【解決力UP】オーケストレーションが可能にする生成AIの活用法、具体例を徹底解説
はじめに
本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している8名で運営しています。「半歩先の未来をエスコートする」をコンセプトに、情報を得るだけで終わらず、皆様の行動や考えに反映できる情報をお届けします。注目の生成AIニュースを収集し、個性豊かなメンバーによって深掘りされた記事をぜひお楽しみください! そして、この連載を通して、皆さまも各々の半歩先の未来を想像しながら、いろいろな価値観を楽しんでいただけると幸いです。
さて、昨日までの常識だったことが、今日には変わっている…そんなことありませんか? 生成AI界隈では目にもとまらぬ速さで技術躍進が起こっており、少し前までの“なんでも聞ける”から今では“なんでもできる”へと変わってきました。
この急速な進化に伴い、生成AIツールの活用方法も大きく変化しています。かつては単一のAIツールに頼る局面が多かったのですが、最近では複数の生成AIツールを組み合わせて使うケースが増えてきました。さらに、各ツールの特性が明確になってきたことで、それぞれの得意分野や不得意な領域も浮き彫りになってきました。
このような状況下では、単にAIツールを使いこなすだけでなく、それらを効果的に組み合わせる能力が重要になってきます。実際の業務においては単独の作業で終わることがなく、「あることをしてその結果を使ってさらに次のものを作り上げる」ようなワークフローにはオーケストレーション力が重要です。
今回は「え? もうそんなことできるの!?」といった驚きをAIソリューションとオーケストレーションの視点でまとめ、すぐに実践できるように分かりやすくお届けします。ぜひ最後までお読みください。
ソリューション:
抱えている問題を解消することや、そのために提供されるシステム
オーケストレーション:
複数のコンピュータシステム、アプリケーション、サービスを調整および管理し、大規模なワークフローやプロセスを実行するために複数タスクをつなぎ合わせること
ChatGPT-o1:生成AIの進化と速報
●OpenAI
Introducing OpenAI o1-preview
2024年9月12日、最新の生成AIモデル「ChatGPT-o1」がOpenAIからリリースされ、生成AIの進化は新たな段階に入りました。
このモデルは従来のChatGPTと比較して、推論力や複雑な問題への対応力が大幅に強化されています。特にビジネスや教育分野での応用が期待されており、複数の条件を考慮した推論や、文脈を深く理解して適切な解決策を提示できる能力が特徴です。こうした高度な機能により、生成AIは単なる対話システムを超えて、業務効率化や業務の自動化に寄与する強力なツールとなっています。
ChatGPT-o1については「【速報】ChatGPTがアップデート! OpenAI o1とは?」で詳細に解説されています。この最新のアップデートは、生成AIがいかに業務を変革する力を持つかを示しており、企業の運営を根本から再定義する可能性を持っています。
ChatGPTをはじめ、多くの生成AIは日常業務に劇的な変化をもたらしつつあります。前回の記事「【AI with 人】生成AIはどのような日々の変化をもたらすのか」では、生成AIがどのように日常業務を効率化し、従業員の作業負担を軽減するかについて述べました(例:メールの自動返信、簡単なデータ集約、カスタマーサポートの自動化など)。つまり、個々の業務プロセスに対して、AIソリューションにより従来人手がかかっていた業務の生産性向上が期待できます。
ここからは、さまざまな分野のAIソリューションをいくつか紹介していきましょう。
GammaAI、イルシル、NapkinAIについて
ここでは、一例としてプレゼンテーション資料の作成に効果的なAIソリューションを紹介します。
GammaAI
Gammaは、文書やWebページなどの生成のほかに、視覚的に優れたインタラクティブなプレゼンテーション資料を作成でき、チーム間でのリアルタイムコラボレーションを容易にします。Gammaについての詳細は「誰でも、パワポ達人! スライド生成AIの実力を徹底検証」で詳細に解説されています。
イルシル
イルシルは、日本語特化かつ直感的に使いやすいサービスで、AIが内容に合ったデザインを提案するため、デザインスキルに自信がない方でも相手に分かりやすいデザインを作成できます。
Napkin AI
Napkin AIはビジネスデータの視覚化に特化しており、複雑なデータをシンプルかつ効果的にプレゼン資料にまとめることができます。Napkinについての詳細は「【徹底検証】圧倒的時短!? AIで資料作成は変わるのか?」で詳細に解説されています。
これらプレゼンテーション資料の作成に特化したAIツールで資料作成時の補助や視覚的なデザインが可能となり、作業効率の向上および戦略的なプレゼンテーション実施が期待できます。
それでは、次に効率的な情報収集に使えるAIソリューションを紹介します。
PerplexityとGensparkについて
Perplexity
Perplexityはユーザーの質問に返答を行う対話型AI検索エンジンで、特徴としては日本語対応、情報源の提示、最新情報検索などを対話によって詳細に調べることができます。Perplexityについては「【注目】生成AIサービス「Perplexity」の独自機能と信頼性を徹底解説」で詳細に解説されています。
Genspark
Gensparkは自然言語を活用した次世代型の検索エンジンで、従来のキーワードベースの検索方法に代わり、ユーザーが対話型でより精確な情報を得られるシステムを提供します。これにより、ビジネスや研究における情報収集が飛躍的に効率化され、従業員はより短時間で必要な情報にアクセスできるようになります。Gensparkついては「「ググる」はもう古い。次世代AI検索の実力とは?」で詳細に解説されています。
これら情報収集に特化したAIツールにより検索の高度化が一層に進み、知りたい情報を広く、深く、多角的に考察することが可能です。そして、先述のプレゼンテーション資料の作成に特化したAIツールと一緒に使うことで、情報収集した内容を視覚的かつ、分かりやすくアウトプットできます。ソリューション同士の相乗は個々の業務プロセスを大きく変えるきっかけにもなります。
しかし、今後は個々の業務プロセスに留まることなく、例えばチーム、部門、会社全体といった個から集団に広げていくことが求められます。つまり、オーケストレーションによる「生成AIのインフラ化」によって日常業務における生成AIの役割がさらに強化され、組織全体の業務フローに大きな変化をもたらすことが期待されます。
そこで、見えないバックグラウンドの支援者として働く、AIオーケストレーションを紹介します。
Difyについて
Difyは大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリケーションの開発と運用を簡素化するためのプラットフォームです。その名前は「Define(定義)+Modify(修正)」に由来し、AIアプリケーションを定義して継続的に改善することを意味しています。
Difyの大きな特徴は、ノーコード/ローコード開発に対応し、専門知識を持たないユーザーでも高度なAIソリューションを容易に構築できる点です。従来、高度なスキルが必要とされるRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術もDifyでは直感的に実装でき、業務の効率化を促進します。これにより、企業の文書やデータを活用したチャットボットや情報検索システムを手軽に作成できるようになります。
Difyの特徴:- ノーコード/ローコードでのAI開発:
Difyの魅力は、誰でも簡単に生成AIを業務プロセスに取り入れられる点にあります。プログラミングの知識が不要で、ドラッグ&ドロップによる直感的な操作でAIモデルのカスタマイズや実装が可能です。これにより、専門知識を持たないビジネスユーザーも生成AIを活用して社内プロセスを最適化でき、リソースの効率的な活用が実現します。 - RAG機能のサポート:
RAG技術はAIが外部データや社内ドキュメントを動的に参照し、より信頼性の高い応答を提供する技術です。従来、RAGの実装には高度な知識が必要でしたが、Difyはこれをシンプルに統合でき、業務での活用を一気に加速します。例えば、従業員が社内のデータベースや過去のFAQを基にAIで顧客対応や情報収集を行うことが可能になります。結果として意思決定のスピードが向上し、業務精度が大幅に向上します。 - オーケストレーション機能:
Difyのもう1つの強みはオーケストレーション機能です。オーケストレーションとはAIが自動的にタスクを処理し、ユーザーがそのプロセスに介入する必要がないようにする仕組みです。これにより、従業員はAIが自動で収集・分析したデータを確認するだけで意思決定ができるため、業務スピードが劇的に向上します。また、ユーザーはAIの複雑な動作を意識せずにAIから得られる結果だけをシンプルに活用できるため、業務全体の効率が飛躍的に改善されます。
- Difyを導入することで、さまざまな部門でAIの恩恵を享受できます。例えば、カスタマーサポート部門では過去の問い合わせ履歴やFAQを参照するチャットボットが構築され、顧客対応が自動化されます。また、営業部門では顧客の過去の取引データや関連文書をリアルタイムで検索・解析し、営業担当者が適切な提案を即座に行えるようサポートします。これにより、各部門での業務効率が飛躍的に向上し、全社的な生産性向上が期待できます。
このように、Difyは生成AIのパワフルな機能をノーコード/ローコードで簡単に利用できる環境を提供し、特にRAGのような高度な機能も手軽に実装できます。また、オーケストレーション機能により、AIは「見えないバックグラウンドの支援者」として業務効率を大幅に向上させます。これにより、社内外のさまざまな業務において生成AIがインフラの一部として浸透し、ユーザーはプロセスの複雑さを意識することなく生成AIの恩恵を受けられるようになるため、企業全体の生産性と競争力も大幅に向上します。
さらに、Difyは2024年9月10日のアップデートで並列処理が可能になり、これまで逐次実行していた処理の高速化を実現しました。直列処理と並列処理のワークフロー例としては下図のようなものがあり、順次実行するしかなかった翻訳パートを同時に実行することが可能になります。これにより複数の言語への同時翻訳が可能となり、全体の処理時間が大幅に短縮されます。
それでは、オーケストレーションおよびインフラ化の具体例を体験してみましょう!
「ある調査を行い、それをまとめてプレゼン形式で報告するようなケース」を想定して、これをGenspark+Claude+Gamma+Napkin AI(+Dify)で対応してみます。
調査のテーマは「日本のエネルギー問題」です。普段はあまり意識しない問題かもしませんが、日本においては喫緊の課題ですよね。これについて短期および長期の視点で調査を行い、その報告書を作成します。
- まずはGensparkで調査を実施します。テーマには「日本における電力消費量の需要予測を短期と長期の観点で調査しまとめてください。」と入力します。GensparkのSparkPageを使えば調査内容をノートにまとめる感覚で調査ができます。実際のSparkPageはこちらです。
- 調査が終わったら次はスライド化を行いますが、その前に調査結果を簡潔にまとめたいと思います。Claudeを使って調査結果を整形してみましょう。GensparkのSparkPageをPDFで出力し、それをClaudeにアップロードします。
上の例では簡単に「このPDFを10枚のスライドでまとめたい。各スライドに記載する内容と、説明用のスクリプトを作成してください」というプロンプトを使用しましたが、例えば、もう少し詳細に背景となる情報も入れるとよりよいアウトプットが出せます。
#指示:
PDFの内容をスライド10枚にまとめる
#コンテキスト:
このスライドは経営層に対して行うプレゼンで使用します。
#制約:
PREP法を用いて簡潔でわかりやすい内容としてください。
プレゼン時間は30分です。
難しい技術用語にはわかりやすい解説を追加してください。
#出力形式
日本語スライドに記載する内容は体言止めを基本とする。
スクリプトの語尾は「~です。~ます。」調
スクリプトでは「思います。」ではなく、「~と考えます」「~と考察できます」を使用する。 - 続いて、GammaにClaudeで作成したスライド案を貼り付けます。新規作成で「テキストを貼り付ける」を選び、出力結果を貼り付けます。今回はスライドが10枚なので、10カードに変更しています。
- あっという間にスライドが完成しました。今回作成したスライドは分かりやすい図表が少ないようです。
- ここで、Napkin AIを利用して分かりやすい図表を作成して挿入します。Napkin AIではGensparkの結果をそのままコピー&ペーストして、以下のような図を簡単に作成できます。
これでスライドが完成です! もちろんこれはそのまま使えるわけではありませんが、これをたたき台として使えば、これまで何時間もかかっていた調査とプレゼン資料の作成がはるかに短時間で完了することを実感できるのではないでしょうか。
ここまでは従来の個別の生成AIソリューションを使って課題を解決する方法です。ここでDifyを活用することで、上記手順をオーケストレーションで自動化できます。詳細は割愛しますが、Difyで「調査→プレゼンスライドのスクリプト案作成」のところを自動化してみました。
ユーザーは調査したい内容を入れるだけで、プレゼン資料のたたき台となる文章が出力されます。もうプロンプトを毎回入力する必要はありません(Difyの対応しているサービスの関係で今回はPerplexity+OpenAIのgpt-4o-miniを使用しています)。
生成AIのインフラ化による
未来の可能性
生成AIは、企業の業務プロセスに深く組み込まれることで、その真価を発揮します。インフラとして定着することで、ユーザーは生成AIの存在を意識せず、自然に業務を遂行できる環境が整います。これにより、生成AIは「ボタンひとつで結果が得られる」自動販売機のようにシンプルで直感的に使えるツールへと進化し、複雑な操作を求められることなく、結果を迅速に得られる仕組みが構築されます。
「【完全ガイド】生成AI社内推進で終わらせない、組織定着への道筋」でも示されている通り、生成AIは単にツールとして導入するだけではなく、業務のインフラとして深く組織に浸透させることで、組織全体の業務効率化が可能になります。Napkin AIやGensparkなどのツールも、こうしたインフラ化された環境の中で利用されることで最大限の効果を発揮します。
生成AIが企業にインフラとして定着すると競争力が飛躍的に向上し、業務効率の大幅な改善が見込まれます。自動化された業務フローによりユーザーは複雑な操作を必要とせず、AIがバックグラウンドで作業を進め、結果のみを得られる環境が整います。これにより、意思決定が迅速化し、業務の質も大幅に向上します。
特に、Difyのようなノーコード/ローコードプラットフォームを活用すれば、生成AIを簡単に業務プロセスに統合でき、企業全体の効率が改善されます。生成AIは単なる自動化ツールを超え、企業の成長と革新の基盤となり、ビジネスの未来を明るく照らします。DifyやGensparkといったツールを積極的に活用することで生成AIが企業の業務に深く根付き、ビジネスの未来がさらに発展していくことは間違いありません。
おわりに
2023年10月30日、BCG(Boston Consulting Group)から「生成AIで価値を創出するとき、破壊するとき ――実験結果からの考察」について報告されています。興味深い項目が沢山ありますが、ここでは「人間の才能が発揮される新たな機会」について紹介します。
下図で製品開発におけるアイデア創出・企画の課題に対して、GPT-4不使用の場合と使用の場合における成績分布を表しています。BCGによれば「分布全体が右(より高い成績)へシフトし、製品開発におけるアイデア創出・企画の課題にGPT-4を使用した場合、基本的習熟度に関係なく、ほぼすべての参加者(約90%)がより質の高い解答を出す」ことが分かったそうです。そして「成績のばらつきが劇的に減少した」と報告しています。
言い換えれば、基本的習熟度の低い参加者が生成AIを使用した場合、習熟度の高い参加者とほぼ同じ結果になったということです。つまり、今回でBCGが設定した「製品開発におけるアイデア創出・企画」という課題において、GPT-4のような高度な生成AIが業務で広く利用可能になると、従来は個人の能力差が大きく影響していた領域でも、その差が縮小される傾向があります。従来であれば高い能力を持つ人が有していた優位性も、AIの利用により相対的に小さくなる可能性があるということです。
生成AI登場初期に言われていた「人の仕事を代替する、脅威、不安」という捉え方は変わり、生成AIを使っていくことで「基本的な習熟度の差を縮め、そして全体的なパフォーマンス向上が期待できる」と考えられます。例えば、今回で紹介したAIソリューションにより、使う人・使いこなす人は個々の業務プロセスが一層効率化されると思います。そしてチーム、部門、会社全体といった個から集団に対してオーケストレーションによる「生成AIのインフラ化」で全体のスタンダードが向上することが期待されます。ぜひ、できることから実践してみましょう!
今後も、生成AIに関する最新情報とその深掘りを発信していくので、楽しみにしていただけると嬉しいです。次回の投稿をお楽しみに!
※本ニュースは「IKIGAI lab.」が配信しているコンテンツです。
IKIGAI lab.はこちらをご覧ください。
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