ビジネス・プロセス・マネージメントの現状 〜 「経営と情報の架け橋」の実現にむけて 4

複数ユーザによるモデリング環境

複数ユーザによるモデリング環境

一人で企業活動全体のビジネス・プロセスを描くことは、非常に大変なことです。従って、当然複数人でのモデリングを行う環境が必要となります。ARIS は、モデルやオブジェクトをデータベース内で管理しているため、そのデータベースに、図4(左)のように複数人が同時にアクセスすることができます。

こうして複数人でのモデリングが行われた場合、その人員構成がモデリングのベテランから初心者まで居た場合、どうなるでしょうか?答えは非常に簡単です。当然、記述にバラツキが生じます。そのバラツキを低減するために、各モデリング担当者が使用できるモデルやオブジェクト定義に制限を設けるメソッ ド・フィルターという機能があります。

この機能を利用して、初心者のモデリング担当者には、非常に限られた一部のモデル・オブジェクトだけを利用させます。そして、ベテランのモデリング担当者が、新たなモデル記述を検討し、随時、使用可能なモデル・オブジェクト定義を増やしたメソッド・フィルターを作成し、初心者のモデリング担当者に公 開しながら、企業活動全体を徐々にモデル化していくことができます。

複数ユーザによるモデリング環境(左)とフィルター機能(右)

図4:複数ユーザによるモデリング環境(左)とフィルター機能(右)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

モデリングを始める前に

これまでに、ARISというツールの機能のご紹介を行いました。では、どのような領域から、どのようにビジネス・プロセスのモデリングを開始すればいいのでしょうか?この疑問に答えるために、IDSシェアーでは、ARISの活用手順に関するフレームワークを持っています。これが、ツールとフレームワークの両輪が必要な 由縁です。

では、そのフレームワークの一部を紹介したいと思いますが、このフレームワークに関してもARIS House同様、理解が困難なものではありません。聞けば、確かにそうだなと思われることですが、なかなか実践されていないことです。

そのフレームワークとは「モデリングの前にやるべきこと」を確実に行うことです。IDSシェアーでは、モデリング作業に入る前に、前述した業務の粒度の定義のようなモデリング・コンベンションという、モデル記述に関する規約を取り決めます。

まず、決定しなければいけないことは「何のためにモデルを記述するのか?」です。これが決まってないことにはモデリングを開始できませんし、何を書けばいいのかも分かりません。IDSシェアーでは、例えば、「業務負荷が下がるように業務手順を変更するため」や「システム化可能な業務を洗い出すため」などの目的を明確にし、その目的を「目的図」というモデルとして記述することから開始します。このように、企業の担当者が、モデル化の目的を見出すための支援を行い、その目的を明確に定義することが、ビジネス・プロセス設計作業の第一歩となります。

この作業は、後の作業で作成するモデルの種類やモデル構成を決定していくためにも非常に重要です。業務手順を変更するために、システムの細かい内部情報までモデル化する必要はありません。また、システム化可能な業務を洗い出すには、業務で必要な情報・データの洗い出しが不可欠です。

更に、モデリングの目的だけではなく、誰がモデリングを行い、以後ビジネス・プロセスを誰が管理していくのか、というプロセス管理についての役割分担や体制も明確にしていく必要があります。

最近では企業の情報システム部は、企業本体から切り離され独自採算を問われるケースがあるかと思います。そのような状況を受け最近では、情報システム部に対して、従来の情報システムを管理するだけではなく、社内のビジネス・プロセスを管理する役目を担うことが要求されています。企業の情報システム部は、自らの存在意義を従来の機能から変更する必要性が増しています。先進的な企業においては、情報システム部門配下にプロセス管理部を新たに設置する動きも出てきています。

このような状況下では、プロセス管理部の業務内容や役割分担をコンベンションにて明確にすることが、非常に有効であると考えられます。

実は、このように、ビジネス・プロセスをモデリングするための目的や、その体制・役割分担を明確にすることが、実は、モデリングの大半を占めていると言っても過言ではないと考えています。

そのほか、コンベンションとしては、モデル・オブジェクトの命名規約や前述したメソッド・フィルターの定義などありますが、ここでは、これらの詳細な説明は省略させて頂きます。

この記事をシェアしてください

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る