催されたOpen Infrastructure Summit 2019では、オープンソースソフトウェアを活用したインフラストラクチャー、特にOpenStack、IoTエッジ、CI/CDなどのセッションとユーザーからのユースケースに関するセッションが行われた。今回の記事では、その中から楽天モバイルのセッションを紹介しよう。
これは楽天モバイルのVP of Cloud Engineering and OpsであるAshiq Khan氏によるセッションで、新たなMNO(Mobile Network Operator)である楽天モバイルが、5Gを見据えたコアネットワークをOpenStackをベースにした仮想化基盤で構築を行ったという内容である。
ちなみにこちらのセッションは、Ciscoがスポンサーについている枠であるということは記しておきたい。単純に言えば、楽天モバイルのプラットフォームはOpenStackをベースにしたフルの仮想化プラットフォームであるが、CiscoとNokiaがベンダーとして深く関わっており、いわゆるオープンソースソフトウェアであるOpenStackをユーザー自身がゼロから構築したというものではない。ソフトウェアはCiscoとNokia製で、ハードウェアはホワイトボックスサーバーのトップメーカーであるQuanta Cloud Technologyが製造したものであり、これらを組み合わせている。そのためCiscoの立場からすると、自社のソリューションのショーケースとして楽天モバイルを選択した、という見方もできるだろう。
しかしまったくのゼロからモバイルネットワークを立ち上げたという事例として非常に注目されており、セッション会場となった会議室もほぼ満員という状況でセッションは開始された。
Khan氏の最初のスライドでは、楽天モバイルのプラットフォームが欧州電気通信標準化機構(ETSI:European Telecommunications Standards Institute)のネットワーク機能仮想化(NFV:Network Functions Virtualization)の規格に準拠していることが紹介された。しかしポイントは、何よりもすべてゼロから構築したという部分だろう。
そしてRakuten Cloud Platform(RCP)と称されたシステムの概要がこれだ。
左側のアンテナからvRAN、EPC Core、IMSというモバイルネットワークの各要素が並び、スライドの右側にCisco、Intel、Nokia、QCTなどがリストアップされ、楽天モバイルに協力しているベンダーがわかる。
そして中央に設置されるセントラルクラウドと基地局側に設置されるエッジクラウドの2つを連携させて、ネットワークを運用する形式になる。セントラルクラウドは東京と大阪のデータセンターに設置され、障害時にはスイッチングされることで冗長性を実現しているという。
エッジとデータセンター側の双方でOpenStackが稼働しており、その単位はPODと呼ばれるもので、その中にモバイルネットワークの機能を実装するVNF(仮想化ネットワーク機能)が稼働している。
またPODのデプロイなどはすべて自動化されており、オペレーターによる手動の操作を省いていることなどが解説された。
自動化はセントラルクラウドだけではなくエッジクラウドにおいても同様であり、自動化がこのプラットフォームにおいてポイントであることがわかる。
また日本で行われたカンファレンスなどでも紹介されていたが、基地局のアンテナとRRU(リモートラジオユニット)のセットとBBU(ベースバンドユニット)を分離して軽量化した設備に関する解説などにも、注目が集まった。BBUをエッジ側に分離することで、設備一式が20kg以内に収めらており、設置に必要な人員を減らすことができたという。
また設置から稼働までにかかる時間も大幅に短縮され、15分で立ち上がるようになったと語った。国内では基地局設置の遅れなどを指摘されている楽天モバイルだが、プラットフォームに関して言えば先進的な試みをしていると言えるだろう。
システム全体の特徴を表すスライドではCiscoのACI(Application Centric Infrastructure)が掲げられ、5Gに向けてのスケーラビリティを実現できることが強調された。
またデータセンターからエッジにいたるまで、すべてのエリアで自動化が行われていることも強調され、ソフトウェアでの実装と自動化が大きなポイントであることがわかる。
セッション後には、参加している中国人エンジニアから質問が多く寄せられるなど、興味の高さが表れたセッションとなった。
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