Civo Navigate North America 2024を紹介。低価格でベンダーロックインしないクラウドベンダーのCivoとは?
イギリスで起業されたクラウドネイティブなソリューションを提供するCivoが開催したCivo Navigate North America 2024を取材した。テキサス州オースティンで開催された2日間のイベントの概要とキーノートを紹介する。
会場はテキサス大学オースティン校
Civoは2019年にイギリスで創設されたベンチャーで、アメリカではDigital Oceanと似ていると言われることもあるIT企業だが、Kubernetesをサービスとして提供しているほか、ハイパースケールのパブリッククラウドプロバイダーを下回る価格でのサービス提供を売りにしている企業だ。そのCivoが始めたテックカンファレンスがCivo Navigateである。2023年2月にフロリダ州タンパで最初のカンファレンスが開催され、その後、2023年9月にロンドンでも開催、3回目として今回テキサス州オースティンで開催されたというわけだ。場所はテキサス大学オースティン校のキャンパスにあるAlumni Centerという建物を借り切って行われていた。
このエントランスの写真を見れば理解できるが、複数の会議室を持つ建物ではあるが規模は小さくキーノートが行われた部屋を除いてどれも100名程度が着席できる規模だ。
2月のオースティンは気温が高く湿度が低いという過ごしやすい気候のためか、屋外で行われる会場も用意されていた。
またエントランスから会議室に至る通路には展示ブースが用意されており、イベントのスポンサーがそれぞれブースを展示していた。
2番めに行われたキーノートセッションを紹介
初日の最初のセッションはキーノートとなるのが通常だが、今回は元DockerのSolomon Hykes氏を招いたパネルディスカッションが行われた。そしてその次に行われたのがCivoのCEOで共同創業者のMark Boost氏のセッションだ。今回はその内容を紹介したい。
このセッションはCivoの存在する理由と価値を紹介するものであり、これこそCivoが最も伝えたかったことと言って良いだろう。テーマは「Cloud is Broken(クラウドは壊れている)」だ。
テーマである「クラウドは壊れている」というのは、最初にパブリッククラウドを始めたAWSがそのユーザーベースと先行者利益をそのままモノポリーとベンダーロックインに繋げてしまっているという主旨である。
Boost氏は2012年のAWSのプライベートカンファレンスでのコメントを紹介し、当初は低価格でコンピューティングリソースをユーザーに提供することがモットーであったことを紹介。
しかし多くのメディアが報じるように、AWSを始めとするパブリッククラウドベンダーはユーザーをロックインし、価格を上げ始めていることを紹介し、このコスト上昇が多くのユーザーにとっての共通の悩みになっていることを説明。
そしてFlexeraのリサーチ結果を紹介し、多くの企業がパブリッククラウドのコストを最大の問題と考えていることを紹介した。
そしてCivoが行ったリサーチでも、52%のユーザーはパブリッククラウドが当初約束していた低コストを守れていないと感じており、47%のユーザーがパブリッククラウドからの移行を考えていることを紹介。
そしてCivoはかつてパブリッククラウドが掲げていた「低コスト」というテーマを守り、オープンなソフトウェアを使うことでロックインを防ぐことを目指していると説明した。
具体的にはAWSなどのハイパースケーラーと比べて約60%低いコストでサービスを提供し、ベンダーロックインをしないというのがメッセージだ。
また企業としての姿勢も紹介。ここでは企業として持続することとオープンスタンダードとインターオペラビリティを守ること、コミュニティを重視することなどが説明されている。ワーカホリックな日本人にとって注目すべきは、最後に挙げられた週4日の勤務という部分だろうか。
展示ブースのようす
展示ブースについても紹介しよう。KubeConなどでは見かけないスタートアップが多かったのは、出展コストの低さが表れていると言えるだろう。
主催者であるCivoは説明員などを置かずにノベルティを配布するだけのブースを設置していた。
サーバーレスのワークロードを実行するSpinフレームワークを紹介するFermyonもブースを構えていた。Matt Butcher氏もブースで説明を行い、新しく制作した「Phippy's Field Guide to WASM」という絵本を配布していた。
●参考:Portainer
●参考:Northflank
●参考:FOSSA
●参考:Middleware
●参考:Pieces
●参考:Defense.com
●参考:Cerbos
どのブースも小さいながら参加者と対話することで自社のプロダクトやサービスを訴求していた。Civo Navigateは言わばローカルなITカンファレンスという規模だが、AIやセキュリティ、オブザーバービリティなどのトピックを揃えているだけではなく、イギリス発祥というところからDeep Greenの取り組みを紹介するセッションなどもあり、規模は小さいながらも興味深いイベントだったと言える。
●参考:Deep Green
ちなみにDeep Greenはイギリス発の企業で、データセンターの廃熱を温水プールなどに活用することでエネルギーコストを下げつつ、分散コンピューティングを提供するデータセンターを展開している。
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