子どもたちの意見
子どもたちの意見
子どもたちからもLinuxデスクトップPCについての貴重な意見を収集することができました。ほとんどの子どもたちは、アンケート用紙の自由記述欄に自分の意見を熱心に書き込んでくれました。
1000人強からの意見のすべてに目を通してその傾向を分析するのは大変な作業でしたが、微笑ましい意見にはこちらもやりがいを感じ、また歯に衣着 せぬ厳しい意見には襟を正させられる気持ちになりました。素直な意見を集めることができたのは、プロジェクトで得られた大きな財産と感じています。
子どもたちからの意見で比較的多かったものに、ノートなので持ち運べてよいとか、マウスではなくトラックポイントなのが良かった/悪かった、という ハードウェアについての指摘がありました。これらのコメントは、とくにLinuxだから、という問題ではありません。多くの子どもたち、特に低学年の子ど もたちにとってはOSが何なのか、ということはまったく意識していなかったのです。また単純に新しいPCが導入されたことを素直に喜ぶ声も多くみられまし た。
小学校の高学年や中学生からは、Linuxであることに対するしっかりした意見も得られています。主なところでは、次のような意見が集まりました。
- 英語の表記が難しい
- 用語、アイコン、操作が少しずつ違って使いにくい
- かな漢字変換の方法が違って迷った
- 起動と終了の操作は簡単。ただし、起動が遅い
- フロッピーの操作が難しい
- 画面が見やすいく、表示がきれい
- Windowsと操作性が大差ないから困らない
- プレゼンソフトが付属していて便利
そのほか、つくば市の実証実験ではスタディノートに依存した授業も多かったので、Linux版の「スタディノート」がないという指摘もありました。 また岐阜の子どもたちからの指摘で、ログインアカウントの管理について、特に低学年の児童にとっては問題があることも明らかになりました。
評価の総括
以上、駆け足ながらLinuxデスクトップPC活用に関する実証実験のアンケートによる評価結果を紹介しました。アンケートの結果から、今後解決していくべきいくつかの課題が明らかになっており、主なものを表4に示します。
- Windowsとの高い互換性があり、同じような操作感を実現する
- 教育用ソフトウェアの充実が望まれている
- 周辺機器とリムーバブルメディアの取り扱いにはまだ改善の余地が多い
- アイコンとメニュー操作の違いなどの戸惑いの元がある
- 画面のユーザビリティは遜色ない
- ログインアカウントは工夫が必要
- 起動時間を短くすべし
- ライセンスコストがかからないことは大きな優位点
日々進化を続けているOSSデスクトップ環境なので、本連載で列挙した指摘事項の中には、すで解決しつつある問題もあります。しかし技術的に改善の 余地がある項目もまだたくさん残されています。筆者もOSS開発者の端くれとして、これらの課題の解決に寄与していきたいと考えています。