教育現場におけるオープンソース実証実験 3

トラブル事例

トラブル事例

   オープンソースによるWebブラウザやオフィススイートの完成度も現在ではかなり高くなっているため、それらのアプリケーションを中心に使っている 範囲では、プラットフォームをWindowsからLinuxに入れ換えたとしてもそれほど使用方法が変わることはありません。

   実際に、細かな操作方法の違和感さえ拭えれば、ほとんど同じように使えることを示すことができました。特に子ども達はすぐに環境に慣れ、先生方からの意見の中には、「子どもに教えてもらった」という声さえありました。

   しかし、オープンソースデスクトップが一般ユーザでもほとんど問題なく使えるようになってきているとはいえ、やはりまだ作り込みがこなれていない部分が残っており、細かなトラブルはありました。ここではそのようなトラブルの事例を1つ紹介します。

Webブラウザが使えない?

   岐阜県に導入した環境では、WebブラウザとしてMozillaを使用していました。当時の Mozillaも非常に安定しており、埋め込み動画の問題やInternet Explorer向けとして特別にカスタマイズされたページが閲覧できない、といった不都合を除けば、ほとんど何の問題もなく授業で活用することができま した。

   ところが、ごくまれにMozillaがcoreを吐いて突然終了してしまうことがありました。その際に、ロックファイルが残ってしまい、次に正しく起動できなくなるという現象が授業中に発生しました。

   このトラブルの解消は、「ロックファイルを消す」という対処が必要です。コマンドラインから次のようにすれば、無用なロックファイルを消すことがで き、次からはMozillaを通常どおり起動することができます。しかし、これを子ども達にそのまま教えることは、適当ではありません。
 

$ find ~/.mozilla -name lock -exec rm {} \;

   このような不測の事態に対する対応の自動化も、オープンソースデスクトップの課題の1つといえるでしょう。

 

岐阜県の先進性

   岐阜県は、1990年代から県独自の教材コンテンツ作成と収集に力を入れてきました。岐阜大学教育学部の総合メディアセンターがその研究と実践の中核になっています。

   当時はLinuxは対象ではありませんでしたが、県の教育委員会によると、当初からWindowsでもMacでも利用できるような教材コンテンツ作成を意識してきたといいます。

   OSによって授業が左右されてはならないという意識のもと、プラットフォームに依存しない教材作成を推進する共通コンテンツ作成のワーキング・グループが組織され、研究と教材の開発が行なわれてきました。

   最近では、OSに依存しないコンテンツ研究のプラットフォームとしてLinuxも対象になり、Linuxを対象とした教材開発と集積も考慮するよう になりました。ただし本格的なLinuxの導入学校がないことから、今回の実証実験への参加はまさに岐阜県としても大きなメリットがありました。

   先に紹介した数学の教材ソフトウェアは、もとはVisual Basicで作成されたコンテンツでした。しかし上記の理由から、現在ではすべてJavaで書き変えられています。その結果、今回のLinuxデスクトッ プ導入後、ほとんど問題なくそのまま数学ソフトウェアをLinux PCで利用することができました。

他県との交流

   今回の実験期間中、Linux導入調査として、島根県松江市の教育研究機関から研究員の訪問がありました。

   この研究機関では、松江市でのLinux導入を前提に全国のLinux導入校を探したところLinuxの導入校の情報はほとんどなく、最終的に IPAの実証実験のニュースリリースを見て附属小学校に問い合わせをしたとのことです。その結果、附属小学校では訪問を受け入れ、今回のLinuxデスク トップ導入の事例を松江市にも紹介することになりました。

   また2005年2月9日につくば市の吾妻小学校で行なわれた公開授業には、岐阜県の先生方にも参加していただき、つくば市の学校でのLinux PCの使われ方を岐阜県の先生が知る機会を設けました。さらに情報交換会を行ない、岐阜県とつくば市での授業実践やLinuxに対する双方の考え方などに ついて議論しました。

   このような機会の積み重ねが、学校でのITシステムのオープン化のための着実な歩みとなることを期待しています。

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