なぜmixiの牧場アプリはヒットしたのか
mixiアプリの仕組み―OpenSocial
mixiアプリはOpenSocial v0.81に準拠しています。OpenSocialとは、世界中のSNSのプラットフォーム同士で共有の実行環境とAPIを定義したものです。世界のSNSにはmixiアプリと同じようにSNS上でアプリを動かすプラットフォームが幾つも存在しますが、OpenSocialに対応しているプラットフォームなら、開発者が各SNSに合わせてアプリを書き直す必要がありません。
OpenSocial対応SNSには、日本にはmixiやgooホーム、世界を見れば、MySpace、orkut、Ning、renren(xiaonei)、CyWorld、SalesForceなどがあります。これらのSNS上で動いているアプリは、ほとんど書き換える事なくmixiアプリでも動作し、mixiアプリで動いているアプリはほとんど書き換えることなく他のSNSでも動くということです。つまり、1度mixiアプリを開発すれば、そのアプリを多言語化するだけでOpenSocialという互角の土俵で世界を相手に戦うことができるのです。
mixiアプリはアプリケーションと言っても、XML(HTML)+JavaScriptで実装されるため、基本は普通のWebサービスと同じです。ただし、普通のWebサービスとは大きく違うところが4つあります。
- mixi上で動き、mixiが提供している1サービスと違和感がないようになっている
- OpenSocialに準拠し、mixi上の情報(ユーザーのプロフィール情報やフレンド情報など)を取得できる
- クチコミでアプリを広める手段がある(アクティビティや招待、メッセージなど)
- マネタイズの 手段がはじめから用意されている
mixiアプリでどんなアプリを作るかは自由です。しかし、ただ作っただけでは思ったほどアクセス数やユーザー数が伸びない、という壁にぶつかるでしょう。これはSNS上で提供されるアプリに求められる資質が、一般的なWebサービスとは異なることが原因だと思われます。次のページでは、今mixiアプリ上で最も成功しているアプリの1つであるサンシャイン牧場を分析しながらmixiアプリの企画のポイントを解説します。
図2:OpenSocialの概念図 |
1分でわかるmixiアプリの魅力
サンシャイン牧場(以下、サン牧と記述)は、農作物や動物に水をあげて、育った作物を収穫して売るだけのシンプルな箱庭ゲームです。サン牧の特徴はイタズラという独特のソーシャル機能にあります。サン牧ではマイミクの農場を見れるだけでなく、マイミクが育てている作物に虫をつけてイタズラできます。虫がつけられた作物は一時的に増産率(収穫できる作物の量)が下がります。しかし、その虫を駆除すると虫がつけられる前よりも増産率は上がるのです。自分で自分の農作物に虫をつけることはできないし、マイミクの農作物につけた虫を後から自分で駆除することもできません。つまり、「虫をつけてイタズラする」というマイミクとのコミュニケーションに意味を持たせているのです。この虫をつけてイタズラして育てるという機能はサン牧がオリジナルだと記憶しています。
マイミクの農作物は、完成していればちょっとだけ頂くことができます。せっかく完成した農作物を持っていかれれば嫌な気持ちになるものですが、いつも虫をたくさんつけてくれる人が農作物を取っていってもお裾分けという気分になります。1日1回だけランダムでアイテムが貰えるログインプレゼントや、虫つけは1日150匹までという制限で長く遊べるような設計になっています。お金を払ってコインという仮想通貨を購入でき、コインで自分の農場をデコレーション出来るため、自分だけの農場を作ることが出来るため愛着がわきやすくなります。ただ、サン牧のアクティビティは残念ながらあまり意味のあるものではありません。
mixiアプリの企画を立てる上でポイントとなるキーワードが4つあります。それは、「ソーシャルグラフ」「コミュニケーション」「暇つぶし」「クチコミ」です。