【AI with 人】生成AIはどのような日々の変化をもたらすのか
はじめに
本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している8名で運営しています。「半歩先の未来をエスコートする」をコンセプトに、情報を得るだけで終わらず、皆様の行動や考えに反映できる情報をお届けします。注目の生成AIニュースを収集し、個性豊かなメンバーによって深掘りされた記事をぜひお楽しみください! そして、この連載を通して、皆さまも各々の半歩先の未来を想像しながら、いろいろな価値観を楽しんでいただけると幸いです。
前回の「【一気にわかる‼】動画生成AIが構築する世界の「現在」と「未来予想」」では、動画生成AIの世界を紹介しました。動画生成の分野だけでも日々新しいサービスが誕生し、既存サービスもどんどんアップデートされています。しかし、生成AIの実際の活用状況はどうでしょうか。
最新の調査結果を見ると、意外にも多くの企業や個人が生成AIの活用に苦戦していることが分かります。Salesforceの調査では61%もの人が生成AIのビジネス活用を「想像できていない」と回答しました。一方で、総務省が公表した情報通信白書では、生成AIの個人利用率は9.1%、企業利用率は46.8%となっています。
これらの結果からは、生成AIの可能性は認識されているものの、その具体的な活用方法が分からず、戸惑っている人が多いという現状がうかがえます。
そこで今回は、プライベートとビジネス、それぞれの場面における生成AIの具体的な活用シーンを最新事例から紹介します!
プライベートにおける生成AIの活用事例
まずは、プライベートでの生成AI活用事例を見ていきましょう。休日の過ごし方1,000人アンケートをもとに、趣味でも活用できる生成AIの導入事例を紹介します。
スポーツ×生成AI
●Voice Watch-リアルタイム実況生成AI
スポーツ観戦のバリアフリーを実現するリアルタイム実況生成AI「Voice Watch」
スポーツと生成AIの革新的な組み合わせとして、電通が開発した視覚障がい者のためのリアルタイム実況生成AI「Voice Watch」が注目されています。
Voice WatchはカメラAI、未来予測AI、発話AIを組み合わせ、単なる状況説明を超えた、臨場感あふれる実況を提供します。これにより、視覚障がい者と健常者の間の情報格差を解消し、誰もがスポーツの熱狂を共有できる環境を作り出しています。
Voice Watchは、スポーツ観戦の可能性を大きく広げるAI技術と言えるでしょう。
読書×生成AI
●埼玉県久喜市図書館ー生成AI蔵書検索システム
埼玉県久喜市立図書館、生成AI蔵書検索システムの実証実験を開始
久喜市立図書館、株式会社図書館流通センター(TRC)、京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)の3者が、生成AI技術を活用した蔵書検索システムの実証実験を開始しています。
この実験では「読者サポートAI(仮)」機能を導入し、曖昧な記憶からの書籍検索や利用者の相談に応じた適切な書籍の提案、利用者ごとにパーソナライズされた書籍の推薦を可能とします。
これらの取り組みは、利用者が書籍を探す際の課題解決や図書館職員の業務負荷軽減、新たな本との出会いを創出することによる幅広い世代の読書への興味促進を目指しています。
ゲーム×生成AI
●エヌビディアー生成AIでゲームキャラが柔軟に応答
ゲームキャラの応答柔軟に 米エヌビディア、生成AI活用でデモ
エヌビディアが生成AI技術を活用したゲームデモを初公開しました。従来の定型応答から脱却し、プレーヤーの音声入力による質問に対して、キャラクターが柔軟かつ的確に応答する機能を実現しています。
エヌビディアは、自社の軽量化された言語モデルを既存の音声認識技術と組み合わせることで、パソコンなどの端末上でもスムーズな対話を可能にしました。
この新技術はゲーム内での自然な対話を可能にし、プレーヤーの没入感を大幅に向上させる可能性を秘めています。
旅行×生成AI
●Google生成AI大活用ーGeminiとGoogleアプリ連携で旅行プラン作成など
GoogleマップやYouTubeと「Gemini」を連携、生成AIで旅行プランや動画要約を
Googleは、GeminiとGoogleアプリの連携を通じて、旅行や情報検索をより便利にする新しい体験を提供しています。Googleマップでは、現在地を基に「近くの◯◯を教えて」と尋ねると地図上にピンが表示され、観光スポットのピックアップや旅行プランの提案が可能です。
さらに、YouTubeとの連携ではキーワードで動画を検索し、その要点をまとめてくれる機能があり、視聴時間を節約しながら必要な情報を簡単に得られます。
これにより、旅行の計画や情報収集が効率的に行うことができるようになりました。
これらの事例を見ると、私たちの生活にAIが徐々に浸透してきていることがうかがえます。では、ビジネスにおいてはどのように生成AIが活用されているのでしょうか。
次に、ビジネス分野での活用事例を紹介します。
ビジネスにおける生成AIの活用事例
開発・エンジニアリング分野での活用
●住友ゴム工業ーアプリ開発にGeminiを活用し、生産性を大幅改善
住友ゴム工業様:Geminiを活用したクラウドベースの内製開発で、アプリ開発の生産性を大幅に改善
住友ゴム工業は、製品開発のシミュレーション業務の効率化にGemini Code Assistを導入しました。
Geminiの活用によりコードの自動生成や補完、提案、さらに言語間の変換が可能になりました。CSVデータの読み込みと描画プログラムの自動作成、そのテストプログラムの作成など、幅広いタスクをGeminiで効率化しています。
この取り組みにより、プログラミングの生産性が大幅に向上しています。
GitHubが実施した調査でも、ソフトウェア開発における生成AIの活用効果が示されています。
●GitHub
Survey: The AI wave continues to grow on software development teams
GitHubは米国、ブラジル、インド、ドイツの4か国で、2,000人のソフトウェア開発者を対象にソフトウェア開発におけるAIツールの使用経験等について調査しました。
その結果、97%以上が「仕事でAIコーディングツールを使用した経験がある」と回答し、コード品質の向上、新しいプログラミング言語習得の容易化、テストケース生成の効率化などの効果を実感しているそうです。
営業・カスタマーサービス分野での活用
●三井住友カード ー生成AIによる問い合わせ応対効率化、データ分析支援サービス強化
三井住友カードとELYZA、お客さまサポートにおける生成AIの本番利用を開始
データ戦略なくしてAI活用に勝機なし、米Bloombergや三井住友カードの実践
三井住友カードはELYZAと協力し、コンタクトセンターに生成AIを導入しました。この取り組みでは、検索拡張生成(RAG)技術を活用して顧客からの問い合わせに対する回答草案を自動生成します。
これによりオペレーターの応対スピードが向上し、問い合わせ対応時間が最大60%短縮される見込みです
また、三井住友カードは同社の手掛けるデータ分析支援サービス「Custella」の強化にも生成AIの活用を進めています。
クレジットカードの利用データから顧客の嗜好性を詳細に分析し、その理由も説明可能にすることや、「ジョブ理論」と組み合わせて消費行動の背景にある目的・動機をより深く理解することを目指しています。
これにより、顧客理解の向上や効果的なマーケティング戦略の立案が期待されています。
業務効率化・品質管理分野での活用
●トヨタコネクティッド: 生成AI活用で最大90%の時間削減も
【最大90%の時間削減】生成AI最前線、トヨタコネクティッド社のAI効率化事例と全社的生成AI導入戦略の全容
トヨタコネクティッドは全社的なAI活用を推進するためにAI統括部を設立し、OpenAIのChatGPT Enterpriseを導入しました。その結果、2024年6月末時点で社内で380以上のGPTsが作成され、様々な業務で活用されています。
特に効果的だった事例として、以下の3つが紹介されています。
- 議事録作成支援GPTs「咲文さん」:
重要ポイントの抽出や次のアクションを自動で整理し、読みやすく精度が高い議事録を生成 - クラウドサービスのライセンス管理業務効率化:
毎月約2時間半かかっていた照合作業を自動化し、作業時間を15分に短縮。従来比90%の削減に - プロジェクト振り返り作業の効率化:
AIを活用したGPTsが参加者の音声入力を自動で文字に起こして整理し、問題点の分析や次のアクション提案まで実施。作業効率化と振り返りの質向上を実現
トヨタコネクティッドからは先日、同社の生成AI導入フローをまとめたNote記事も公開されています。
●トヨタコネクティッド
企業で生成AIを導入するための施策と生成AI全社研修の全体設計を公開します
同社では、生成AIを使いこなす状態を「生成AI活用を自走できる状態」と定義し、その実現には“変化を後押しする組織文化”や“生成AIの理解”“業務の言語化”などの知識・能力が重要と述べています。
生成AIの活用には、単に“便利だから導入させよう”ではなく、生成AIの長所・短所・ユースケースを理解したうえで、それが自身の業務課題にどう役立つのかを言語化し、生成AIと自身の業務をマッチングさせる能力が必要と考えているからです。
同社のNoteでは、その実現に向けた具体的なアプローチとして、全社員を対象とした生成AI研修の実施や独自ツールの開発などの取組が詳細に紹介されています。
おわりに
今回で紹介した事例から、生成AIがビジネスからプライベートまで、幅広い分野に可能性を秘めていることがうかがえます。単なる作業効率化にとどまらず、新たな知識や技術の習得、さらには創造的な作品制作のサポートまで、生成AIは私たちの挑戦のハードルを大きく下げる力を持っています。
しかし、この技術を活用しきるためには、特に企業導入においては広い視野を持った包括的なアプローチが必要です。トヨタコネクティッドの事例が示すように、技術導入だけでなく組織文化の変革や全社的なAIリテラシーの向上が求められます。さらに、AIの判断の透明性や責任の所在など、倫理的・法的な課題にも注意を払う必要があります。
生成AIは日々進化を続けており、その可能性は私たちの想像を超えて広がっています。今後、個人や組織がそれぞれの状況に応じて試行錯誤を重ね、最適な活用方法を見出していくことが、より良い未来への近道となるでしょう。
皆さんも、日々の生活やビジネスの中で生成AIとの関わり方を探ってみてはいかがでしょうか。
その一助として、最後に「IKIGAI lab.」メンバー作のオススメGPTsを公開します。
▼報告書GPTs
https://chatgpt.com/g/g-vcjX0SHRS-bao-gao-shu-zuo-cheng-gpts(使い方はこちらでご紹介)
▼ペルソナインタビューになりきるGPTs
https://chatgpt.com/g/g-RbDv1GFGY-persona-interviewer
最初に「〇〇な人になりきって」と指示するだけで、その人物になりきって応対してくれます。
次回の投稿をお楽しみに!
※本ニュースは「IKIGAI lab.」が配信しているコンテンツです。
IKIGAI lab.はこちらをご覧ください。
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