「de:code 2016」開催、Satya Nadellaが語る3つの重要分野
日本マイクロソフトによるエンジニア向けイベント「de:code 2016」が5月24日〜25日に開催された。
Microsoftの最新テクノロジーを披露する場であり、3月末に米国で開催された「Build 2016」で発表された内容などが盛り込まれた。ただし、最近のMicrosoftの変貌により、今回は特に従来型のWindowsプラットフォームそのものより、人工知能やDevOpsなどを含むより広いスコープの技術が目立った。来場者も、クラウドやモバイル、オープンソースなど、従来のマイクロソフトのイベントとは異なる層も集まり、まさに会場を埋め尽していた。
初日の基調講演では、本社からCEOのSatya Nadella氏とCorporate Vice President & Chief EvangelistのSteven Guggenheimer氏らが登壇し、Microsoftの今を印象づけた。両氏は、「Build the intelligent cloud platform」(インテリジェントクラウド)、「Reinvent productivity & business process」(プロダクティビティ)、「Create more personal computing」(パーソナルコンピューティング)の3つの分野に分けて、最新のMicrosoftテクノロジーを紹介した。
以下、基調講演の模様をレポートする。
混合現実からWindows 10アニバーサリーエディションまで
パーソナルコンピューティングの分野でNadella氏は「いちばんわくわくしているもの」として、複合現実の技術について語った。複合現実は、VR(仮想現実)を現実の視界に重ねるもので、Microsoftの技術でいうと「HoloLens」が該当する。
HoloLensの応用分野はエンターテイメントだけでなく、教育や医療、産業などさまざまなものが想定されている。Nadella氏は4月に日本航空(JAL)がHoloLensを採用したことに触れ、訓練などに利用する様子をビデオで紹介した。
もちろんMicrosoftのパーソナルコンピューティングのプラットフォームとしてWindows 10は重要だ。Guggenheimer氏はWindows 10がPCやモバイル、IoTなどに共通のベースのOSで対応することを説明し、「1つのアプリをさまざまなデバイスに横展開できるようになった」と語った。
Windows 10は今夏に「アニバーサリーエディション」と呼ばれるメジャーアップデートが予定されている。その主な新機能について、日本マイクロソフトの高橋忍氏がステージ上でデモした。Ink(ペン操作)については、標準のコントロール(GUI部品)が用意されてアプリから使えるという。Bash on Ubuntu on Windowsと呼ばれる機能では、LinuxディストリビューションであるUbuntuのアプリがそのままWindows 10上で動き、Ubuntuのソフトウェアパッケージをapt-getでインストールすることもできる。
さらにDesktop App Converter(旧称Bridge for Classic Application)はWindowsのデスクトップアプリをWindowsストアアプリに変換するというものだ。高橋氏はその場でテキストエディタの「秀丸」を変換してWindowsストアアプリとして動かしてみせた。
日本マイクロソフトの井上章氏は、ブリヂストンのタイヤ検査アプリを紹介した。クロスプラットフォームの開発ツールであるXamarinを使ってWindows・Android・iOSに対応し、音声コマンドによる操作や、空気圧の測定値の直接入力、ペンによるコメントの手書き入力などをデモした。
Windows PhoneにディスプレイとキーボードをつなぐとPCのように使える「Continuum」のデモでは、WOWWOWが開発中の「メンバーズオンデマンド」が紹介された。外部ディスプレイとWindows Phoneの画面に、同時に違う形式で動画が表示された。
「会話プラットフォームが世界を変える」
プロダクティビティの分野で重きを持って語られたのが、「Conversations as a Patform」(会話プラットフォーム)だ。チャットやメッセージングソフトの「ボット」や、Windows 10の音声機能「Cortana」など、人間の言葉を理解して必要なことをするものだ。Nadella氏は「世界をまったく変えることができる」と紹介した。
Nadella氏はそれに必要な技術として、「人間の言葉を理解」することと同時に「コン テキストを理解」することを挙げた。ちょうどGoogleも「Google I/O 2016」において会話の内容に応じた情報を提示する機能をもったメッセージングアプリ「Allo」を発表している。
こうした会話技術を作業の手助けではなく感情のつながりに利用する応用例として、各種メッセージプラットフォームで活躍する女子高生AI「りんな」を、マイクロソフトデベロップメントの坪井一菜氏が紹介。食べ物の写真に反応するところなどを見せた。
また、OfficeについてはOffice 365のWeb版「Office Online」をAPI利用から紹介した。日本マイクロソフトの戸倉彩氏は、コードエディタ「Visual Studio Code」からJavaScriptのコードをgulpでビルドしてデプロイし、Excel Online上でワードクラウドを表示するという、従来のOfficeらしからぬ操作をデモしてみせた。
Azureに多数のAPI、コグニティブAPIも22個
現在のMicrosoftについては「モバイルファースト、クラウドファースト」という標語が聞かれる。そのクラウドであるAzureについて、「インテリジェントクラウド」として、豊富に提供される機能が、人工知能/コグニティブコンピューティングの機能を中心に紹介された。
コグニティブ機能としては、画像解析や会話解析など、22個のAPIが用意されているという。壇上では、写真に自動的にキャプションを付ける「caption bot API」を紹介。野球の投手の写真に「I think it's a baseball player throwing a ball」とキャプションを付けたり、女性が牛の横でバイオリンを弾いている写真に「I think it's a woman standing next to a cow in a field」とキャプションを付けたりする様子を見せた。
さらに、壇上に小さな扉が登場。鍵の代わりに前に立った人の顔を画像認識して開錠する「Windows IoT Facial Recognition Door」を実演した。
コグニティブだけではない。続いて登場したLara Rubbelke氏は、Azure上のPower BIサービスをデモした。Azure上のWebサイトにPower BIを組み込み、レポートや分析、ビジュアライゼーションなどの機能を呼び出せる。
クラウドネイティブになるとアプリケーションのアーキテクチャや運用形態も変わってくる。「クラウドはMicrosoftだけがプレイヤーではない」という言葉とともに、Microsoftが投資するMesosphere社のStathy Touloumis氏が登場し、同社の「DC/OS」を紹介した。
DC/OSは、コンテナー技術を使い、データセンターのサーバー群にアプリケーションをインストールしたり、リソースを割り当てて実行したりする管理ソフトウェアだ。Touloumis氏はAzure上のDC/OSを使い、Twitterクローンの「Tweeter」や、管理ソフト「Marathon」、NoSQLデータベース「Cassandra」、分散メッセージングソフト「Kafka」、データ分析ソフト「Zeppelin」などを動かしてみせた。
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