vAppで仮想マシン群を一元管理
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- 1.4. パフォーマンス・レポート
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リソース管理を委任された側で、vApp全体としてのリソース利用率を容易に把握することができる。仮想マシンごとの利用率と共に、全体を俯瞰(ふかん)することにより、リソースの枯渇状態や遊休状態の把握に役立てることができる。また、vAppを割り当てた組織や個人に対する課金データとして、このレポートを応用することも可能であろう。
- 1.5. アラーム通知
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対象となるvAppに関連づいた仮想マシンに対するアラームの一括設定が可能だ。この機能を利用することにより、各仮想マシンへの設定の手間が省ける。例えば、vAppに各仮想マシンのCPU使用率80%を超過した場合に通知するよう設定しておけば、関連づくすべての仮想マシンを対象にトリガーを設定できる。また、事後追加の仮想マシンにも自動的にアラームが適用される。
- 1.6. 権限管理
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一口にvApp管理者と言っても、実行できるオペレーションに対する権限が細分化されている。以下に、vApp管理者に割り当て可能な権限を列挙する。
- OVF環境の表示
- vAppアプリケーションの構成
- vAppインスタンスの構成
- vAppの割り当て
- vAppリソースの構成
- インポート
- エクスポート
- クローン作成
- パワー・オフ
- パワー・オン
- リソース・プールの割り当て
- 移動
- 仮想マシンの追加
- 作成
- 削除
- 登録解除
- 名前の変更
多くの組織や企業の共有基盤として活用されるであろうクラウド環境下においては、上記のような詳細な権限管理ができるか否かが選定のポイントとなる。
- 2. 円滑な連携
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- 2.1. IPアドレス割り当てポリシーの設定
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vAppに関連づく仮想マシンに対して、vCenter Serverで定義したIPプールの設定を適用することが可能だ。
例えば、東京から上海の仮想化基盤にvAppを輸出することを考えてみよう。
当然ながら、ネットワーク・セグメントが異なるため、普通に考えればそのままインポートしても利用することはできない。vAppでは、この問題を、vCenter Serverで定義済みのIPプールから自動的にIPアドレスを割り当てることによって解消している。
vAppのインポート時に、上海のvCenter Serverで定義されているIPプールの内容を読み込み、ポリシーにのっとりIPアドレスを自動付与する。もちろん、IPアドレスのみならず、DNS、DHCP、デフォルト・ゲートウエイ、サブネット・マスクなども割り当て可能だ。また、IPv6構成にも対応している。
IPアドレスの割り当てポリシーは、以下の3つ。
- 固定: 自動には割り当てない
- 一時的: vCenter Server定義のIPプールの範囲からIPアドレスを取得
- DHCP: vCenter Server定義のDHCPサーバーからIPアドレスを取得
- 2.2. vApp属性情報の構成
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vAppの属性は、静的属性と動的属性に大別できる。
冒頭で紹介した、vAppに関連づく仮想マシンの状態やバージョンなどを記述するものが静的属性である。
静的属性には、製品名称やバージョン、関連するURLなどを記述できる。この情報は、その属性値を持ったvAppをインポートする際に確認できる。
一方、動的属性は、仮想マシンに対して、個々の仮想化基盤に応じて異なる情報を動的に適用したい場合に利用する。vAppのインポート時に、動的に利用したい属性値に対して情報入力を促すことで、必要な情報の抜け漏れを防ぐことが可能だ。
それぞれの値はvAppの属性情報として保存され、仮想マシン内から参照し利用することができる。この参照可能な情報をOVF Environmentという(リスト1)。
リスト1: OVF Environmentの内容
ESX Server
3.0.1
VMware, Inc.
en_US
dns" value="10.20.60.1,10.20.60.2"/>
domainName" value="eng.vmware.com"/>
gateway" value="10.20.63.253"/>
hostPrefix" value="voelab-"/>
extIp1" value="10.20.30.40"/>
ip" value="10.20.63.206"/>
netmask" value="255.255.254.0"/>
admin-email" value=“admin@vmware.com"/>
subnet" value="10.20.62.0"/>
vimIp" value="10.20.63.38"/>
Glue Codeというマッピング・スクリプトにより、VMware Toolsまたは自動生成される仮想CDメディアからOVF Environmentを読み込み、OSやアプリケーションと関連付けることで、属性情報を利用することができる。このようなメカニズムを利用することで、必要な情報を異なる環境下でも柔軟に構成することができるようになる。
例えば、vCenter ServerのIPアドレスを動的に取得して利用する場合を考えてみよう。通常であれば、仮想マシンをインポートして必要個所の変更を行う。ところがvAppを利用すると、属性値として動的にvCenter ServerのIPアドレスを取得するよう記述できるため、インポート後のOSまたはアプリケーションに対する変更は一切不要である。
まとめ
今回はvAppについて、その特徴と有用性を紹介した。次週はクラウド・インフラをより効率的に管理するためのvCenter Familyについて紹介する予定である。