連載 [第15回] :
  Gen AI Times

【号外】議員会館で伝えた可能性、生成AIで変わる教育者の働き方

2024年9月20日(金)
髙橋 和馬
本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。

はじめに

本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している8名で運営しています。「半歩先の未来をエスコートする」をコンセプトに、情報を得るだけで終わらず、皆様の行動や考えに反映できる情報をお届けします。注目の生成AIニュースを収集し、個性豊かなメンバーによって深掘りされた記事をぜひお楽しみください! そして、この連載を通して、皆さまも各々の半歩先の未来を想像しながら、いろいろな価値観を楽しんでいただけると幸いです。

今回は、「生成AIによる教員の業務効率化」をテーマとしたワークショップの内容をお届けします。事務作業を210分から45分に短縮する方法や授業案の企画など、教員の方々はもちろんのこと、ビジネスパーソンにも転用できる内容となっております。また、記事の末尾には、今すぐ使えるプロンプトやオリジナルGPTsを掲載していますので、ぜひ最後までお読みください!

「教育AIサミット2024」

8月2日〜3日に開催された「教育AIサミット2024」でIKIGAI lab.が担当したワークショップの内容を紹介します。本イベントの副代表を務めた伊藤雅康氏はIKIGAI lab.所属で、本コミュニティから約10名ほどがイベントに参加しました。

イベント代表を務めたみんがくの佐藤雄太氏

イベント副代表を務めた伊藤雅康氏

「教育AIサミット2024」の概要は、こちらとなります。

▼教育AIサミット2024
AIを活用し、教育の質向上を目指すイベントです。国会議員会館でのリアル会場とオンライン配信で、有識者の講演、アイデアコンテスト、ワークショップなど多彩なプログラムを提供。最新の教育AI活用事例や技術を体験し、未来の教育を切り拓くチャンスをお見逃しなく!
(【引用】https://ai-ueo.org/)

【DAY1】
◇2024年8月2日(金) 9:30~17:30
会場: 衆議院第一議員会館(国際会議室・多目的ホール)
テーマ: 生成AIで変わる近未来の教育を体感せよ

【DAY2】
◇2024年8月3日(土) 10:00~17:00
会場: オンライン会場(配信: 株式会社インプレス本社スタジオ)
テーマ: 環境的制約を越える教育×生成AIの可能性

2日間で、合わせて2,000名の方々に参加いただいたイベントとなりました。

●株式会社みんがく
【開催レポート】一般社団法人教育AI活用協会が、国会議員会館等で8月に開催された「教育AIサミット2024」開催レポートを公開(2024/9/2 PR TIMES)

私たちIKIGAI lab.は、DAY1に下記2件のワークショップを提供させていただきました。

  1. 生成AIで教員の働き方を変える
  2. 生成AIで変わる未来の授業

どちらのテーマも生成AIを使いこなす現職の教員の方がリーダーとなり、本当に現場が課題感を持っている業務に関して、生成AIを適用しました。本記事の後半ではアンケート結果にも触れますが、手触り感ある課題に対して、参加していただいた教育関係者の皆様からも大きな共感を得られています。

立ち見が出るほどの人気でした(IKIGAI lab.ブース)

1. 生成AIで教員の働き方を変える

ワークショップスライドの表紙

このワークショップでは、現役教員のとある1日の事務作業を分析し、生成AIを活用して、どれほど業務時間が短縮できるのかに挑戦しました。取り組んだ事例は下記の4つです。

  1. 授業準備:特別な支援を必要とする生徒に合わせた個別最適な授業を提案
  2. 研修報告書作成:音声入力を活用して一瞬で報告書を作成
  3. 議事録作成:文字起こし機能+生成AIを活用して会議後の業務を短縮
  4. 保護者アンケート分析:NotebookLMを活用して誰でも上級者の分析が可能
  • AI活用前:
    1. 授業準備:60分
    2. 研修報告書作成:30分
    3. 議事録作成:60分
    4. アンケート分析:60分
    合計作業時間:210分
  • AI活用後:
    1. 授業準備:10分(△50分)
    2. 研修報告書作成:5分(△25分)
    3. 議事録作成:20分(△40分)
    4. アンケート分析:10分(△50分)
    合計作業時間:45分(2時間45分の短縮)

結果:2時間45分の時間短縮に成功

議事録作成や報告書作成、アンケート分析など、企業に勤める方々にもご活用いただける内容でした。具体的な活用方法やGPTsは、下記の紹介記事をご確認ください。

●生成AI最前線「IKIGAI lab.」
【驚愕】生成AIで教員の事務作業が激減、教育現場の未来とは?(2024/7/29 NewsPicks)

ワークショップの様子(黒田一之氏)

ワークショップ様子(田中悠介氏)

ワークショップの様子(著者:髙橋和馬)

ワークショップの様子(中嶋正純氏)

2. 生成AIで変わる未来の授業

ワークショップスライドの表紙

このワークショップでは、教育現場でのAI活用、特にChatGPTの実践的な活用に注力しました。授業準備から授業実践までを一気通貫したグループワークにより、生成AIの活用と学びを深めました。

ワーク① 授業の準備(10分)
授業内容を生成するプロンプトをChatGPTに入力し、生成された内容をチームで共有します。その後、実践する授業内容を1つだけ選び、各メンバーの役割分担を決めます。

ワーク①で利用したプロンプト

ワーク② 授業の実践(30分)
選択した授業を実際に行います。先生役がテーマを発表し、簡単なレクチャーを行った後、ChatGPTで生成した質問をもとにグループワークを実施します。

ワーク②の流れ

授業内容を考えるという0→1のプロセス効率化を体験することにより、生成AI活用のハードルを下げるというのがこのワークショップの狙いです。より業務に直結した内容だからこそ、参加者の方々の満足度も高かったです。

ワークショップの様子(内田央氏)

イベントのアンケート結果

イベントに関するアンケートには、合計44名の方々にお答えいただきました。その集計結果を中嶋正純氏にまとめていただいたので、共有いたします。

満足度は驚異の4.9/5.0でした。満足できる/やや満足できる/普通/やや満足できない/満足できないの5段階で評価していただき、満足できるが 86%(38名)、やや満足できるが14%(6名)でした。

  • 実際に現場で活用できるノウハウを知ることができた
  • 気軽に生成AIを使うことで効率化できると感じた

など、現職の教員メンバーが課題に感じていることをワークショップにしたことが、満足度を高めた要因でした。

ワークショップ満足度の結果

満足度の要因

また「生成AIを学校業務で使ってみたいですか?」という問いに対しては、 84%の方が「使ってみたい」と答えてくれました。具体的に行動できるレベルまで、ワークショップで説明したため、実際に活用できるイメージを持っていただけたと思います。

「まずは使ってみたい!」と思っていただけることが第一歩です。そこから実際に行動できるようにIKIGAI lab.一同、情報発信を続けたいと思います。

生成AIを学校業務で使ってみたいかのアンケート結果

アンケートのまとめ

【特別特典】プロンプトを大公開!

最後に、ワークショップで紹介したプロンプトを公開します! イベントに参加された方も、参加されていない方も、ぜひご活用ください。

【音声入力による研修報告書作成GPTs】
音声入力により研修報告書の作成を効率化するGPTs「【教員向け】研修報告ラクラクさん」です。実際に喋る内容は、下図の「#」で記載されている報告者・研修日時・研修場所・研修目的・講師の名前・研修内容・感想・写真(後から挿入)となります。

順序立てて話す必要もないので、思い付いた内容から話していただければ、後からGPTが内容をまとめてくれます。また、必要項目を話し忘れていた場合は、GPTsから「足りていない情報」について質問してくれるため、抜け漏れない報告書の作成が可能です。

あなたはプロのライターであり、天才プレゼンターです。

研修報告書を作成するために、入力された情報を下記の内容に分類して、文章を整えてください。

また、レポートを作成するにあたり、足りない情報があればユーザーに確認してください。

#報告者

#研修日時

#研修場所

#研修目的

#講師の名前

#研修内容

#感想

#写真

上記の構成で文章を作成する際に、必ず不足している項目があれば、ユーザーに質問してください。これは必ず守ってください。とても重要です。

研修の内容で最も重要な要素も聞き出してください。

質問例:) 写真はありますか?研修内容を補足してください。感想を教えてください。

最後に、研修報告書をチャット欄にHtml形式で出力し、同時にWordファイルでも同じ内容を出力してください。研修報告書の見栄えは重要です。美しくしてください。

【議事録作成プロンプト】
文字起こしされた内容をプロンプトに入力することで、議事録の叩き台が作成されます。独自のフォーマットがあれば「## 職員会議 議事録」より下のフォーマットを変えてください。

#役割と目的
・あなたは議事録のプロです。これから貼る会議のメモの内容を元に下記のフォーマットで議事録を作成してください。
・この打合せで発表があった内容、議論された内容を、それぞれテーマ別に詳細に整理して書きだしてください。内容を整理する際はSOAPのフレームワークを参考に詳細に情報整理してください。コンテキストが不足している場合は必要なコンテキストを追加して、この会議に参加していない人でも理解できるように書いてください。
・あなたにとって一番大事なことは、漏れなく書き込むことであり、あなたの憶測で書くことを禁じます。

## 職員会議 議事録
## 基本情報
- 日時: [年月日, 曜日] [開始時間] - [終了時間]
- 場所: [会議室名/オンライン会議システム名]
- 議長: [氏名]
- 書記: [氏名]
## 出席者
- [出席者氏名リスト]
## 欠席者
- [欠席者氏名リスト]
## 議題
1. [議題1]
2. [議題2]
3. [議題3]
...
## 議事内容
### 1. [議題1]
- 討議内容:
- [主な議論ポイント]
- [意見や提案]
- 決定事項:
- [合意された事項]
- 行動計画:
- [実行すべき項目と担当者]
### 2. [議題2]
- 討議内容:
- [主な議論ポイント]
- [意見や提案]
- 決定事項:
- [合意された事項]
- 行動計画:
- [実行すべき項目と担当者]
### 3. [議題3]
- 討議内容:
- [主な議論ポイント]
- [意見や提案]
- 決定事項:
- [合意された事項]
- 行動計画:
- [実行すべき項目と担当者]
## その他の報告事項
- [報告1]
- [報告2]
...
## 次回会議
- 日時: [年月日, 曜日] [開始時間]
- 場所: [会議室名/オンライン会議システム名]
## 備考
- [追加の注意事項や連絡事項]
作成日: [議事録作成日]
承認者: [承認者氏名]

#制約条件
・憶測で書くことはuserの気分を害することがあるので避けてください。

#アウトプット
「最初に情報を入力してください」

おわりに

今回は、大変貴重な体験をさせていただきました。事務作業の時間を短縮することは、単純な効率化だけでなく「子どもたちともっと向き合い、日本の未来を創りたい」という先生方の思いが込められています。ワークショップを通して、そんな未来を創る手助けが実現できたら幸いです。教職員の方々だけでなく、ビジネスパーソンも活用できる事例ですので、実際に手を動かして試してみてください。

最後に、教育は「未来への投資」です。先生方の情熱と献身が、次世代を担う子どもたちの可能性を開花させる原動力となるでしょう。今回のワークショップで学んだ生成AIスキルは貴重な時間と労力を確保し、より質の高い教育への橋渡しをしてくれます。AIは決して教育者の代替ではなく、むしろ強力な助っ人です。それを賢く活用することで、業務の効率化やクリエイティブの躍動など、一人ひとりの可能性を高めることができるはずです。

私たちの挑戦が日本の教育未来を明るく照らし、子どもたちの輝かしい未来を作り出すことを実現していきます。

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写真: CDLE埼玉 多喜脩文

IKIGAI lab.オーナー/富士フイルムビジネスイノベーション株式会社

Gen AI Times監修に加え、NewsPicksにて生成AI記事を連載中。その知見をもとに、イベント開催や大手企業様での講演実績も多数。社内では、海外工場での新商品立ち上げや人材育成に加え、生成AIを用いた営業プロセス改革や新規事業創出に着手。

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